かつての「老後2,000万円」問題が、今では「老後4,000万円」とも言われている。しかも、今年度の国民年金保険料は1カ月あたり1万6,980円だが、2025年度は1万7,510円と530円引き上げられる。
そこで、登録者数70万人超のYouTubeチャンネル『脱・税理士スガワラくん』を運営する税理士の菅原 由一氏は、20歳以上40歳未満の第1号被保険者(個人事業主、フリーランス)の男女全国300人を対象に「国民年金保険料」についてアンケート調査を実施した。
第1号被保険者の約4割が国民年金「未納期間あり」!未納原因「経済的理由」が7割弱
厚生労働省は、国民年金保険料(以下、国民年金)の未納者が減少していると発表している。そこで、20~30代の第1号被保険者に「国民年金の未納期間はあるか?」訊いた。
6割超(62.3%)が「未納はない」としたものの、約4割(37.7%)に未納期間があることがわかり、「10年以上」(4.7%)や「支払ったことがない」(6.0%)も一定数いることが判明。
未納期間がある113人に「国民年金の未納により日本年金機構から通告が来たことはあるか?」訊き、「はい」(54.9%)と回答した62人に「最後に届いた通告は何か?」訊いたところ、「督促電話や郵便」(33.9%)が最多に。
次いで「督促状」(14.5%)、「赤い特別催告状」「最終催告状」(共に12.9%)、「差し押さえ」(6.5%)もいた。
では、なぜ未納なのだろうか。最多理由は「収入が少ないから」(35.4%)、次いで「経済的に支払いが困難(収入が少ないは除く)」(30.1%)となり、7割弱が経済的な理由によるものであった。
また、「将来自分がもらえるかわからないから」(25.7%)や「支払総額よりも受給総額が少ないと思うから」(12.4%)など、将来の年金受給の不安から納付していない人も約4割いた。
最後に、未納期間がある人・ない人それぞれに「過去10年分の未納分をさかのぼって納付できる『追納制度』を知っているか?」訊いた。
未納がない人は「知らない」(未納あり:23.9%、未納なし:48.1%)が半数を占める一方、未納期間がある人の7割弱は認知しており、「利用した」(未納あり:18.6%、未納なし:4.3%)人が約2割いることもわかった。
調査概要
調査期間:2024年9月9日~10日
調査手法:インターネット調査
調査対象:20歳以上40歳未満の第1号被保険者(個人事業主、フリーランス)の男女全国
有効回答者数:300人
調査機関:Freeasy
※脱・税理士スガワラくん 調べ
税理士・菅原由一がわかりやすく解説 「国民年金保険料未納者の実態と対処法」
国民年金(以下、「国民年金」)を未納している人が増えているようです。将来もらえる年金は少ないから、払いたくないと考える人の気持ちもわかります。
しかし、国民年金は将来の年金だけではなく他のことにも影響し、大きく損をすることもあるため、払っておいた方が良いでしょう。
滞納し続けた場合、財産の差し押さえがどのような感じなるのか?実際に滞納・未納している人がこれからどうして行けば良いのか?も含めて解説します。
●国民年金の種類
国民年金は20歳から60歳までの40年間(480か月)納付することが原則です。そうすることで、将来老齢基礎年金が満額もらえます。国民年金には大きく3種類あり、大体下記のどれかに該当します。
・第1号被保険者:主に個人事業主、その他、パートタイム等で勤務し会社の社会保険に加入していない人
・第2号被保険者:会社の社会保険に加入している人、つまり厚生年金(※1)に加入している人
・第3号被保険者:第2号被保険者の扶養に入っている人
未納の人も少なくないですが、未納者は基本的に第1号被保険者だけです。第2号被保険者は、会社が給料から天引きして国に納付しているため、基本的に納付漏れがなく、第3号被保険者は、扶養に入っているため、納付義務がないからです。
第1号被保険者の個人事業主などは、自身で納付等しなければならないため、未納が発生します。20歳から60歳までの人なので、学生でも基本納付しなければなりません。(※2)そのため、第1号被保険者の未納者は一定数います。
(※1)厚生年金の中には国民年金が含まれています。
(※2)「保険料の免除制度」「保険料の納付猶予制度」など免除の特例等もあります。
●国民年金未納者の数
現在、国民年金加入者は約6,700万人、そのうちの第1号被保険者は1,431万人で、うち未納者は106万人います。
第1号被保険者の14人に1人が未納者で、手続きをしていない、後回しにする、または学生で免除特例の申請をし忘れているなどの理由から20代の未納率が若干高い状況です。
●未納があるとどうなるのか?
国民年金を満額払うと、現在は65歳から年間81万6,000円もらえます。しかし、未納があるともらえる年金が減額され、さらに納付期間が10年未満の場合は1円ももらえません。年金をもらうためには、最低10年は納付しなければならないのです。
また、未納があると障害年金と遺族年金がもらえません。障害年金とは、ケガや病気によって日常生活や仕事に制限されるような障害を負った場合に国から補助される年金で、遺族年金は、配偶者が亡くなった場合に遺族が受け取ることができる年金です。
これは結構大きいです。そのためにも、年間20万円程度掛かりますが、将来の障害年金や遺族年金のことも考えて、国民年金は払った方が良いでしょう。
承服しない限りは差し押さえにはなりませんが、2023年度は3万789件差し押さえられています。差し押さえられるまでには下記のような段階を踏みます。
1. 納督促電話や郵便が来る
2. 1回目は青、2回目は黄色、最後は赤(ピンク)の「特別催告状」が3段階に分かれて届く
3.「最終催告状」が届く
4. 延滞金を上乗せした「督促状」が届く
5.「差し押さえ予告通知書」が届く
6. 差し押さえ
●差し押さえの対象
差し押さえの対象となる主な財産には、次のものがあります。
・給与
手取り額が月額44万円以下の場合は、手取り額の4分の1
手取り額が44万円を超える場合は、手取り額から33万円差し引いた金額
・預貯金
・(自宅などの)不動産
・車
・証券 など
また、滞納している本人だけでなく、配偶者や世帯主など家族の財産までが差し押さえの対象となります。さらには、本人の預貯金口座も凍結されてしまいます。
●差し押さえられる人の条件
差し押さえされる人には次の条件があります。
・年間所得が300万円(収入で言うと400万円程度)以上で未納期間が7か月以上
●既に未納の人はどうなる?
過去10年分の未納分はさかのぼって納付ができる「追納制度」という救済措置があります。これは、基本的に第1号被保険者の人が対象です。
厚生年金に加入している第2号被保険者の人は、60歳まで厚生年金に加入し、それ以降も会社勤めで厚生年金を払い続けていれば、60歳以降分の厚生年金は過去の国民年金未納分に充当され、満額払った形にみなしてくれる「経過加算制度」があります。
年間約20万円の国民年金を1年間払っていなかったら、将来の老齢基礎年金は年間2万円減額されます。20万円追納すると年間2万円増額するということは、10年間もらってやっと元が取れることになります。
長生きすれば良いが、65歳から10年以内にもしものことがあった場合、掛け損になってしまうと考える人がいるため、未納者が結構多いのです。
なお、国民年金を追納すると税金が安くなります。追納額は社会保険料控除に入れることができるため、追納した年の所得税と住民税が安くなります。所得税は所得が高ければ高い程税率も高くなるため、追納するなら所得の高い年にすると良いでしょう。
国民年金の未納による一番のデメリットは、障害年金や遺族年金がもらえないことです。また、将来もらえる老齢基礎年金も減額されてしまうため、国民年金は納付した方が良いと思います。
構成/Ara