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陰謀論やフェイクニュースから真実を見抜くポイントは?

2024.11.16

正しいと信じられている情報が本当に真実かどうか、知りたいと思う人は多いはず。また、陰謀論やフェイクニュースから身を守るために私たちは何をすべきなのだろう。ニッポン放送アナウンサーで平日朝のラジオ人気ニュース番組『飯田浩司のOK!Cozy up!』キャスターの飯田浩司さんは、偽情報をうのみにしないための作法があると言う。

飯田さんは、安易なレッテル張りで、見えなくなるものがあると主張している。特に表面的な正しさに騙されず、「わかりやすさ」を疑うことで、真実に近づくことができるとして、このほど「わかりやすさを疑え」(SBクリエイティブ発刊、定価1045円)を発刊した。

「わかりやすさ」を追求してきた私たちにとって、そのわかりやすさこそが、危険をはらんでいるという主張は、ある意味新鮮だ。

ニュース番組のキャスターとして、現場を取材してきた飯田さんは、真実を伝えるために粉骨砕身してきた。だからこそ、私達がなぜ安易に偽情報に騙されてしまうのか。なぜ誤った認識をもつに至ったか、その原因の一つを突き止めることができた。そして、「わかりやすいニュースこそ、注意が必要である」と主張している。

日本人は報道に関して世界一信頼している国民である

世界中を取材してきた飯田さんによると、残念ながら日本人は米韓に比較して、フェイクニュースに騙されやすい国民であると言う。読売新聞が2024年に行ったアンケート調査によると、日本人は情報の事実確認をしていない人が多く、ネットの仕組みに関する知識が乏しいことが明らかになった。

情報に接した際、その一次ソース(情報源)を調べると回答した人は米国人で73%、韓国人57%、日本人は41%と低くなっている。

それは裏返すと新聞やテレビ・ラジオで報道されるニュースはいつも正しいと信じている結果とも言える。実際、総務省情報通信政策研究所が発表した「令和4年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」では、新聞・テレビへの信頼度は全世代で約61%。米国の32%に比較すると倍以上の人がメディアを信頼していることになる。

新聞の見出しに出ていたら、それが真実だと感じてしまう私達に、飯田さんは注意を促している。そしてその事例として、新聞など一部メディアが処理水を「汚染水」や「処理済みの汚染水」と「汚染」という言葉に言い換えて、福島県全体を貶めるような見出しでニュースを発信した。それも、日本語だけでなく英字ニュースでも「fukushima water」といった具合にだ。

また、ALPS処理水を巡っては外国メディアなどによる偽文書や偽情報に基づく報道もあり、日本政府による信頼性を損なわせることを目的とした情報操作ということで、危険視した外務省は「偽情報の拡散を含む、情報操作への対応」という公式サイトを作り、フェイクニュースを食い止めることができた。飯田さんによるとこうした事例は、他にもたくさんあると言う。

なぜ「わかりやすさ」を疑うべきなのか

フェイクニュースに騙されないために私たちができる第一歩は「わかりやすさを疑え」だと飯田さんは主張している。

「世の中の出来事をわかりやすくするために、説明を端折って単純化したり、対立構造を作り出したり、事実とは異なる形で受け手の感情に訴えかけるような報じ方をすることがあります。そうした情報はわかりやすいかもしれませんが、必ずしも真実であるとは限りません。

そして、こうしたわかりやすさを狙う土壌は、フェイクニュースや陰謀論が広がりやすい一因でもあります」としている。

飯田さんの主張は、世の中は新聞の見出しのような短い文章で語られるほど単純ではないこと。そして、わかりやすいニュースというものは、基本的にこの世には存在しないものであるという認識を持つことが重要だ、と指摘している。

読者受けを狙ってわかりやすさに捉(とら)われ、感情を刺激するような表現のニュースに出会ったら、私達はまず疑ってみることが重要だと教えてくれた。

わかりやすさを追求した結果は不寛容な社会に

わかりやすいニュースがフェイクである可能性が高いことは理解しても、なぜ「わかりやすさ至上主義」が危険なのだろう。

飯田さんによると、わかりやすさ至上主義は行きつく先は、白黒はっきりさせたがる社会や、敵か味方かの二元論で理解しようとする社会であり、自分とは異なる意見を排除する不寛容な社会になる点を、危険視している。

確かにネット上で繰り広げられる炎上事件の多くは「正しい」と信じた人からの攻撃がほとんどである。正しい人がSNSで誤った発言をした人を、徹底的に攻撃するという図式の恐ろしさを、私達はうっすら感じ始めている。

飯田さんも新刊書で「誰もが反対できない大義名分を背負った時に、万能感をもって他人を攻め立てる向きがあるのは残念なことです」と述べている。

こうした対立が行き過ぎることに不安をもつ飯田さんは、「意見の対立する相手だからこそ相手の話を聞き、妥協点を探るという営みを取り戻さなければ、分断と対立の応酬によって社会は瓦解しかねない」としている。

新刊書では他に、「円安は“国力の低下”」「就職氷河期世代は“老害”」「神宮外苑再開発は“破壊”」「首相暗殺犯は“悲劇の主人公”」といった、何となく「そうなのか」と思わせる情報に関して、丁寧に、正しく解説してくれた。

特にハッとしたのが安倍晋三元内閣総理大臣の暗殺事件である。犯人の悲惨な生い立ちが報道されて、すっかり「可愛そうだな」と思考停止してしまった私を、しっかりと覚醒させてくれた。「可愛そうな存在であり、原因は故人にもあるとでもいうような報じ方は、報道によって受け手の興味を問題の本質から大きく逸らすものだ」という言葉の重みを、多くの人に感じてもらいたい。

撮影:花村克彦/『FRIDAYサブスクリプション』(講談社)より

飯田浩司さん
ニッポン放送アナウンサー。1981(昭和56)年神奈川県出身。横浜国立大学経営学部卒業後、ニッポン放送に入社。「ザ・ボイス そこまで言うか!」アンカーマンを経て、2018年からニュース番組「飯田浩司のOK! Cozy up!」(月~金曜・午前6時~)のキャスター。著書に『「反権力」は正義ですか』(新潮新書)がある。

文/柿川鮎子

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