昨今、コレクティブなスニーカーブームは過ぎ去ったと言われている。しかし、その実態を探ると少し誤解があることに気付かされた。実際にはスニーカー市場は成長しており、機能性に定評のある新興ブランドが次々と躍進している。
新興メーカーの台頭で転換を迫られる老舗ブランド
市場を牽引してきた大手2社が転機を迎えている。「ナイキは伸び悩んでいますが、圧倒的シェアは健在。アディダスは女性層のニーズが高まり、この1〜6月で復調していますね」(五十君さん・以下同)
トレランシューズが好調のサロモンは売上高が前年同期比2桁伸長
※2024年4月〜6月
近年のトレンドを語る上で欠かせない存在が1947年にフランスで創業されたサロモン。「抜群のパフォーマンス性に加えて、有名ブランドとのコラボで地位を確立しました」
リーボックが無印と共同開発を実施
今年の8月に両社が共同開発した『コートスニーカー』をリリースして話題に。「無印良品は衣料品のテコ入れを猛烈に進めています。”餅は餅屋”としてリーボックと組み、履き心地の良さを追及した模様」
成長街道を快走するオン。売上高は前年比27.8%増
※2024年第2四半期
スイスで生まれ、最新テクノロジーを用いたシューズが、世界中から支持される新興メーカー。「パフォーマンスを突き詰め、循環型のもの作りを体現。様々な業界から優秀な人材が集まり、PRに長けているのも強みです」
今年2月オープンの新店舗は連日行列!躍進を続けるホカ
2月に国内最大の直営店「ホカ 原宿」をオープン。インバウンド需要も手伝い、連日行列となっている。「トレランシューズを原点とする圧倒的なパフォーマンス性への信頼感が好調の理由。コラボ相手も厳選している印象」
アシックスが欧州で爆発的人気!株価が約5年で10倍以上に!?
※2020年3月〜2024年9月
欧米でその評価を上げた結果、国内の需要も高まっている。「先日のパリ五輪でも多くのアスリートが着用したことで価値を証明。ファッションブランドの『キコ・コスタディノフ』とのコラボも好調です」
WWDJAPAN 副編集長
五十君花実さん
1983年生まれ。大学卒業後、繊研新聞を経て、18年に「WWDJAPAN」を発行するINFASパブリケーションズに入社。
様々な角度で機能美を求める傾向がより強くなっている
──スニーカーブームが終わったと言われる昨今ですが、スニーカートレンドに精通する五十君さんはどのように感じますか?
2010年代後半から巻き起こった、ナイキ×オフホワイトに代表されるようなハイプスニーカーブームは、落ち着いた印象です。ただスニーカー市場が不調かといえば、そんなことはなく、むしろスニーカーが大衆化して、文化として成熟した印象を受けます。
──たしかに街では多くの人がスニーカーを履いています。近年のトレンドはどんな傾向ですか?
今は最先端の技術を結集したランニングや山岳系などのパフォーマンスシューズへのニーズが高まっていることを感じます。これはスニーカーだけでなく、洋服全般にも言えることです。中でも特に躍進しているのが、サロモンやオン、アシックス。これらのブランドに共通しているのが、高いパフォーマンス性です。
──消費者が求めるものがデザインから機能性に移行しているわけですね。これはなぜですか?
ファッションでも大きな転機となった新型コロナウイルス感染症の影響が大きいです。自宅にいる時間が増えたことでコンフォートなウエアの需要が増え、健康意識が高まったこともあり、より機能的なスニーカーを求める層が増えたのだと思います。また登山やキャンプなどのアウトドア需要が増えたことも遠因かとではないでしょうか。
──先ほど挙げられたオンやホカなどのブランドが好調です。どのような魅力を感じますか?
端的に言えば、一流アスリートと同じクオリティのパフォーマンスシューズを手に入れられる点でしょうか。大手だと契約選手に提供した後に、価格面を考慮して一般販売向けに改良することもありますが、小規模のブランドはクイックに販売するので、その機能性を消費者がダイレクトに体感しやすい点が醍醐味です。