外来種を生み出さないようにする心がけ
ここまで、いろいろな外来種を紹介してきましたが、外来種は一度侵入してしまうと根絶するのがとても困難です。そのため、これ以上外来種を増やさないようにすることが、私たち人間にとっても生態系にとても重要なことです。そのために最も気をつけるべきことは、ある地域の生き物を別の地域の自然の中に持ち込まないということです。
可愛らしい雰囲気だが外来種のチョウ・ホソオチョウ 撮影/牧田習
よくあるのはペットの昆虫を飼育するのが難しくなったため、近所の森などに放してしまうということです。これは、大量に繁殖するなどしてその地域に元々いる生き物たちに悪影響が及ぶ可能性があるため厳禁です。「この森にはカブトムシがいるから別の場所で捕まえたカブトムシを放してもいいですか?」というような聞かれることもあるのですが、これも絶対にダメです。一見、同じ種類で同じように見えても地域によって個性がある昆虫も多いです。他の地域の個体を放すことはその地域の個性を失うことにも繋がります。
また、意図して放さなくても、移動した際に荷物などについてきて本来いるべきではない場所に持ち込んでしまうこともあるので、よく注意するようにしましょう。
ここまで、外来種の昆虫たちと外来種を増やさない心がけについて解説してきましたが、外来種問題は多くの方が思っている以上に深刻な問題です。かけがえのない生物多様性を守るために生き物たちと正しい付き合い方をするようにしましょう。
昆虫ハンター・牧田習
1996年、兵庫県宝塚市出身。2020年に北海道大学理学部を卒業。同年、東京大学大学院農学生命科学研究科に入学、現在、博士課程在学中。昆虫採集のために14ヵ国を訪れ、9種の新種を発表している。「ダーウィンが来た!」(NHK)「アナザースカイ」(NTV)などに出演。現在は「猫のひたいほどワイド」(テレビ神奈川)にレギュラー出演中。昆虫をテーマにしたイベントにも多数出演している。
著書:「昆虫ハンター・牧田習のオドロキ!!昆虫雑学99」(KADOKAWA)、「昆虫ハンター・牧田習と親子で見つけるにほんの昆虫たち」(日東書院本社)好評発売中。Instagram・Xともに@shu1014my
文・撮影/牧田習