北米やヨーロッパなど多くの国々で、グローバル調味料として醤油を根付かせることに成功しているキッコーマン。海外事業の売り上げが7割以上を占めるという快進撃を続ける中、次なる有望な市場として世界最大の人口を有するインドに注目。現地の食文化に合わせた商品展開が国際市場での成功の秘訣というが、インドの食文化といったらまずカレーが思い浮かぶ。そこに勝機があるのだろうか?
〝インド中華〟とは一体何?
「日本ではあまり知られていませんが、インドの飲食店や屋台では〝インド中華〟という料理ジャンルがポピュラーで、インド全土でとても人気があります。中華料理に欠かせない調味料こそが醤油、その需要が家庭料理への浸透などで益々高まることを予測しています」(キッコーマン 海外事業部 インド担当・五十嵐欽哉さん)〝インド中華〟とはインドで生まれ、独自にローカライズさせた中華料理のこと。代表的なのはインド生まれの中国系移民が生み出したマンチュリアン(満州)ソースと、中国・四川省出身のシェフがインド人客向けにスパイスをきかせた中華料理・シェズワン(四川)ソースを使った料理だ。満州などの地名がつけられているが満州料理というわけではなく〝中国風〟ぐらいのニュアンスだ。
マンチュリアンはとろみのあるあんかけ風で、キッコーマンも商品化したダークソイソースというインド独自の醤油で調味。シェズワンはチリソースにショウガやニンニク、胡椒などを合わせたじわっと辛さが押し寄せる味わい。いずれも炒飯、海老チリ、野菜炒めなど、様々な料理に展開されている。どれも確かに中華料理なのだが、それだけではないスパイシーさが漂う不思議なおいしさでクセになりそう。
「インドでは高級レストランでも庶民向けの店でも人気なんですよ」と話すムンバイパレスのシェフ・サウドゥ ラウさん。インド全土を夢中にさせるインド中華、スパイス好きな日本人をも魅了する日は遠くない。
市場開拓のカギは「インド中華」にあり!?醤油で世界を席巻するキッコーマンのインド戦略
1957年に本格的に米国に進出して以来、北米やヨーロッパ、アジアなど、多くの国々でグローバル調味料として醤油を根付かせることに成功しているキッコーマン。海外事業...
ムンバイパレス
[住]東京都江戸川区西葛西5-8-19
インド中華、カレー、ビリヤニなど料理ジャンル別に担当シェフが腕を振るう本格派。メニュー数が豊富。
右端の料理は、中華でおなじみの海老チリ1250円。インド風チリソースで独特の味わいに。
パニールマンチュリヤン
1090円
カレーでおなじみパニール(インドのチーズ)をソイソース炒めに。ベジタリアンもOK!
チキンマンチョウスープ
600円
片栗粉でとろみをつけた中華風のスープ。チキンたっぷりで、酸味と辛味がきいている。
野菜シェズワン炒飯
1090円
インドらしいバスマティライスを使った炒飯。唐辛子のパンチのある辛さがアクセント。
キッコーマン、インド中華でインド市場攻略へ
本醸造醤油や、インド向けに開発したベジタリアン対応のオイスターソース、着色料不使用のダークソイソースなどを2021年より順次販売。業務用を中心に展開し、現地のシェフからも高評価。今後は家庭向けも視野に入れる。
取材・文/嶺月香里 撮影/米山典子
※本記事内に記載されている商品やサービスの価格は2024年9月30日時点のもので変更になる場合があります。ご了承ください。