「投歯(とうし)」とは、将来の健康的な生活の実現を見込んで、日々のセルフケアと合わせて、定期的に歯科医院でチェックを受け、口腔の健康維持に努めることを意味する造語だ。
先行研究によると、歯科健診を受診していない人は、受診している人と比較して、医療費や介護費用が高くなるということが明らかになっている。早い段階から、口腔の健康維持に関心を向けてもらうことで、将来の医療費や介護費用の負担軽減にもつながる。
日本歯科医師会は、歯と口の健康への興味や関心を高めてもらうため、「未来の歯産価値を、今からつくる。#投歯」プロジェクトを展開している。
このたび、日本歯科医師会は将来の健康に備えた口腔ケアの実態を明らかにすべく、全国の20歳~69歳の男女1,000人を対象に「投歯に関する意識実態調査」を実施した。
20代の歯や口への定期的なメンテナンスは、男性の「筋力」、女性の「眉毛やまつげ」よりも低い
20歳~69歳男女1000人に、体の中で定期的にお金をかけてメンテナンスをしているところを尋ねたところ(複数回答)、全体では、「髪」(49.2%)に次いで「口・歯(口腔ケア、歯並び矯正、ホワイトニングなど)」(32.6%)という結果に。
20代に絞ってみると、「口・歯」の回答割合は、全体平均に対し男性20代(18.0%)が14.6ポイント、女性20代(25.0%)が7.6ポイント下回った。
男性20代の「口・歯」の回答割合は、「筋力」(27.0%)や「肌」(26.0%)を下回っている。また、女性20代も、「眉毛・まつげ」(27.0%)を下回ったほか、「肌」(25.0%)や「爪」(25.0%)と並ぶ結果となった。
「口腔ケアなど見えないところのケアよりも、髪やネイル、肌など人目につくところを優先したい(「そう思う」「ややそう思う」計)」と回答した割合は、全世代で20代が最も高く、65.0%に達している。
口腔ケアに自信がある人は約半数。若い世代ほど、口や歯の見た目を気にする傾向に
回答者全員に、自分は口腔ケアができていると思うかを聞いたところ、「できていると思う(「できている」「少しはできている」計)」と、「できていないと思う(「あまりできていない」「できていない」計)」の回答割合は、ほぼ半数に。
口腔ケアが「できていないと思う」と回答した人に、現在の「口・歯に関する悩み」を尋ねたところ、世代によって悩みが異なり、20、30代の上位3項目は「口臭」「歯の色」「歯並び」となり、目の前の相手に与える印象を気にしている傾向があった。
一方、40代では、「歯間にものがはさまる」が3位に入り、50代、60代では1位になっている。
20代、30代での口腔ケアが将来の残存歯数に影響!残存歯数が少ない人ほど、QOLの低下や経済的負担の大きさが顕著に
40代以上の回答者に対し、口腔ケアをおろそかにしたことで現在起きている生活への影響について聞いてみた。下のグラフは、影響がある(「そう思う」「ややそう思う」計)の回答割合を回答者の残存歯数別に示したものだ。
結果を見ると、残存歯数が0~19本の人は、約6割(58.1%)が「食の楽しみが減った」と回答し、半数以上の人が「生活全般において経済的負担が高まっている」(53.5%)、「医療費がかさんでいる」(51.2%)と回答。
全ての項目において、残存歯数が多いほど、QOL(生活の質)や経済的負担への影響が少ないことから、歯の健康の維持がQOLの向上や経済的負担の軽減につながることが示唆される結果となった。
※永久歯は全部で32本。親知らずを抜いていると28本になる。
1989年より厚生省(現・厚生労働省)と日本歯科医師会は、「80歳になっても20本以上の自分の歯を保とう」という『8020運動』を推進している。
厚生労働省による「令和4年(2022年)歯科疾患実態調査」では、8020達成者は50%を超えている一方で、80歳~84歳の1人平均現在歯数は15.6本であった。
20代、30代の回答者に、自分が80歳になったときの残存歯数を予想してもらったところ、口腔ケアに対する自信の有無や、歯科での定期的な受診頻度によって大きな差が見られる。
自分は口腔ケアが「できていると思う」と回答した人は、80歳で約20本(19.1本)の歯数を維持していると回答したのに対し、「できていないと思う」と回答した人は、16.5本と2.6本の差があった。
また、歯科での定期的な受診頻度においては「半年以内」の人は18.7本であるのに対し、「受診したことがない」と回答した人は16.4本と2.3本の差が生じている。
調査概要
調査名:投歯に関する意識・実態調査
実施時期 2024年9月20日(金)~9月21日(土)
調査手法 インターネット調査
調査対象 全国の20歳~69歳の男女1,000人
*本調査では、小数第2位を四捨五入している。そのため、数字の合計が100%および合計値とならない場合がある。
構成/Ara