ヨガと瞑想を始めてから早30年。かつてはヨガや瞑想をしているというと、怪しい宗教に入っていると思われがちでしたが、今では日常のセルフケアとしてインド発祥の心身の調和をとるアーユルヴェーダなども取り入れられる時代になりました。
心と身体を磨くリセットの旅の必要性
私の周りでも美容業界に限らず瞑想をやる人、興味を持っている人が増えてきてます。
占星術でも土の時代から風の時代へ。物質の時代から心の時代へと時代の大きな流れが人間の本質へと向かっているのを感じています。
そんな中でもリトリートの旅は習慣や思考をリセットするのに欠かせないものとなっています。
歯磨き中もパソコンに向かい、歩くときもスマホを手放さない、SNSを常にチェックし、食べる時もお風呂に入る時もスマホから離れない私の日常。
ずっとデジタルとマルチタスクだらけの生活を送っていた私はこれが効率がいいと思い込んでいました。それがストレスの原因となっていると体験として気づいたのはつい3年前です。
それほどまでに目からの情報は脳に強くインプットされ情報を常にキャッチしますから思考も多く、マッサージに行っても一時しのぎで本当のリラックスにはなっていないと常々感じていました。
生活や習慣を変えることはなかなか難しい。だからこそ意識の変容ができる心と身体を磨くリセットの旅が必要と感じていました。
初めてのリトリートは2022年にsuwaruが主催する京都の鞍馬山へ行き、日常から離れて自分自身とじっくり向き合うヨガで身体を動かし、瞑想、呼吸法によりマインドを整え、自分自身と繋がり心身がデトックスされていく特別な時間を過ごしました。
それを機に年に一度はリトリートに参加するようになり、中でもいまだに変容を感じている2024年7月に北海道ニセコで開催された“サイレンス”リトリートの旅をご紹介したいと思います。
サイレンスリトリートは、言葉や話すことを避け、外側からの情報を入れず、静かな場所で過ごし、内観を通して心と体のリセット、ヨガ、瞑想、マインドフルネスを深めるためのリトリートです。
ストレスを軽減し、心身のバランスを取るための効果的な方法として、特に忙しい現代社会で自分と向き合う時間が減っている人にとって人気があるプログラムです。
サイレンスリトリートで重要なのは豊かな自然環境。その中でも湖や雪が長く降り積もる場所が適していると言われています。ニセコは半年以上大地が雪に覆われているので広範囲で静けさの波動に満ちていました。
デジタルデバイスをオフ!
リトリート期間中の3日間は携帯などのデジタルデバイスをオフし、人と目を合わせない、話さない、本なども読まない、座学以外は文字も書かないという言葉と思考の断食をします。自分にできるのだろうか? いや~無理無理、、、でもやってみたい!
初日は携帯に振り回されないフリーな感覚を思い出し、携帯を気にしないのがこんなに楽だったとは。携帯のない時代の懐かしくも新鮮な感覚が甦ってきました。
話さない事で自分のマインドにも徐々にフォーカスしていきます。
「帰ったらあの人にアポを取って…」、「仕事が溜まっているな。あ、携帯使えないんだった…どうしよう…。」
朝起きてから寝るまで日常で膨大な量の思考に驚きます。時には過去への後悔やまだ起こっていないことへの不安も。
私たちの頭には常に思考の会話がとめどなく流れてきます。私たちは普段このようにマインドばかりを使って生活しています。
とめどもなく流れ浮かんでくる思考をただ見る。浮かんできたものは”今ここでこれを考えても仕方ない”と受け止め、
そこにとらわれずす~っとただ流していく。自然に消え、次第に落ち着いてくる思考。
2日目になるとだんだん思考が少なくなり精神的な落ち着きが生まれてきます。するとネガティブでマイナスな思考は不規則な食事や生活習慣によるストレスや不安からも生まれてくるのだと気づいていきます。
神仙沼を歩いたその日は、心を奪われる美しい空が広がり、鳥たちのさえずりが響き渡り、緑豊かな木々がそよぐ風に揺れていました。澄み渡る沼の静けさは、言葉にできないほどの美しさで輝いていました。
大自然と繋がる素晴らしい感覚。あるがままの美しい自然を心から深く感じ取ることができました。
考えるのではない、あるがままの美しい自然を心から深く感じ取ることができました。
リトリートでは北海道の季節の自然食材を使った栄養豊富なビュッフェメニュー。会話を介しない黙食は自分が必要と感じる量を取り、その行動にも意識を向けていきます。無意識で食べているといつも満腹になるまで食べている習慣にも気づき、腹8分目は胃にも消化にもちょうど良く、必要以上に食べ過ぎることを防いでくれます
