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日本の労働市場におけるGX人材の割合は8.5%、関連業務への関与意向者も半数程度

2024.11.05

デロイト トーマツ グループは労働市場の供給面に着目。GX(グリーントランスフォーメーション)人材の市場規模を推計するとともに、キャリアの志向性やリスキルなどの実態および課題を明らかにする「グリーントランスフォーメーション人材調査」を実施した。

本稿では同社リリースを元に、その結果分析レポートの概要をお伝えする。

日本の労働市場におけるGX人材の規模について

2024年5月に全国の20~50代のフルタイム就業者13万1970人に対してスクリーニング調査を行ない、そのうちGX関与領域(※1)においてGX職種(※2)に従事する人材4017人を「GX人材」と位置づけた。
※1:経済産業省 「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」に基づき定める領域。
※2:経済産業省が組成するGXリーグ(カーボンニュートラルへの移行に向けた挑戦を果敢に行い、国際ビジネスで勝てる企業群がGXを牽引する枠組み)が2024年に公開した「GXスキル標準」において定義する、GXに必要な人材類型や職種に準ずる。

性別・年齢構成比が実際の日本の労働者と同一になるように回答者の属性別割合を補正したうえでGX人材の出現率を推計すると8.5%となり、日本の就業者人口約3000万人のうち254万人にとどまっていることがわかった。(図表1)

<図表1:日本の労働市場におけるGX人材の規模>

GX人材は男性・女性ともに年代が低いほど割合が高い傾向にある(図表1)。また、GX人材に、その他の回答者である非GX人材1111人を加えた計5128人を対象にWEBアンケートを行ない、GX人材が領域を変えながらGX職種に従事する状況などを明らかにした。

脱炭素社会への移行に向けてあらゆる業界でGX人材が求められる現状において、企業がGX人材を特定し、リテンションを含めたタレントマネジメント戦略、採用戦略、就労環境などを整備する必要があることなど、本調査を通じた示唆も得られた。

主な調査結果は以下のとおり。

■今後のGX関連業務への関与意向も56.7%にとどまる

GX人材の平均年収(管理職:952万円、非管理職:600万円)は、非GX人材の平均年収(管理職:903万円、非管理職:531万円)よりも、管理職で49万円、非管理職で69万円高い。

その一方で、今後もGX関連業務に関わりたいと考えるGX人材は56.7%と半数程度にとどまっている(図表2)。

<図表2:今後のGX関連業務への関与意向>

GX人材は8.5%と、もともと限定的であることを踏まえると、さらに人材の割合が低下する可能性がある。

他方、若い年代ほどGX人材の割合が高いことから、段々とGX人材が社会に輩出される仕組みが整いつつあることが推察できる。

DX(デジタルトランスフォーメーション)では人材の確保にあたり、高い報酬や柔軟な働き方などを整える企業の動きがあるが、GXについても、企業が重要な人材であることを明示するとともに人材を特定・把握し、より高い報酬などの目に見えるインセンティブ強化を行うなど、さらなる認知および魅力度の向上を図る必要がある。

■GX人材は挑戦機会や専門性を追求しつつも、ワークライフバランスや柔軟な働き方を重視

<図表3:GX人材の志向性>

GX人材の仕事に対する価値観や魅力的と感じる会社・仕事について尋ねたところ、「仕事とプライベートは、別々に分けたい」(75.0%)、「社員全員の総合力で成長する会社」(74.7%)、「キャリアや能力の開発機会は、自分自身が社内外でのチャンスを求めるものだ」(74.6%)という回答が特に多かった(図表3)。

全体傾向として、GX人材は挑戦機会や専門性を追求しつつも、ワークライフバランスや柔軟な働き方を重視することがうかがえる。企業がGX人材の志向性を理解して就労環境を整えることも、今いるGX人材の活躍を推進し、更に人材を増やしていく上で重要である。

■GX人材は領域をまたいでリスキルを実施。事業開発フェーズには文系、研究開発フェーズには理系が多い

今回の調査においてGX人材は、電動自動車・蓄電池等の領域に最も多く(2163人)、次いで風力・太陽光・地熱(1135人)の領域に多かった。

同じ産業の中でも、研究開発フェーズにある領域では理系職種の割合が高く、事業開発フェーズにある領域では企画・営業職などの文系職種の割合が高い傾向にある(図表4)。

例えばエネルギー産業において、風力・太陽光・地熱の領域では、文系職種が理系職種の割合よりも高いのに対して、次世代熱エネルギーの領域では、理系職種が文系職種の割合よりも高い。

<図表4:職種割合に基づくGX領域の整理>

理系GX人材によるGX業務従事後のリスキル分野は、数学・素粒子・宇宙系(36.3%)、バイオ工学系(31.5%)が特に多く、最終学歴の学習分野に限らずリスキルが行なわれている。

GX人材は文系・理系ともに、リスキルなどにより専門領域を移り変わる可能性がある。自社の業種がどのフェーズにあるのか、いま現在どの領域に文系・理系のGX人材がいるのかを理解することで、採用活動などにおいて、領域をまたいで人材を循環できる可能性がある。また人材の循環を促す上で、業務に従事しながらリスキルできる環境を整えることも必要である。

今回の調査結果について

日本を含む各国が2050年のカーボンニュートラルを目指す上で、取り組みを牽引するGX人材に焦点を当てると共に、カーボンニュートラルへの移行に向けて、新たな社会的弱者を生み出さないために、炭素排出に関連する産業に従事する人材のGX領域へのJust Transition(公正な移行)が求められる。

今回の調査結果からは、就業者人口に占める現在のGX人材の割合は8.5%と限定的であることが判明した。一方で、非GX人材の20.0%にGX関連業務への関与意向があり、53.1%が「どちらとも言えない」と回答していることから、潜在層は多いことが考えられる。

企業の役割は大きく、まずは自社のGX戦略実現に必要なGX人材ポートフォリオを策定することが重要である。その上で、今いるGX人材を特定するとともにそのスキルや志向性を把握し、採用・育成・昇格・異動等のタレントマネジメントを戦略的に行なうことが求められる。

企業がGX人材を特定し、戦略の一環として働きやすい環境やインセンティブを設けることで、GX人材およびその定義についての認知度や魅力度が向上し、潜在層がGX人材に転換するなど、GX人材市場が活性化することに期待したい。

調査概要
調査形式/Webアンケート方式
調査時期/2024年5月1日~2024年5月8日
調査対象/13万1970名(スクリーニング調査)、5128名(本調査)
・全国の20代~50代のフルタイム勤労者
・高等学校卒業後、大学以上の教育あるいは専門的な職業訓練を修了した者
・会社役員、会社員、公務員・団体職員、契約社員・嘱託社員、自営業・フリーランスに該当する者

関連情報
https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/about-deloitte/articles/news-releases/nr20241031.html

構成/清水眞希

 

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