■連載/ゴン川野の阿佐ヶ谷レンズ研究所
大井町駅から西大井駅までの約1.3kmの道路は、光学通りと言われ地元住民に親しまれていた。その由来は日本光学工業の工場があり、多くの社員がこの道を通勤に使っていたからだ。日本光学改めニコンは2024年夏に再び、この地に本社を移転した。これに伴い10月12日にニコンミュージアムを本社イノベーションセンター内にリニューアルオープンした。
見るだけでなく体験型展示を充実
展示面積も広くなり、展示内容を充実させただけでなく、医療、宇宙、半導体などニコンの技術が生かされた分野の展示を強化。さらにプロジェクションやディスプレイを使い視覚的に分かりやすい展示がおこなわれている。また体験型のコンテンツも加えられ光学技術への理解がより深まるようになっている。ミュージアムショップの品揃えも充実、限定グッズも購入できる。
光学通り沿いに作られたニコン新社屋ビル。ここの1階にミュージアムがある。開館時間は10時~17時半、休館日は月曜日、日曜日、祝日となる
左から、ニコンミュージアム館長の中島良允氏、品川市副区長の堀越明氏、ニコン代表取締役兼社長執行役員の德成旨亮氏、品川区長の森澤恭子氏、ニコン取締役兼執行役員の大村泰弘氏、ニコン経営戦略本部広報部長の鈴木さやか氏によってテープカットがおこなわれた
4つのゾーンでより深くニコンを知る
リニューアルしたニコンミュージアムはエントラスを含めて4つのゾーンに分かれている。エントランスから右回りにインダストリー、コンシューマー、シアターと回るのが通常のコースだ。荷物を預けたい場合は、入口の自動ドアが開いたら右折してインフォメーションを過ぎると右手にロッカーがある。時間が限られているなら、ロッカー対面の入口からコンシューマーに入り、歴代カメラとFマウントレンズ、タッチ&トライ、テーマ展示を見て、ミュージアムショップで買い物というコースが私のおススメだ。
時間がある人は、新たに拡充されたインダストリーゾーンは見逃せない。普段は見ることのできないBtoB事業で活躍するニコンに触れられる。コンシューマーゾーンも広くなり、壁面にずらりと歴代カメラが並ぶ。その対面には種類ごとにまとめられたFマウントレンズが勢揃いしている。これがミュージアムの目玉と言っていいだろう。奥の壁面は期間を決めて変更されるテーマ展示に使われる。タッチ&トライでは実際にシャッターを切れる望遠レンズ&モータードライブ付きの一眼レフカメラなどが置かれていた。シアターゾーンには大型タッチディスプレイがあり、歴代ニコンカメラのカタログの拡大画面が見られる。また140インチ大型スクリーンには5分程度のショートムービーが繰り返し上映されていた。
ニコンが作っている世界最大の合成石英ガラスインゴットを中心に様々な分野で活躍するニコン製品が展示されるインダストリーゾーン
実際にのぞける実体顕微鏡も展示されている。ニコンは1925年にJOICO顕微鏡を発表。レンズの精度を高め最大765倍まで拡大できた。顕微鏡の歴史は来年で100年となり、カメラの歴史より長いのだ
ニコンは天体望遠鏡も作っている。手前は「6.5cmED屈折赤道儀」、1985年の価格は19万8000円。EDレンズを使っているところがミソだ。ニコンは約40種類の天体望遠鏡を製造して天文学の発展に貢献した
半導体の電子回路の原板になるフォトマスクを製作するために作られたウルトラマイクロニッコールレンズ。画像は1962年に初めて完成した105mmF2.8で、1mmあたり400本の高解像度を誇る。ちなみに現代では1mmあたり10万本の解像度を達成している