日本時間の2024年11月5日夜8時から投票が始まったアメリカ大統領選挙。前日4日、民主党のハリス副大統領は東部ペンシルベニア州、トランプ前大統領はノースカロライナ州など、いわゆる激戦州で集会を開催して支持を訴えた。
直前の世論調査ではわずかにトランプ氏が上回っているようだが、どちらが勝利するにしても僅差の決着となるのは確実。それゆえ開票には時間を要すると見られており、両陣営が不正を訴えて法廷闘争に持ち込めば、さらに長引く可能性もある。
そんな開票を前に、三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩 氏から選挙結果と、それに伴う市場の反応ついて分析したリポートが到着しているので、概要をお伝えしたい。
市場はハリス氏の政策との比較でトランプ氏の減税策などを景気刺激的で財政拡張的とみている
まれにみる大接戦となった今回の米大統領選挙は、11月5日に投開票を迎えた。そこで以下、大統領選の結果をいくつかのケースに分け、それぞれで予想される米金融市場の反応について考えてみたい。
改めて、ハリス副大統領とトランプ前大統領の経済政策を簡単に比較すると、ハリス氏の政策は、法人増税、富裕層増税、食品価格の抑制、クリーンエネルギー投資の拡大など、中間層を支援する内容となっている。
一方、トランプ氏の政策は、法人減税、トランプ減税恒久化、金融規制緩和、環境規制緩和などを政策の柱としており、住宅支援や中国に対する厳しい通商政策などは、両氏ともに掲げる政策だ。
なお、市場ではトランプ氏の政策を景気刺激的、財政拡張的と受け止める向きも多く、10月に入りトランプ氏の支持率が上昇するなか、市場では、米株高、米長期金利上昇、米ドル高の動きもみられた。
■大統領選だけでなく、次期大統領の政策実行の自由度を大きく左右する連邦議会選も重要
大統領選とともに重要なのは、同時に実施される連邦議会選だ。今回、上院(定数100)は3分の1の改選と補選1議席の合計34議席を争い、下院(定数435)は全ての議席が改選され、過半数の218議席を民主党と共和党の両党が争っている。
現状、上院は改選議席の多い民主党がやや苦戦を強いられ、下院はほぼ互角の戦いと報じられているが、議会選の結果は、次期大統領の政策実行の自由度を大きく左右することになる。
選挙結果について、大統領選はハリス氏勝利かトランプ氏勝利かの2つのケースがあり、議会選は上院、下院、ぞれぞれで民主党、共和党が過半数の議席を獲得する4つのケースがある。
各組み合わせで予想される米金融市場の反応をまとめたものが前掲の図表だ。なお、上院民主党・下院共和党のケースと上院共和党・下院民主党のケースは、ほぼ同じ反応が予想されるため、図表では後者のケースを記載している。
■選挙後の市場の反応は短期的、中長期の影響は次期大統領の具体的な政策の見極めが必要
現時点での、大統領選は大接戦、上院は民主党がやや苦戦、下院はほぼ互角との報道に基づけば、ハリス氏勝利で上院共和党・下院民主党か上下両院共和党、トランプ氏勝利で上院共和党・下院民主党か上下両院共和党、という4つのケースが注目される。
米金融市場が、最も株高、長期金利上昇、ドル高で反応するのは、やはりトランプ氏勝利で上下両院共和党の「トリプルレッド」のケースと思われる。
反対に、株安、長期金利低下、ドル安の反応が大きくなるのは、ハリス氏勝利で上下両院共和党のケースで、トランプ氏の景気刺激的な政策への期待が後退することに加え、ハリス氏による景気対策の実施が見通しにくくなることが懸念される。
ただ、選挙直後の反応は短期的なものにとどまるとみており、中長期的な市場への影響を考える上では、次期大統領の具体的な経済政策や、外交・安全保障の方針などを十分見極める必要がある。
構成/清水眞希