ランニングや水泳などの心拍数が上がるような高強度の運動は、早歩きやアクティブヨガなどのより低強度の運動よりも、食欲増進に関連するホルモンであるグレリンの抑制に効果的であることが、新たな研究で明らかになった。このような高強度の運動がもたらす効果は、男性よりも女性で顕著なことも示唆されたという。米バージニア大学医学部のKara Anderson氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of the Endocrine Society」11月号に掲載された。
高強度の運動は空腹感を抑制する?
グレリンには、アシル化グレリン(AG)と非アシル化グレリン(DAG)という2つの形態が存在し、体内で、エネルギーバランス、食欲、血糖値、免疫機能、睡眠、記憶などに広範囲にわたって影響を及ぼすことが明らかにされている。グレリンはまた、急な運動により濃度が変動することも示されている。しかし、運動強度がグレリンレベルと食欲に与える影響についてのデータは限られている上に、そうした研究は主に男性のみを対象にしたものだという。
今回の研究では、8人の男性(平均年齢43.1±10.9歳、平均BMI 22.2±1.7)と6人の女性(平均年齢32.2±11.1歳、平均BMI 22.7±1.0)を対象に、運動強度と性別がグレリンレベルと食欲に与える影響が検討された。対象者には、まず、負荷を最大強度まで段階的に増やすエルゴメータ試験を実施して、乳酸値と最大酸素摂取量(VO2peak)を測定した。その後、その結果を基に、個々人のレベルに合った3種類の強度(運動なし、中強度:乳酸が急激に増え始める乳酸性閾値までの強度、高強度:乳酸性閾値とVO2peakの出力差の75%に当たる強度)を設定し、ランダムな順で行ってもらった。空腹感については、視覚アナログスケールで評価してもらった。
その結果、男女ともに、高強度の運動後では、中強度の運動後や運動をしなかった場合と比べてDAGレベルが有意に低下することが明らかになった。女性ではさらに、高強度の運動後にAGレベルについても有意に低下することが確認された。また、中強度の運動後には、運動をしなかった場合と比べて空腹感が有意に上昇していた。
こうした結果を受けて研究グループは、「中強度の運動では、グレリンレベルは変化しないか純増につながることが分かった」と述べ、「グレリンレベルの抑制には、乳酸性閾値を超える運動が必要なのかもしれない」との見方を示している。
Anderson氏は、「運動は『薬』と考えるべきであり、その『投与量』は個人の目標に基づいてカスタマイズされるべきだ」とJournal of the Endocrine Society誌のニュースリリースの中で述べている。
同氏は、「われわれの研究は、高強度の運動が食欲抑制に重要な役割を果たす可能性を示唆するものであり、これは特に、減量プログラムの一環として有用だと考えられる」と述べている。(HealthDay News 2024年10月25日)
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Abstract/Full Text
https://academic.oup.com/jes/article/8/11/bvae165/7828055?login=false
構成/DIME編集部