2024年9月26日から29日に東京ビッグサイトで行われた旅の祭典「ツーリズムEXPOジャパン2024」。
各国の大使館や外務省、大学、企業までが出展し、今年も数多くの観光・ツーリズムにまつわる最新トピックスが多く集まった。中でもトラベルソリューションの展示では、新しい観光や旅の形を示していた。
今回は、3つの製品やソリューションのトピックスを通じて、新たな観光や旅のトレンドを探る。
1. ポータブル翻訳機「Vasco」にイヤホン型の新作が登場
しゃべると音声認識してすぐさま音声やテキストで翻訳を返してくれるポータブル翻訳機は、旅のお供に欠かせないアイテムの一つとなっている。ポーランドのVasco Electronics社が開発する「Vasco Translator」シリーズは、おしゃれなルックスで音声やテキストでの翻訳はもちろん、カメラ翻訳機能も備える製品。
最新モデルの「Vasco Translator V4」は5インチのフルスクリーンを備え、タッチパネルで直観的に操作して活用できる。カメラで撮影してスキャンすればテキストを自動で読み込み翻訳するカメラ翻訳は108言語に対応している。
データ通信は、内蔵しているSIMカードを永久無料で使え、追加費用・データ制限なしで、約200の国と地域に対応する。
「Vasco Translator V4」49,500円(税込)
●イヤホン型が新登場
同イベントの同社のブースで特に注目を集めたのは、2025年に発売予定のイヤホン型新機種「Vasco Translator E1」だ。自分と会話相手双方がイヤホンを装着すれば、デバイスが言葉を聴き取り翻訳。相手がイヤホンを使わずとも、スマートフォンの画面を見ながら会話することもできる。
同社の担当者はイヤホン型を新たに作った理由について次のように話す。
「Vascoではお客様の多様なニーズに応えるソリューションの開発をミッションの一つに掲げています。今回、多言語間の会話をより自然にハンズフリーで行える翻訳機の需要を受け、Vasco Translator E1を開発する運びとなりました」
「Vasco Translator E1」価格未定。2025年発売予定。
本製品は、主にビジネスシーン向けの用途も想定されて開発されたという。対応言語は51言語。モバイルアプリまたは「Vasco Translator V4」とペアリングすることで、同時に最大10言語での会話が可能になる。
Vasco ElectronicsのAnna Dobosz氏。
「ユーザーに直接、耳に届く目立たない翻訳を提供するため、ビジネスミーティングや商談、国際会議に最適です。翻訳機を常に手に持って操作する必要がなくなるため、より自然な会話の流れを体験でき、対話に完全に集中できます。さらにイヤピースは優れた音質と使いやすさを提供し、さまざまなプロフェッショナルな環境で信頼性高くクリアなコミュニケーションを保証します」
とはいえ、旅での活用も可能だ。
「旅先や異文化交流の場など、自分のニーズに合ったシームレスでハンズフリーの翻訳ソリューションを重視する個人顧客からも、かなりの関心が寄せられています。Vasco Translator E1のシンプルさと高品質のパフォーマンスは、言語の壁を楽々と打ち破りたい人にとって魅力的な選択肢です」
ハンズフリー化により、これからは翻訳コミュニケーションがより当たり前の時代になっていくだろう。
2. 観光資源をAR(拡張現実)でブーム再燃
昨今、観光業界ではXRを利用した取り組みが広く進んでいるが、中でも同イベントに出展していた株式会社palan(パラン)の新感覚観光マップ「AR Maps」は、AR(拡張現実)を活用したサービスだ。同社はARでマーケティングや観光課題の解決を目指している。
ARとは「Augmented Reality」の略で、現実世界に、3Dモデルなどのデジタルコンテンツを重ね合わせることで、新たな現実を作り出す技術だ。ゲームやキャンペーンに応用するケースは多くみられる。
AR Mapsでは、ブラウザで観光ARマップを誰でも簡単に作成でき、観光客はアプリダウンロードの必要がなく、地図上に表示された複数のAR観光スポットでのAR体験を手軽に楽しむことができる。
同社の事業開発を担当する小林明日香氏によれば、こんな事例があるという。
●観光資源をARで再熱した奈良県明日香村の事例
「聖徳太子の生誕の地として知られる奈良県明日香村にてAR Mapsを導入いただき、2023年12月1日(金)~2024年11月30日(土)の期間、『AR明日香村スタンプラリー』を実施中です。観光客の方は、対象スポット11か所に設置されたQRコードにアクセスすることで、3Dキャラクターが出現し、スタンプをゲットできます。スタンプラリーを楽しみながら、明日香村の名所の歴史について知ることができます。
観光来訪者の客層がシニア層に集中しており、幅広い年齢層の来訪が課題となっていた中、可愛らしいキャラクターと写真が撮れることで若い世代にも反響があり、3ヶ月弱で利用者数 3,000名以上の来訪者増につながりました」
●エクスプローラー機能で冒険ゲームのように地域の周遊が可能
今年9月には、AR Maps内でゲームのようなインターフェースで地域の周遊を可能とし、観光や街歩きなどに活用できる機能「エクスプローラー機能」がリリースされた。まるでゲームのようにキャラクターを操作し、マップ上を冒険可能。歴史復元や地域の特徴を表現したARのスポットを、その場所に近づくと体験できる。
「エクスプローラー機能の追加により、地域における周遊促進、集客力向上、そして継続的な体験提供において、より効果的なサービスを実現してまいります」
ARだけでもまだまだ新しい感覚はあるが、さらにバーチャルな世界で冒険できる機能が追加されると、より若年層を呼び込める可能性が高まりそうだ。