毎日の生活の中に、自転車に乗るなどの運動に近い身体活動をわずか5分加えるだけで、血圧が下がり、心血管疾患のリスク低下につながる可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。論文の筆頭著者である、英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のJoanna Blodgett氏は、「良いニュースは、身体能力にかかわりなく、短時間で血圧に良い影響がもたらされることだ。われわれの研究は、階段を上ることやちょっとした用事に自転車を使うことなど、日常生活に組み込むことができる、運動に近いあらゆる身体活動の効果を検討した点がユニークだ」と述べている。この研究結果は、「Circulation」に11月6日掲載された。
1日わずか5分の身体活動の追加が血圧低下に効果的
研究グループによると、世界中で高血圧は約13億人の成人に影響を及ぼしており、脳卒中などによる早期死亡の最大の原因の一つとなっている。今回の研究は、1万4,761人の成人ボランティア(平均年齢54.2±9.6歳)を対象にしたもの。対象者が大腿部に装着する加速度計で測定したデータをもとに、24時間の行動を、睡眠、座位行動、立位行動、ゆっくりとした歩行(1分間に100歩未満)、速歩き(1分間に100歩以上)、およびランニングやサイクリングなどの運動に近い身体活動に分類し、血圧(収縮期血圧と拡張期血圧)との関連を検討した。
対象者が6種類の行動に費やした時間の平均は、睡眠7.13±1.19時間、座位行動10.7±1.9時間、立位行動3.2±1.1時間、ゆっくりとした歩行1.6±0.6時間、速歩き1.1±0.5時間、運動に近い身体活動16.0±16.3分であった。運動に近い身体活動や睡眠に費やす時間が長いほど、血圧は低い傾向が認められた。また、運動に近い身体活動を毎日5分追加することで、収縮期血圧は0.68mmHg、拡張期血圧は0.54mmHg低下すると推定された。
これらの結果を受けて研究グループは、収縮期血圧2mmHg、拡張期血圧1mmHgの低下など、血圧がわずかに低下するだけで、心血管疾患の発症リスクが10%低下する可能性があると指摘。日課に、運動に近い身体活動を1日10~20分程度取り入れることで、それが実現できる可能性があると述べている。また研究グループは、サイクリング、階段の昇降、短時間のランニングなど、心拍数を上げる身体活動は全て、高血圧を緩和する効果があると説明する。Blodgett氏は、「われわれの研究結果は、ほとんどの人にとって、血圧を下げるには、ウォーキングなどのそれほど負担のかからない身体活動よりも、心拍数を上げるような身体活動が鍵となることを示唆している」と述べている。
一方、共著者の一人であるシドニー大学(オーストラリア)医学・健康学分野教授のEmmanuel Stamatakis氏は、「運動をあまりしない人にとっては、ウォーキングは血圧にいくらか良い効果がある」と強調している。同氏は、「1日当たりわずか5分の運動や運動に近い身体活動を追加することで血圧が低下するという結果は、短時間の高強度の身体活動が血圧管理にいかに効果的であるかを強調するものだ」とUCLのニュースリリースで述べている。(HealthDay News 2024年11月7日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIRCULATIONAHA.124.069820
Press Release
https://www.ucl.ac.uk/news/2024/nov/extra-five-minutes-exercise-day-could-help-lower-blood-pressure
構成/DIME編集部
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