世界的に人間の移動が盛んな現代では大きな問題となっている外来種問題。どこか遠い場所の話だと思っている方もいるかもしれませんが、実は私たちの身近に外来種の昆虫が存在します。今回は実際にどんな外来種がいるのか?外来種が引き起こす具体的な被害について、そして外来種を生み出さないように一人一人が心がけるべきことについて解説しましょう。
日本の外来種の昆虫たち
そもそも外来種とは、人間により元々いなかった地域に持ち込まれた生物のことです。日本ではアメリカザリガニやアライグマなどが外来種として有名ですが、昆虫類でも多くの外来種が確認されています。ここでは、身近にいる種類から意外な種類まで、日本の外来種を3種紹介いたします。
(1) アカボシゴマダラ
アカボシゴマダラは関東地方では最もよく見かけるチョウの1つです。春に現れる個体は白っぽく、夏以降に現れる個体は黒っぽい色をしています。このチョウは元々、日本にはいなかったチョウで、中国大陸から持ち込まれたと考えられています。
(2) フェモラータオオモモブトハムシ
フェモラータオオモモブトハムシは東南アジア原産のハムシの一種で、非常に美しい体を持っています。しかし、その美しさから観賞用として持ち込まれた個体が放たれ、三重県の河川敷で大量に確認されるようになってしまいました。
(3) 北海道のカブトムシ
カブトムシが外来種と聞いて、意外に思う方も多いかと思います。カブトムシは元々、本州以南に生息していて、北海道には生息していませんでした。しかし、人間により放たれたカブトムシが北海道の自然に住み着き、現在では北海道各地でカブトムシが見られるになってきています。このような国内のある場所から別の場所に持ち込まれた外来種を「国内外来種」と呼びます。
外来種がもたらす被害
外来種がやってくると、どんな被害が生まれるのでしょうか!? ここでは、人間に直接被害をもたらす事例と周りの環境へ悪影響を及ぼす2つの事例を紹介します。
まずは多くの方が記憶に新しい危険昆虫・ヒアリ。ヒアリは南米原産で、日本には元々いない種類ですので外来種です。船舶によって日本に侵入し、港周辺などで確認されました。数ミリの小さなアリですが、毒針を持っているため、人間を刺すと健康被害を引き起こすことがあります。海外では刺されて死亡している人もいるほどです。このような被害も国際的な物流が盛んな時代だからこその問題です。
次に紹介するのはクビアカツヤカミキリというカミキリムシです。クビアカツヤカミキリは元々、中国大陸や台湾に分布しているカミキリムシで日本にはいない種類でした。しかしながら、海外から日本へ輸入された木材の中に入ってきて、関東や関西地方で確認されるようになりました。
このカミキリムシはヒアリのように人間を直接襲うことはないのですが、とてもやっかいなことがあります。それは幼虫がサクラ、ウメ、カキ、モモ、ポプラなどの木を食べて育つため、木が枯れてしまうという問題です。
クビアカツヤカミキリに限らず、外来種のカミキリムシの仲間はこのように果樹や街路樹へ被害をもたらすケースがいくつも報告されています。