2024年11月5日に行なわれたアメリカ大統領選はトランプ元大統領の圧勝に終わり、11月11日にドル円は154円手前まで上昇。さらに議会でも共和党が多数派となったため、15日には156円台後半を付けた。
そんなドル円相場の分析に加え、介入の可能性など、今後の動きを予測するリポートが三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩 氏から届いているので概要をお伝えする。
ドル円は9月中旬以降ドル高・円安が進み直近のパウエル発言などを受け156円台後半に到達
ドル円は9月16日に、一時1ドル=139円58銭水準をつけたあと、足元までほぼ一本調子でドル高・円安が進行している。背景には、10月以降、米景気の底堅さを示す経済指標を受け、大幅な利下げ観測が後退したことや、米大統領選挙で、終盤にかけて共和党候補のトランプ氏が優勢と伝わるなか、トランプ氏圧勝の結果となり、景気刺激的な政策への期待が高まったことなどがあると思われる。
また、米大統領と上下両院の多数派を共和党が握る「トリプルレッド」が確定する見通しとなったことで、ドル円は11月14日に156円台に達した。
また、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、同日の講演で「経済は利下げを急ぐ必要があるというシグナルを送っていない」と発言。市場はこれを利下げペース減速の示唆と受け止め、15日午前の東京外国為替市場で、ドル円は156円74銭水準までドル高・円安が進んだ。
■市場では介入の可能性を指摘する声もあるが介入判断の1つの目安は為替レートの予想変動率
ここ数日、ドル高・円安のペースが加速していることから、市場では、政府・日銀によるドル売り・円買い介入の可能性を指摘する声も聞かれるようになった。
そこで以下、為替介入の可能性について考えてみたい。今年に入り、ドル売り・円買い介入は4月29日、5月1日、7月11日と12日の4回行なわれた。介入金額は順に5兆9185億円、3兆8700億円、3兆1678億円、2兆3670億円だった。
介入の判断基準の1つとして、為替レートの予想変動率(ボラティリティ)が考えられます。これは、為替レートのボラティリティが急上昇し、国内経済に悪影響を及ぼす懸念が生じれば、介入の可能性が高まるからだ。
実際に、介入直前の変動率を確認してみると、4月29日は期間1週間が17%台前半、1か月が12%台前半だったので、これらの水準が介入判断の1つの目安になると思われる。
■投機筋の動向も要注意で高官発言は重要材料、市場は160円水準を防衛ラインとして意識か
ただ、7月11日の水準は、期間1週間が7%台前半、1か月が8%台半ばだったので、ボラティリティは唯一の判断基準ではないことがわかる。
そこで、別途確認すべきは投機筋の動向だ。米商品先物取引委員会(CFTC)によると、非商業部門(投機筋)による円の売り越しは、7月2日時点で18万4223枚(1枚は1250万円)と過去2番目の規模に膨らみ(図表1)、本邦当局は投機的な動きを抑制すべく、介入に踏み切ったと推測できる。
現在、期間1週間のボラティリティは9%台後半、1カ月は10%台前半にある一方、投機筋の円売りは、それほど積み上がっていない。為替介入の可能性を探る上では、引き続きボラティリティと投機筋の動向を確認しつつ、高官発言(図表2)も重要な手がかりになると考える。
なお、ドル円は4月29日に160円17銭水準、7月11日に161円76銭水準をつけており、市場では160円水準が防衛ラインとして意識されやすいように思われる。
構成/清水眞希