GNUS代表取締役CEOの文分邦彦です。
日本企業のDXを進めるために「知っておきたい、デジタルプロダクトの今」という形で、DXやデジタルプロダクトに関することを中心にお届けしています。今回は生成AIの取り入れ方についてお話しします。
※GNUS:デジタルプロダクトを通じた事業成長や事業変革のパートナーとして、2019年に電通グループ内に設立。新規事業や既存事業のDXの鍵となるデジタルプロダクトの企画やPoCから開発・運用、さらにはグロースまでを、国内外600人以上のネットワークメンバーから最適なチームを組成し、アジャイルなプロジェクトマネジメントを通じて支援している。
生成AIを活用する4つのステップ
生成AI は、今やビジネスシーンにおいて欠かせないツールになりつつあります。その活用範囲は、単なるチャットbotから、業務効率を大幅に向上させるアプリケーションまで多岐にわたります。
今回は、私が実際に試している、生成AIを段階的に活用するための4つのステップをご紹介します。各ステップを踏むことで、生成AIの真価を引き出し、生成AIよりも創造性の高い業務にフォーカスすることができるようになるはずです。念のためお伝えしておきますが、私はプログラマーとしてのキャリアはなく、文系人材です。それでもここまではほぼプログラミング不要でできます。
生成AI活用の第一歩は、チャットbotとしての導入です。日常業務の中でクイックに調査したいことを確認したり、文章を作成したり、作成した文章をチェックしたり、要約したりすることができます。
具体的なケースとしては、私は過去にちょっとしたSQL(リレーショナルデータベースに情報の格納や処理を行うためのプログラミング言語)を作る必要があった際に、生成AIを搭載したチャットbot で素早く作ってもらったこともありますし、作成した文章の表記揺れや表現チェックなどをしてもらっています。
ポイント:
単純な業務の効率化……例えば、メールや記事の推敲(すいこう)、翻訳、表現のばらつきのチェックなどは比較的簡単にできる作業ですので、まずはここから始めるのが良いと思います。
テキスト以外の生成……テキストに限らず、画像や動画の生成も簡単にできます。特に画像生成については、スライドに活用したりホームページに掲載したりすることも簡単にできます。
チャットbotの導入で生成AIの可能性を感じたら、次のステップはプロンプト(指示文)のチューニングです。プロンプトを工夫することで、生成AIは単なるチャットbotから、定型業務を処理するエージェントへと進化します。例えば、営業日報の作成、議事録の要約、メールの返信などを自動化できます。
プロンプトのチューニングで役に立つのは、コラムなどの文章の作成です。いきなり全てを書いてもらうのではなく、コラム全体の構成と見出しをプロンプトに加えて、文章の長さや体裁を指示するだけでも、満足できる文章を作成してくれます。
ポイント:
プロンプトエンジニアリング……プロンプトエンジニアリングとは、生成AIに適切な指示を与える技術です。プロンプトエンジニアリングを学ぶことで、生成AIの能力を最大限に引き出すことができます。
業務プロセスの見直し……生成AIを導入する前に、既存の業務プロセスを見直すことが重要です。生成AIに適した業務プロセスを設計することで、より効率的な業務フローを実現できます。
生成AIの活用がさらに進めば、外部情報や社内の独自情報を取り込んで、より高度な業務を効率化するアプリケーションを開発できます。例えば、競合他社の情報を収集・分析するツール、市場トレンドを予測するツール、顧客の声を分析するツールなどを開発できます。
実際にいろいろな使用ケースがあるのがこのステップで、私の使用方法では、企業の決算説明会の資料などを読み込ませて、それについてのサマリーを作成したり、こちらが気になるポイントをまとめてもらったりしています。また、自社の契約書のひな型と取引先から提案された契約書の間の差分とリスクをチェックしたりすることも簡単にできるようになっています。
ポイント:
RAG※の活用……生成AIのモデルの学習に利用されていない企業の独自情報(社内規定や業務情報など)を取り込むことで、自社の業務に最適化されたチャットbotであったり、業務アプリケーションとして活用したりすることができます。
ファインチューニングの活用……RAGだけでなく、ファインチューニングを組み合わせることで、プロンプトをシンプルにしてコスト効率やレスポンススピードを上げることができます。
※Retrieval-Augmented Generationの略。LLM(大量のテキストデータとディープラーニング〔深層学習〕技術によって構築された言語モデル)によるテキスト生成に、外部情報の検索を組み合わせることで、回答精度を向上させる技術のこと。
生成AI活用の最終段階は、社内システムとの連携です。生成AIを基幹システムやCRMツール、SFAツールなどと連携させることで、複数のメンバーの業務を効率化するアプリケーションを開発できます。例えば、営業活動の進捗状況を自動で可視化するアプリ、顧客へのアプローチを最適化するアプリ、社内業務を最適化するアプリなど を開発できます。
GNUSでは、スタッフィング業務において、いくつか社内アプリを展開しています。プロジェクトに必要なスタッフの要件を、自由記述から決まった様式
に変換するアプリを作っており、スタッフィングのスピードと品質の改善に役立っています。
ポイント:
運用体制……生成AIを活用したアプリケーションを導入する際には、運用体制の整備も重要です。アプリケーションの保守・運用を行う担当者を決め、定期的なメンテナンスやアップデートを行うことで、安定稼働を維持できます。
セキュリティ……社内システムとの連携においては、セキュリティ対策が重要です。生成AIが扱うデータの機密性を確保し、不正アクセスや情報漏えいを防ぐための対策を講じることが必要です。
まとめ
生成AIは、ビジネスに革新をもたらす可能性を秘めた強力なツールです。文系経営者であっても、本記事でご紹介した4つのステップを参考に、段階的に生成AIを活用することで、業務効率化、生産性向上、そして新たなビジネスチャンスの創出を実現できるでしょう。
ぜひ、みなさんがどのように生成AIを活用しているのか、どのようなところで困っているのか教えていただければ幸いです。
文分 邦彦 / 株式会社GNUS 代表取締役CEO
電通入社後、営業局に配属。外資系消費財メーカー、IT系企業などのマーケティング戦略に従事。2009年に電通の新規事業担当として、電子雑誌販売アプリ・マガストアの立ち上げおよびプロダクトマネージャーを担当。2011年以降、電通に新設された新規事業開発&コンサルティング部門にて、メディア業界、金融業界、自動車業界、スポーツビジネス業界の、デジタル化や新規事業コンサルティングを推進。2017年からニューヨークのDentsu Holdings USAに出向、日系大手メーカーのデジタルマーケティングのコンサルティングや新規事業企画などを中心に担当し、AIを使ったソフトウエアサービスなどの開発を推進。2019年に帰国し、GNUSを設立、CEOに就任。
※こちらの記事はウェブ電通報からの転載記事になります