ロンドン本社を含め13か国にオフィスを構える市場調査会社「Mintel Group」の日本法人であるミンテルジャパンは、10月に発刊したミンテルジャパンレポート「ゲームプレイヤーへのマーケティング – 日本 – 2024年」の中で、世界のゲームトレンドと日本におけるゲーム市場の現状と課題について明らかにしてる。
本稿では、同社リリースを元にその概要をお伝えする。
世界のゲーム関連市場は2024年に2000億ドル突破か?
世界のゲーム市場は、今後も着実な成長が見込まれている。ゲーム業界の調査機関Newzooが公表したデータを基にミンテルが分析したところ、世界のゲーム関連市場は2024年に2000億ドルを突破すると予測されている。
『ファミ通ゲーム白書2024』(角川アスキー総合研究所)も同様の市場予測を示しており、その成長要因としてインフレや需要回復の影響を挙げている。
AI技術の活用については、ゲーム業界でも急速な広がりを見せており、ソニーや韓国のKRAFTONといった業界大手が積極的な導入を進めている。しかしその一方で、AIの学習データに関する知的財産権への懸念から、開発効率の向上よりもブランド独自の個性を重視する企業も存在している。
■AIの社会実装にも好意的な日本がゲーム新時代を牽引する?
角川アスキー総合研究所の『ファミ通ゲーム白書 2024』によると、2023年の日本のゲーム人口は5543万人に達し、前年比2.8%増を記録した。これは国民のほぼ半数がゲームに親しんでいる計算となる。
さらに、ミンテルが2024年3月に実施した調査では、全体の47%が「毎日」または「週に数回」「週に1回」ゲームをプレイすると回答しており、〝ゲーム大国〟としての日本の実態が明らかになった。
また、AIに対する考えを各国の消費者間で比較したミンテルの調査では、「AIは、社会にとって役立つと思うか」という設問に対し、日本の消費者の70%が「そう思う(「非常にそう思う」と「まあそう思う」の合計)」と回答した。
この数値は、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、中国など他の主要国と比較して最も高く、日本の消費者がAIの社会実装に特に好意的な姿勢を持っていることが明らかになった。
台頭するゲームブームの課題点とは
ミンテルが実施した「ゲームプレイ頻度と生活行動の関連性」調査によると、ゲームのプレイ頻度によって生活習慣に顕著な違いが現れることが判明した。
毎日ゲームをする消費者では、家の整理整頓に気を配っている人が28%、毎週運動している人が22%、テイクアウトの制限や糖質管理などの食生活に気をつけている人が34%にとどまっている。
一方、月に数回かそれ以下しかゲームをしない消費者では、家の整理整頓に気を配っている人が34%、毎日運動している人が31%、食生活に気をつけている人が46%と、いずれの項目でも高い数値を示した。
この結果から、ゲームのプレイ頻度が低い消費者の方が、より規則正しい生活習慣を維持している傾向が推察できる。
■小中高生のゲーム課金やボイスチャットによる交流が課題に
ゲームの普及に伴い、特に小中高生への影響が社会的な課題となっている。近年のゲームは、従来の対戦型に加え、多人数で参加できるタイプが増加し、ボイスチャットを通じてリアルタイムでのコミュニケーションが可能になった。
しかし、この機能がゲーム内での「ネットいじめ」を助長する要因にもなっている。プレイ中のミスや暴言をきっかけに、チームから排除されるなどの問題が増加傾向にあり、大人の目が届きにくい環境で行われるこれらのいじめは、現実世界にも波及することが懸念される。
また、モバイルゲームを中心に、ゲーム内アイテムの購入を促す課金制度が一般化している。東京都教育委員会が都内の公立小中高生1万2000人を対象に実施した調査では、全体の約27%が課金経験を持ち、高校生では約41%に達することがわかった。
さらに警視庁の「サイバー空間をめぐる脅威の情勢等」によると、2023年のサイバー犯罪において、「オンラインゲーム・コミュニティサイト」に関連する不正利用が234件(全体の49.3%)で最多を記録。小中高生が親の監視が及ばない状況で多額の課金を行なったり、見知らぬ大人との交流を通じて犯罪に巻き込まれるケースが増加しており、この問題は日本のみならず世界的な課題となっている。
出典/ミンテルジャパンレポート 『ゲームプレイヤーへのマーケティング 2024年』
関連情報
https://japan.mintel.com/
構成/清水眞希