11月7日の話である。筆者の自宅の固定電話に、こんな留守番電話があった。
「こちらは総務省監視管理室です」
突然の総務省からの電話に、筆者も家族も大慌て。そしてこの留守電を聞き進めてみると、我が家の固定電話は2時間後に利用停止になってしまうこと、そして番号の1を押すようにという自動音声のガイダンスだった。
固定電話が停止? 総務省が通信会社を跨いで、いきなりそんなことを契約世帯に伝えるのか?
この謎の電話は、筆者の家だけでなく全国の家庭でもかかっているらしい。ということで、総務省に問い合わせてみた。
1日数件の問い合わせが
筆者はこの商売柄、総務省に電話する機会はよくある。
総務省は、筆者の知る限り「電話対応が親切な省庁」である。それだけ市民からの問い合わせが多いのだろうが、今回の件はほんの1分で結論が出た。
「総務省から個人や世帯に電話をかけることはありません」
この時応対した担当者曰く、「総務省監視管理室」に関する問い合わせは1日に数件はあるとのこと。かなり慣れた感じの口調だったことを、ここに記しておきたい。
総務省監視管理室というセクション自体は実在する。しかし、その監視管理室が個々の世帯の固定電話を管理することはなく、ましてや留守番電話を残しておくことも絶対にないそうだ。
「1」を押すな!
なお、総務省をかたる不審な電話は数ヶ月前からあるようで、しかも度々セクション名を変えているらしい。
愛媛県警察がFacebookで「総務省電波監理審議会」を名乗る留守番電話の音声を公開している。
筆者の自宅にかかってきた電話も、「電波監理審議会」が「監視管理室」になった以外はほぼ同様の内容だ。
「このガイダンスに従って1を押すと、オペレーターをかたる犯人につながり、その後、警察官をかたる犯人に代わり、調査・捜査名目など様々な理由でお金を要求されるオレオレ詐欺に発展する可能性があります」
(愛媛県警察Facebook)
つまり、この留守電があった場合はそれ以上の操作はせず、記録を消去するのが一番ということだ。上述の総務省の電話窓口担当者も、
「このような留守電には、絶対に対応しないでください!」
と、強調していた。
困った時の相談ダイヤル
ただ、この記事を読んでいる諸兄諸姉の中には「自分はともかく、実家の両親はこのテの詐欺にやられてしまうのでは……?」と不安に感じている人もいるかもしれない。
これは、大都市で働く人の悩みでもある。東京から遥か遠くの実家にいる両親が、「総務省からの留守電」を信じて1を押してしまったら? このあたりもひとつの介護と言えるかもしれないが、ともかくここでは「#9110」の利用をお勧めしたい。
この番号は、中高年世代にはまだあまり浸透していない。電話をかけた地域を管轄する警察へつながるダイヤルだが、110番と違うのは「緊急性のない事案の相談に特化している」という点だ。DVや嫌がらせ、悪質商法、特殊詐欺についての相談なども想定している。
この#9110、何と1989年からあるそうだ。しかし、恐らく警察の広報不足もあって長らく「一部の人だけが知っている番号」だった。1991年に小学校に入学した筆者自身、「110番は警察の番号」ということは小学生のうちから習得したが、#9110なる番号について先生から習った記憶は全くない。
筆者よりも上の世代の人なら尚更のはずで、ここは今一度#9110を「いざという時の相談窓口」として認識しておきたい。
とりあえず冷静になろう!
また、この記事が出た頃には「総務省監視管理室」を名乗る手口は古いやり方になっている点も考慮するべきだろう。
犯罪の手口というものは、メディアに解説されて万人の常識になったらそれ以降は使われなくなる。特殊詐欺とは新しい手口を誰かが考え、それを実行し、また別の手口を考えて……の繰り返しなのだ。
しかし、ひとつ確実に言えるのは「特殊詐欺は対象者の不安を奇襲的に煽る」ということだ。
たとえば、ある日突然見知らぬ他人から「あなたを訴えます」と言われたら、動揺しない人のほうが少ないだろう。直後、「解決案があります」と同じ人物に提案されたら、大抵の人は一瞬でもそれにすがろうとしてしまうのではないか。
即ち、これが「特殊詐欺の雛形」である。
ただし、ここは冷静に考えていただきたい。理由はどうあれ、「今日中に金を振り込め」というのは無礼千万ではないか? なぜ、早急に金を必要とするのか? そうしたことをひとつひとつ考えていけば、そこには必ず矛盾がある。殺人の完全犯罪は実現不可能と言われているが、特殊詐欺もどこかに必ず「ほころび」が存在するのだ。
以上のことを心に留めておけば、特殊詐欺の電話も難なく受け流せるだろう。
【参考】
警察に対する相談は警察相談専用電話 「#9110」番へ-政府広報オンライン
文/澤田真一
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