食べることに集中してより味に敏感になり、一つ一つの野菜の美味しさや食感、香りを感じることができ、料理を作ってくれた人、野菜を作ってくれた人や自然の恵みのありがたさ、感謝の気持ちが広がっていきます。
夕食後のフリータイムでは内観しながらマインドフルネスにゆっくりと散歩。
ふと見上げると空には雲の間から金色に輝く満月が現れていました。夜の静寂を包むその月の光は、まるで大地全体を穏やかに照らし出すかのように、神秘的な輝きを放っています。
私はその場にゆったりと座り、ただ自分の静かな呼吸を見つめながら月の光を細胞ひとつひとつが呼吸するように月光浴を楽しみました。
満月の夜、心静かに月の波動を感じ、ムーンウォークをする。なんと贅沢な時間なんでしょう。
翌朝のヨガでは次第に身体も心も軽くなっていくのがわかります。
ニーマル先生の誘導で瞑想もより深い呼吸へと繋げて行くことができ、一つ一つの呼吸がよりクリアに微細に感じていきます。
そこで見えてきたのは一生懸命頑張り過ぎている自分でした。
「~しなければならない…」。「期待に応えなければ」、「いいものを作らなければ」、いつも何かに追われているような感覚。
その重荷はもういらない、自分が勝手に作り出しているただの幻想、思い込みにすぎないのだとはっとしました。
「ありのままでいいんだ…」。
いつも肩が凝っていて頭が痛くて体と心のSOSに気づいていなかった自分。
その瞬間心がす~っと軽くなっていくのを感じました。
サイレンス最終日ではニーマル先生と参加したリトリートの仲間と普通に会話できることの喜びとそれぞれが受け取ったシェアリングの時間の感動は今でも忘れられません。
「Speech is silver, silence is gold. 言葉の力を感じた」
「自分が観察者になり行動することができたなど」
「マインドの状態、心の状態をジャッジせずにありのままを受け入れている自分にきづいた(など)」
「口に何を入れるか、何を出すのか、意識的に話をする、意識的に食べることを意識するようになった」
「行動のチョイス、言葉のチョイスを意識するようになった」
「期待をも持たずにセルフレスで行動することができた」
「結果にこだわらない、執着しない、ポジティブな思考が得られた」
などなど…、個人個人が感じる思いや受け取り方は違うけど、たくさんのシェア、学びがありました。
帰ってからもその気づきが発端になって、ひとつひとつの行動に少しづつマインドフルネスが実践できるようになってきました。
食事、歯磨き、スキンケア、お風呂、散歩、料理をしている時など日常のアクションの中に自分の感覚に意識を向ける時間を徐々に増やしていきました。
今回のリトリートの学びから得た、
特に日常への取り入れ方や自分に向き合うヒントとして以下のようなことが思いつきました。
・お休みの時や朝の時間など定期的にサイレンスを実践する
全てのディバイスをオフにして外側の情報を入れない日を作る。
・少しでも言葉を(自分の内側でも)発しないサイレンスな時間を取り入れる。例えばご飯を食べる時サイレンスでいる、食事の後10分サイレンスでいるなど、
静かに自分だけに集中する静寂な時間を日常生活に取り入れていく。
ユダヤ教では「安息日(シャバット)」と呼び、働かない、家事もしない、何もしない日があります。リラックスするということ、休むということの大切さ。
ノーベル受賞者の20%がユダヤ人というようにアインシュタインをはじめ天才、成功者は日常生活から離れ本質的なことを深く考える日を週に1日作っていると言います。
サイレンスリトリートは忙しい日常から自分を解き放ち、人生を深く見つめるためのよりポジティブな変化を起こすきっかけとなり、気づくと前よりももっと生き生きと輝いている自分を発見していく旅になる事でしょう。
静かに座って夕日を見たり、海や川の自然の音を聞いたり、花の香りを嗅いだり、自然と触れ合う時間をつくり、志を共に過ごす仲間たちとの出会い。
人生の豊かさとは何か?
モノではなく体験することが自分への最高のギフトとなるに違いありません。
MICHIRU(みちる)
メイクアップアーティスト・ビューティーディレクター/渡仏、渡米を経て、国内外のファッション誌や広告、ファッションショーやメイクアイテムのディレクション、女優やアーティストのメイクなどを数多く手がける。また体の内側からきれいになれるインナービューティを提唱するなど幅広く活躍中。本連載ではナビゲーターを務める。
取材・構成/MICHIRU