「ChatGPT」が誇る要約機能をフルに活用しているのが、ビジネスコンサルタントの越川慎司さんだ。クライアント企業の社員調査で実践しているChatGPTの活用方法やコツを聞いた。
インサイトを得るには続けて3〜4回質問するのがポイント
DIME 越川さんが経営するクロスリバー社では日頃どんな調査や分析をしているのでしょうか?
越川 働き方改革に関する800社の支援を行なっています。具体的には17万3000人に及ぶ社員の行動データを集計し、分析すること。膨大なヒアリングの回答からトップ5%の〝できる社員〟の行動を導き出し、残り95%の社員が再現できる方法を探っています。
DIME その中で「ChatGPT」を、どのように活用していますか?
越川 主にコメントの要約に使っています。リサーチ担当が聞き出したコメントを整えたうえで「ChatGPT」に入力して要約し、インサイト(本質や洞察)を得ていきます。
DIME 具体的にはどんなインサイトが得られるのでしょうか?
越川 例えば部下と上司との会話から「コミュニケーションの改善がキーポイント」といった分析が得られます。また〝できる社員〟は「PowerPointの1スライドが105文字以内」という分析がAIで導かれれば、それを残り95%の社員に行動してもらって検証するのが、我々の仕事です。2万1000人の行動実験をしたら、営業の成約率が22%上がったという結果が得られました。
DIME ChatGPTを使う際に押さえるべきコツはありますか?
越川 インサイトを得るには続けて3〜4回質問するのがポイントです。今までは人間が行なっていた調査や仮説を出していく作業をChatGPTに任せることで、かなりの工程が削減されました。空いたリソースはコンサルティングやコーチングにシフトできています。
越川さんが調査結果を分析するフロー
まずはChatGPTに入力するデータを用意する。越川さんの場合、対面ヒアリングなどの音声データをAIで文字起こしして、人の手でケバ取り(文章を整えること)を実行。それを3000文字程度に分割してChatGPTに入力し、それをもとにインサイト(本質や洞察)を得るという。
使いこなしポイント〈1〉要素ごとに〝セクション〟で分類
入力したデータをセクションに分割して格納しておけば、繰り返して同じデータを入力する必要がない。例えば、Aさんのデータを[sec1]、Bさんのデータを[sec2]と指定すると、後から元データを指定して分析するのが楽になる。「同一のスレッド内なら過去に〝格納したデータ〟を持ち続けるので、連続して分析できます」(越川さん)
上記のように変数(variable)に文字や数値を〝格納する〟ことを宣言。格納したいデータを[sec1][sec2]として入力していく。
使いこなしポイント〈2〉〝セクション〟を指定して情報を入手する
先ほど格納したセクションを指定して質問することで、精度の高い回答が得られる。「最初に要約された文章に対して『続けて』と入力すると、さらにインサイトに近づいていく。3回ほどやるとかなり精度が高まり、要約されたポイントをふまえて、今後の取り組みや改善策などをコンサルタントのように提案してきます」(越川さん)
満足な回答が得られなければ「続けて」(もしくは英語で「go on」)を入力。さらなる回答や解決策などを引き出していく。
JUDGE
○ 次の行動に生かせる回答まで提示してくれるのがすばらしい
AIは企業の風土や文化などを理解しているわけではないので、得られるインサイトが必ずしも正しいとは限らない。ただし、改善のための選択肢が短時間で得られるので多くの再現実験を行なうことができ、業務改善につなげられるそうだ。
× 入力できる文字数に制限あり。分割して入力するのが面倒
GPT-4では一度に入力できる文字数が2万5000文字に拡大されたが、実際には3000〜5000文字しか読み込まない。そのため、長い文章は分割して入力しなければならない。まとめる行数についても正確性にはまだ難がある。
取材・文/小口 覺 イラスト/えなみかなお
800社17万3000人のAI行動分析でわかった「仕事の無駄」を絶つ超タイパ仕事術
「時短を意識して仕事を進めるためには、一日を通して計画的に準備することが大切です。仕事時間だけに意識を傾けるのではなく、働く前後の時間を有効に活用することも心がけましょう。精神を落ち着かせることや、リフレッシュのための時間を確保することで、仕事時間中の効率が高まり、結果的には時短につながります」と話すのは、ビジネスコンサルタントの越川慎司さん。複業・週休3日を実践しながら800社へ働き方改革のノウハウを提供し、24冊以上のビジネス書を執筆している、まさに仕事の達人だ。同氏がこれまでに働き方改革を支援してきたのは800社以上にのぼる。クライアント企業の優秀なビジネスパーソンに見られる行動を分析して導き出した、業務の無駄を徹底的に省き、仕事のタイパ(タイムパフォーマンス)を高める方法を著書「最速で結果を出す超タイパ仕事術」で詳しく解説している。