わずか十数年で急成長を遂げたシューズブランド「On」と「HOKA」。業界をリードする存在へと変化を遂げた両社のキーマンにそのカギを聞いた。
On
機能とデザイン、そしてファンとのつながりがOnの急成長を促した!
BRAND HISTORY
2010年
スイスでオリヴィエ・ベルンハルドとデヴィッド・アレマン、キャスパー・コペッティがOnを設立。
雲の上を走っているような独自の「CloudTec」ソールが、ランニングシューズ業界に革命をもたらす。
2016年
トレイルランニングモデル『Cloudventure』を発表。新たなマーケットへも積極的に進出していく。
2019年
テニス界のレジェンド、ロジャー・フェデラーがOnのシニアチームに加入し、製品開発にも参加する。
2021年
ニューヨーク証券取引所に上場。グローバルなスポーツブランドとして大きな一歩を踏み出す。
サステナビリティーとコミュニティーを意識して前へ
印象的なソール構造、シンプルなデザイン。ランニングシューズという枠を超え、今やファッションアイテムとしても人気のOn。
「スニーカーとして、人気に火をつけたのは〝ランニングシューズ〟の『クラウド』がきっかけ。でも、その理由はデザイン性と快適性の高さに加え、偶然という部分もありました」
当然、広くマーケティング戦略していたが、その中心はスポーツの分野。あくまで競技のパフォーマンスを高めるものとしてシューズをとらえていたという。
「創業当時から「クラウドテック」という独自のソール技術が搭載されており、すでに現在に近いクオリティーはありました。そのパフォーマンスと、空洞のあるソールという、新しいビジュアルがウケたんだと思います」
今一番新しいのが、ロボットを使ってスプレーでアッパー素材を吹き付ける「ライトスプレー」という製造技術。継ぎ目のないデザインと軽量性だけでなく、切れ端などの素材のムダを出さないので環境にも優しい。このように技術もデザインもトップを走るOnだが、ブランド認知度の調査を行なったところ、まだ「11~12%くらい」だという。
「サステナビリティーを意識することは重要ですが、私たちは〝ファンコミュニティー〟をすごく大切にしています。今後もファンとの一体感を継続しながら、より愛されるブランドにしていきたいですね」
2024年10月のレートで換算すると、昨年の純売り上げは3300億円超!
Onの『Cloud 5 Waterproof』の人気ポイント
On『Cloud 5 Waterproof』2万680円
オン・ジャパン
Head of Sales, Japan & Korea
ローリック・トシミツさん
日本国内でスポーツブランドに在籍後、Onに転職。日本と韓国を束ねるセールスのトップに。
【旗艦店】On Flagship Store Cat Street
[住]東京都渋谷区神宮前5-17-27
日本初の旗艦店。原宿のキャットストリートに位置し、最新のシューズに加えてアパレルも取り揃えている。
HOKA
山から街へ。
軽さと衝撃吸収性が、ランナーとファッション業界を支える。
BRAND HISTORY
2009年
フランスのジャン=リュック・ディアードとニコラス・マーモッドが、軽量で〝厚底〟というシューズを開発。
2010年
ブランド初のモデル『MAFATE』を発売。脚に優しいシューズは特にトレイルランナーに人気を博す。
2012年
米国の大手企業DeckersがHOKAを傘下に。より広範な市場にリーチできるようになり、さらに販売が拡大。
2018年
世界的なトレイルランニング大会「UTMB」のワールドパートナーに。トレラン界での存在感をさらに高める。
2019年
カーボンプレートを搭載したHOKA初のシューズ『Carbon X』発売。HOKAの知名度を一気に高める。
マシュマロのような履き心地で人気を牽引
HOKAを語る上で、外せないのが〝厚底〟というキーワード。
「元は山の下りをいかに脚に負担なく走れるかを考えて開発されたのが厚いミッドソールです。これによって安全性も高まり、柔らかい接地感も生まれました。これが次第にランナーに評価されて、今もHOKAの特徴になっています」
厚底といえばナイキのシューズを想像するかもしれないが、実はその元祖はHOKA。ランナーの間でこのマシュマロのような履き心地が人気となったことで、あらゆるシューズブランドが厚底×柔らかい履き心地のモデルをリリースするなど、その影響はかなり大きい。ランナーからの支持を得る一方で、ファッションアイテムとしても人気に。火付け役となったのが、『BONDI 5』という超厚底のシューズだ。
「HOKAの中でも特にソールが厚く、このボリュームなのに軽量というのが特徴。特にスタイリストさんの間で人気になり、そこからHOKAが認知されていったと考えています」
ランナーからも一般ユーザーからも人気になっても、揺らいでいないのが履き心地の部分。靴底をカーブさせたメタロッカー構造など、HOKA独自のものは設立当初から変わらないアイデンティティー。
「私からすると〝乗り心地〟と言いたいですね。いつも快適に前に進んでくれるのがHOKAの特徴だと思いますよ」
すでに成熟しきったスニーカーのマーケットにおいて、約30%の成長率は驚異的!
HOKAの代表モデル『Clifton 9』の人気ポイント
HOKA『Clifton 9』2万900円
デッカーズジャパン合同会社
アシスタントマネージャー
フィールド エクスペリエンス レップ
安藤正直さん
「走るシューズ辞典」とも言われる知識をもとに、走る楽しさ、シューズに関する情報をランナーに伝授。
【直営店】HOKA Harajuku
[住]東京都渋谷区神宮前1-11-11 グリーンファンタジアビル 1F
原宿の中心に位置し、最新シューズやアパレルを網羅。ブランドの先進的なデザインと機能性が体験できる。
取材・文/今 雄飛 撮影/大崎あゆみ(On)、佐々木和隆(HOKA)
※本記事内に記載されている商品やサービスの価格は2024年9月30日時点のもので変更になる場合があります。ご了承ください。