最近、図書館に行って感じるのは、若者の姿がほぼ見当たらない。もちろん、時間や場所にもよると思うが、なぜか高齢者を頻繁に目にする。
巷では「本離れ」「図書館離れ」と言われ、利用者数も減っているそうだが、それでも、独自の取り組みで住民にアピールし、来館者増を狙う図書館がある。
ビジネスパーソンをターゲットにした図書館を発見!
名古屋市図書館は『赤ちゃんへの絵本プレゼント事業』を今年8月からスタートさせた。
これは、赤ちゃんの図書館デビューを記念し、図書館司書が選んだおすすめ絵本の中から1冊プレゼントされるというもの。
対象となるのは、「2024年4月1日以降に生まれた名古屋市在住の赤ちゃん(3歳未満)」、「名古屋市図書館で初めて赤ちゃんの貸出カードを作る(または作った方)」。
絵本のプレゼントは各区の名古屋市図書館などで行われているというこの事業、未来の本好きを育み、幼い頃から名作に触れることができる素敵な取り組みかもしれない。
そして、「図書館」のイメージを覆す独自のシステムを打ち出している稀有な図書館も発見した。北海道札幌市にある「札幌市図書・情報館」だ。
「はたらくをらくにする。」をコンセプトにビジネスパーソンをターゲットにした図書館で、館内では一部のエリアを除いて会話が可能だったり、Wi-Fiも使えたり、ビジネスの相談までできるという。
最大の特徴が、『本の貸し出しはなし!』という点。誰もが思いつく図書館のサービスを潔く排除した図書館なのだが、非常に興味をそそられてしまった。
なぜ、本を貸してくれないのか?今回、札幌市図書・情報館館長の安本さん、司書の草階さんに話を聞いた。
――ビジネスパーソンのための図書館を始めた経緯を教えてください
「図書・情報館の周辺には商業施設やオフィスが密集し、働く人々やビジネス・観光で札幌を訪れる人たちが特に多いエリアです。地域性を踏まえた図書館サービスを行うべく、札幌の魅力や街の情報、ビジネスやビジネスパーソンの抱える様々な課題解決に役立つ情報を提供するため、『課題解決型図書館』として2018年10月7日に開館しました」
WORK、LIFE、ARTという大きな3ジャンルに特化した図書館は、サービス内容もビジネスパーソンにやさしい。そして、こだわっている。
【仕事のできる座席】
館内はWi-Fiが利用可能で、個人やグループで利用できる予約席にはコンセントも完備。会話ができる図書館であることから打ち合わせや一部座席ではオンライン会議も可能だ。
【レファレンスサービス】
館内中央に位置するリサーチカウンターでは司書が仕事や暮らしの困りごとを解決するための資料や情報の案内をしている。知りたい情報がどの資料に載っているのか、どう探せばいいのか、公的な統計や書店では流通していない調査報告、各業界の雑誌や新聞を調べることが可能。また、必要に応じて専門機関を案内することもある。
これまで、「飲食店を開業するにあたって、統計データや役立つ情報などが見たい」、「キッチンカーのような業態で雑貨の移動販売をしたいので必要な資格等を知りたい」といった様々な問い合わせに対応してきたという。
【ビジネスの相談窓口】
日本政策金融公庫、北海道よろず支援拠点、札幌青年司法書士会、法テラス札幌の4団体と連携し、予約不要の無料相談や図書館内でセミナー等を実施。専門家への相談ができる体制をつくることで、ビジネスにまつわる具体的な課題解決に至る仕組みをつくっている。
【起業にも役立つデータベース】
新聞記事検索をはじめエリアマーケティングや企業財務情報など、起業や経営に役立つ23種類のデータベースを用意している。
遠方からわざわざ来館する方も多く、利用者からは「地元にもこんな図書館が欲しい」という声や「道外の出身だが旅行に来た際に図書・情報館に惹かれて札幌に越してきました」という方も。ビジネスパーソンに寄り添う図書館、恐るべし。