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消費者は企業に対する「信頼」を重視、AIは期待過剰から懐疑的な見方へ

2024.11.15

米国クアルトリクスの日本法人、クアルトリクス合同会社(以下「クアルトリクス」)から、第4回目となる年次レポート「2025年消費者トレンドレポート」が発表された。

本レポートは、23の国・地域2万3730人(うち日本から1199人の回答)の消費者を対象として調査を実施。日本におけるカスタマーエクスペリエンス(CX)の現状に関する重要なインサイトを明らかにしたもので、2025年に向け、企業・組織のロイヤルティ向上を起点とする市場シェア拡大および収益拡大に貢献することを目的としている。

調査の結果、消費者は企業に対する「信頼」を重視し、企業とのコミュニケーション内容の信頼性や、企業のAI利用、プライバシーに関する情報について敏感になっていることが明らかになった。

本稿では同社リリースを元に、その概要をお伝えする。

エクスペリエンスへの期待の高まりが信頼の低下を招いている

エクスペリエンスが期待以下だと感じると、消費者は企業から離れてしまう。その影響は深刻だ。2021年と比較して、消費者が好ましくない経験をしたことを企業に伝える可能性は下がっているが「ネガティブなやり取りがあると支出を減らす」割合は上昇傾向にある。

顧客が「良くない体験をした」と報告した中で最も多かった理由は、従業員の応対(54%)で、次にサービス提供に関する問題(36%)、価格に関する懸念(19%)だった。業界別では航空業界(69%)がトップの評価を獲得しており、顧客による不満足度が最も高かったのは公共事業(42%)となった。

クアルトリクス合同会社のXM ストラテジー シニアディレクター 久崎智子氏は、次のように述べている。

「苦情を含むフィードバックが減ったからと言って顧客が満足しているわけではありません。顧客はブランドをかつてないほど厳しく評価するようになっています。優れた企業は、顧客のフィードバックや行動を積極的に活用して、顧客の関心を惹きつけ、 ロイヤルティを高めるために必要な施策に取り組んでいます」

■消費者からのフィードバックはこれまで以上に得られにくい状況

企業にとって「消費者のエクスペリエンスへの期待の高まり」という課題はさらに深刻化している。体験の良し悪しに関わらず、自分の体験について共有したがらない消費者が増えたためだ。

2021年以降、良くないエクスペリエンスについて消費者が企業にフィードバックを提供する可能性は12ポイント減少している。

消費者から最も多く寄せられた回答は「(良くない体験があった場合)家族や友人に話す」だった。企業に直接フィードバックを伝える消費者は10分の1以下で、ソーシャルメディアにコメント投稿する可能性も過去最低水準となっている。

この件について久崎氏は、次のように説明している。

「企業や政府は、カスタマーエクスペリエンスのパラドックスに直面しています。優れた体験を提供するために顧客のニーズを理解する必要性がかつてないほど高まっているにもかかわらず、顧客は従来の方法自分の体験に関する情報を共有しなくなりました。

企業のリーダーたちはそれでもある程度顧客を理解することができますが、直接的なフィードバックの欠如を補うためには、より洗練された傾聴施策が必要です」

■AIは期待過剰から懐疑的な見方へ

過去12か月の間に、消費者は、注文の確認から体調に関する相談にいたるまで、特定のタスクにAIを使用することに消極的になり、顧客サービスに対する懸念も高まっている。

主な懸念点は、サービスの質の低下のリスク、個人データの悪用、人による対応を希望しても対応してもらえないことだ。これに加え、組織が責任を持ってAIを使用するかどうか、あまり信頼できないと答えた人は90%にも上った。

「AIが顧客にとって有益であることを、ブランドは積極的に示し、取り組まなくてはなりません。AIに対する懐疑心を和らげるには、顧客がAIをどのように感じ、企業にどのように活用してほしいかの期待値を理解することです。この問題への解決策を見つけた組織は、今の潮流を変え、CXにおけるAIの価値を引き出すことができるでしょう」と、調査結果を受けて久崎氏はコメントしている。

今日の消費者は求めるのはプライバシーとパーソナライゼーション

顧客のロイヤルティを高める施策において、サービスや体験をパーソナライズすることはブランドにとって重要な競争優位性となるが、そのためにはまず顧客の信頼を得る必要がある。

日本の消費者の3分の1以上が、自身のニーズに合わせた体験を提供する企業から商品やサービスを購入したいと考えている。しかし、30%の人は個人情報が適切に管理されているかどうかに大きな懸念を抱き「個人情報を収集した企業が、その情報を責任を持って使用している」と企業を信頼している消費者はわずか16%に過ぎない。

消費者が、個人情報に関して企業を信頼する場合、自分に合った体験創出のためにそれらのデータが使われることに、抵抗感を感じなくなる。

久崎氏は次のように話す。

「企業は苦境に立たされています。消費者はパーソナライズされた体験を求めているにもかかわらず、それを提供するために必要なインサイトを与えてくれなってきています。

この現実は、消費者の信頼がいかに重要かということを新たな視点から考えさせられます。ブランドは、消費者の信頼を取り戻すために何をすべきかを見極めなければいけません。的外れなことをして、かえって顧客離れを招かないよう十分な注意が必要です」

■企業は消費者との関係の基本に立ち返るべき

消費者が最も重視するのは、企業を信頼できるかどうかだ。期待を正確に理解することは、企業にとって DX戦略や事業計画と同じくらい重要となる。

顧客の期待に沿わない新しい製品やサービスが原因で、組織がすでに得ている信頼を損なうことがあってはならない。

久崎氏は今回の調査結果を次のようにまとめている。

「顧客は、企業が基本的な約束を守っているかどうかをもっとも重要視しています。顧客は新しい施策に対して敏感に反応するため、基本をしっかりと整えて、それを守ることが不可欠です。顧客の要求はこれまで以上に複雑化して、変化が速いため、企業は現状通り業務を行なっていれば、既存顧客の信頼・ロイヤリティは維持できるだろうと考えるのは危険です」

調査概要
「2025年消費者トレンドレポート(グローバル調査)」は、クアルトリクスのXM Institute が2024年第3四半期に実施。日本を含む23の国・地域2万3730人(うち日本の回答者1199人)の消費者からオンラインアンケートでデータを収集した。

関連情報
https://www.qualtrics.com/ja/

構成/清水眞希

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