2024年11月5日投開票が行なわれたアメリカ大統領選挙は、ドナルド・トランプ元大統領がカマラ・ハリス副大統領に対して当初からリードを保ち、当選に必要な選挙人270人を獲得。当選を果たすと同時に、日本時間の11月7日12時の段階で295人まで増やしており、得票数においても事前の予想を上回る大勝となることが確実視されている。
こうして「もしトラ」が現実となったわけだが、その市場に与える影響について三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩 氏から分析リポートが到着しているので、その概要をお伝えする。
トランプ氏が勝利、共和党も上院多数派を奪還へ、トリプルレッドとなるか下院の結果が焦点に
今回の当選により、トランプ氏は第22代(1885年)と第24代(1893年)の大統領に就任したグロバー・クリーブランド以来、2人目となる「返り咲き」(連続ではない2期)を果たした大統領となる。2025年1月20日に第47代大統領就任式に臨む予定だ。
米大統領選挙は11月5日に投開票が行なわれ、共和党候補のトランプ前大統領が激戦州とされる7州のうち、東部ペンシルベニアなど4州を制し、勝利を確実にした。
米大統領が再選失敗後に返り咲くのは、実に132年ぶりのこと。なお、米大統領選と同時に投開票が行なわれた米連邦議会選では、共和党が4年ぶりに上院の多数派奪還が確実な情勢となっている。
下院については、引き続き共和党が多数派を維持できるかが焦点となるが、大勢の判明にはまだ時間がかかる見通しだ。
共和党が下院で多数派を維持できれば、「トリプルレッド」となり、トランプ氏の政策の実現度は大幅に高まることになる。一方、民主党が下院で多数派となれば、「ねじれ議会」となり、予算が必要な政策には民主党の協力を要するため、トランプ氏の政策の実現度は低下する。
■減税や財政支出の政策実現度は、トリプルレッドなら大幅に高まる一方、ねじれ議会なら低下へ
つまり、下院の選挙結果次第で、政策の実現度が異なり、金融市場への影響も変わってくることになる。
そこで、(1)大統領令でできる政策と、(2)議会の協力が必要な政策をまとめてみたい。
(1)について、大統領令は通商政策や移民政策、規制の改廃など幅広い分野に権限がおよび、トランプ氏の政策では、関税引き上げや不法移民規制の強化、金融・環境規制緩和が該当し、停戦交渉や軍事支援削減は、ウクライナ情勢や中東情勢にも影響する。
(2)は、税制改正や予算が必要な政策などであり、トランプ氏の場合、税制改革に関連するものとして、トランプ減税の延長や恒久化、法人税減税などがあり、予算を要するものとして、軍事費拡大、エネルギー産業や製造業支援、インフラ整備、メキシコ国境での壁の建設などがある。
ねじれ議会となれば、これらの政策を実行するためには、民主党の協力が欠かせないことになる。
■この先は財政・外交・金融の各政策の見極めが大切、トランプ政権も2回目で市場には免疫あり
米大統領選の投開票が進み、トランプ氏勝利の流れが強まるなか、11月6日の日本と米国市場では、株高、長期金利上昇、ドル高・円安の動きがみられた。
背景にトランプ氏の景気刺激的な政策への期待があり、トリプルレッドをほぼ織り込んだと推測できる。
そのため、仮にねじれ議会となった場合は、株高、長期金利上昇、ドル高・円安の動きが反転することも想定され、目先は下院の結果の確認が必要だ。
トランプ氏の勝利により、今後の金融市場への影響を考える場合、前回のトランプ政権時が参考になる。
詳細は前掲の図表のとおりで、減税政策は株高要因、米中対立は株安要因となり、米金融政策の舵取りも重要で、ハイテク株の成長が顕著だったといえる。
つまり、今回も財政・外交・金融の各政策の見極めが大切で、特に米中対立は要注意。ただ、トランプ政権も2回目ということで、市場にも免疫ができており、冷静な対処が可能と思われる。
構成/清水眞希