投資の格言とは、過去の投資家たちが相場を見てきた経験から残した言葉。皆、儲けたいと思い投資をしていることから、相場の裏にある人間の考え方が反映されているものだ。今はシステム運用をする機関投資家がおり、コンピュータで高速取引を繰り広げているが、それでもなお大半は人間が決断しており、そのシステムを作っているのも人間である。
投資は自分のお金がかかっていることから、冷静になれないことが多い。投資の格言を知ることは、自分が置かれている状況を客観的に見るのに役立つだろう。
投資の格言
(1) 「卵はひとつのかごに盛るな」
投資信託に投資する際によく利用する言葉だ。1銘柄にだけ投資した場合、その企業の業績が悪くなったり、不祥事を起こしたりしたときに、自分の資産が大きく下落してしまう。一方で、投資信託のように、様々な銘柄に分散して投資すると、1銘柄に何か起きても自分の資産が大きく下がることはない。また、株式だけでなく、金や債券など株式とは違う動きをする資産に投資をすれば、さらにリスクを低減することができる。一方で、分散をするとリスクは低減できるが、その分利益も小さくなる。大きく利益を上げるなら、できるだけ大きな資金を個別銘柄に投資する必要があり、リスクとリターンは表裏一体の関係だ。そして、どんなに分散してもリーマンショックのような市場全体が大きく下がると、分散した銘柄すべてが下がり大きな損失を避けることはできない。
(2) 「買いは技術、売りは芸術」
株を買うときは、企業の業績を調べるなど技術的な問題がある。一方、売るときは自分の感情にも左右されるし、今の相場のように高値を超えて上がっていくこともある。過去の経験が生かしきれず、センスが必要とされるという格言だ。
次の格言のように、売り時は難しいことから、売り時にまつわる格言が多い。
(3) 「利食い急ぐな損急げ」
誰しも、投資をする前は、損したら損の小さいうちに売り、含み益になったら大きな利益になるまで保有して売ろうと考えている。実際株を保有して、自分の資産が減ってしまうと、損切りして損を実際に確定してしまうことがなかなかできない。また、含み益になれば、1日、1週間で給与に比べてこんなに利益が出たと思うと売り急いだしまうものだ。そんなときはこの格言を思い出してほしい。
(4) 「頭と尻尾はくれてやれ」
相場には大きく波があり、長い目で見ると好景気と不景気が順番にめぐってくる。
保有株に含み益があるのに、できるだけ一番高いところで売りたいと持ち続けると、逆に下がってしまうこともある。逆に、買う時も一番安いところで買いたいと考えいつまでも買えないでいると、上がってしまっていいところで買えないことがある。一番の高値や安値は捨てて、高値や底値を確認してから売り買いをするべきという格言である。ただ、どこが底値や高値だったのかは、後で振り返ってわかるものであることから、それを見てから投資というのもなかなか難しい。
私の考えでは、最大限の儲けを求めずに、そこそこでいいと思って欲張らずに投資するのがよいと思っている。
(5) 「“もう”はまだなり、“まだ”はもうなり」
次の(6)の格言にもいえることだが、まだまだ上がると皆が思う強気相場では高値であったり、まだ下がるかもと皆が思うときは格好の買い時であったりする。リーマンショックのときは、ほとんどの人が売り急ぐ、または投資を控える個人が多かった。一方で、今のような高値圏のときほど、NISAでの投資が盛り上がっている。今は本当に買い時なのか再考するときであろう。
(6) 「強気相場は悲観の中に生まれ、懐疑の中で育ち、楽観の中で成熟し、幸福の中で消えていく」
皆が投資する気になれない悲観的なときにまさに株を買う絶好のチャンスであり、楽観しているところではもう売るべきときであるという格言である。
コロナ禍で大規模な金融緩和が行われ、今世界のマネーが膨張しており、米国でも日本でも史上最高値を更新している。新型コロナ感染症拡大により一時大きく下落したのを除けば、2013年から10年も上昇相場である。高度経済成長期ではないのにここまで長く株価上昇が続くのはこれまでなかったことだ。著名投資家のウォーレン・バフェットは今買うべきではないとして現金のポジションを大きく持っているが、その間も上昇相場は続き、投資機会を逃しているといえる。著名投資家でも予想できないほどの長期の上昇相場は、いつか終わりが来るだろう。だからといって売ってしまって、そのなかで上昇相場が続いていると、投資機会を逃しているような気持ちもしてしまうから、投資は難しい。
(7) 「落ちてくるナイフはつかむな」
下がっているときの株式を慌てて買うなという格言。
リーマンショックのときは、2007年に18,000円台であったのが、2008年3月に大きく下げ12,000円台まで下がり、その後9月には8,000円台、2009年には7,000円代まで下がった。その後長く低迷し、最初に下げた12,000円台にまで戻るのに5年程度かかった。それでも、今考えると12,000円台でもかなり安い水準であるのだが、今の38,000円台から大きく下落したとしてもまだまだ高い水準であるから、もし株価が戻らず低迷すれば、また同水準まで戻るのは難しいだろう。
今の投資は難しい?
紹介した格言を見てもわかるように、売り時が非常に難しいことがわかる。利益が出ていれば、もっと値上がりするのではと考えて売ることができなかったり、逆に少しの利益で売ってしまったりする。一方、損していても、いつか戻るのではと思ってなかなか損切りできず、その投資資金を長期にわたって寝かせてしまったり、逆に大損が怖くてすぐに損切りをしてしまったりしてしまう。
このような、投資“あるある”の悩みが反映された格言は、投資をしたことがある人なら誰しも納得してしまうだろう。ただ、現在コロナ禍による大規模な金融緩和によるマネーの膨張、日々高値を更新する日本株や米株市場、これまで起きたことのないほどのバブルだといえる。投資の格言がこの未曽有のマネーの膨張に役立つかはわからないが、先人の教えは大いに参考になるだろう。
文/大堀貴子
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