今、登録車(フィットやステップワゴンなど)を含め、日本で一番売れているクルマがホンダのスーパーハイト系軽自動車であるN BOX。その標準車、カスタムに続く第三のN BOXとして2024年9月に登場したのが、~アクティブな日常を気楽に楽しめる、道具感を際立たせた新しいN-BOX~、「誰もが気軽にリラックスした時間を満喫できるクルマ」をコンセプトとし、目指したクロスオーバーモデルのN BOX JOYだ。
エクステリアはN BOX標準車をベースに立体感あるヘッドランプやブラックとボディカラーのコンビネーションバンパー、クラシカルさあるベルリナブラック塗装のスチールホイールとハーフホイールキャップのデザインが与えられた14インチホイールなどを採用。道具感あるアクティブな雰囲気を醸し出している。
インテリアはN BOX JOYの大きな特徴となる部分で、全体的にアウトドアテイストあるカーキ色でまとめられ、汚れが目立ちにくいチェック柄の撥水シートを用いるとともに、N BOX自慢の後席のダイブダウン機構による、格納した後席部分からラゲッジルームフロアに至るフラットフロア化をより一層強化。具体的には、N BOX、N BOXカスタムではそのシートアレンジ時にやや角度がついていたところを、ラゲッジルームフロアをN BOXに対して80mm高く設定。チェック柄のフロアが限りなくフラットになり、大きなバックドアを開けることで明るく解放感あるテラスのような空間が実現しているのだ。なお、シートアレンジ時の快適な座り心地を可能にするため、後席背面にはプレートを追加し、凸凹を低減。さらにフロアのストラップ機構にヒンジ式のリッドを設け、フロアの凸凹をも削減している凝りようだ。
ホンダが「ふらっとテラス」と名付けた後席格納時の広大な空間の実測寸法は、後席格納アレンジ時のチェック柄フロア部分の長さ約1280mm、後席背面部分の最大幅約520mm×2となっている(最大フロア長は1470mm)。また、室内高はチェック柄フロア前端で約1110mm、フロア中央~後端が約1140mm。大人も子供もゆったりと座れ、くつろげる広さがある。その空間をテラスとして使う際のひさしになる、開けたバックドアの長さは約1200mmとかなり張り出すため、雨や直射日光をしっかりと防いでくれる役割を果たしてくれるのだ。
なお、撥水素材の生地は、各シートのメイン部(座面、背もたれ)、フロントシートアームレスト、リアシート背面、スライドボード上面に適用。後部をテラスのように利用する際に、フロアのほぼ全面が撥水ファブリック面となるわけで、優れた撥水性を発揮するとのこと。飲み物などをこぼしても簡単に拭き取ることができると同時に、愛犬と過ごすにも(樹脂フロアと違い)、安心・快適にくつろぐことができるというわけだ。
さて、そんなN BOX JOYのNAエンジンモデルの2トーン仕様(FF/192.72万円)を走らせれば、街中での動力性能は58ps、6.6kg-mのスペックにして十二分。トルキーにスムーズに加速する(ターボモデルも用意)。先代N BOXでも下手なコンパクトカーを凌ぐ上質な乗り心地を示してくれたのだが、3代目N BOXはさらに磨かれ、とくに段差の乗り越え出のショックの小ささ、いなし方のうまさが見事。つまり、すこぶる快適だ。足回りは、硬いのが本望!?のホンダ車の中にあって、とくに柔らかい設定であるにも関わらず、ステアリングを切ったときにグラグラしなくなったのは、ボディ剛性のレベルアップも効いているはずで、実際、Bピラー部分のクロスメンバーの肉厚をアップし、ルーフクロスメンバーをハイテン化するなどの補強が、重量増最小限に行われているのである。
このN BOX JOYのNAエンジンモデルは、絶対的なパワーでターボモデルに敵わないのは当たり前だが、アクセルペダルをゆっくりと踏んでいる限り、スルスルとストレスのない走り、加速力を見せてくれる。ターボとの差はアクセルペダルを深く踏み込んだときで、その際の加速感とエンジンノイズの高まりに違いがある。とはいえ、首都高速を走っても、80km/hまでの加速はスムーズで、非力感なし。先を急ごうと、高速域でエンジンを回しても、それほどうるさく感じない。実は、3代目N BOXではフロアカーペットの中にフィルムがラミネートされ、安心感絶大なSOSコールやトラブルサポートボタン(コネクティッド機能)も備わるルーフライニング(天井内張り)の厚みを増すなど、先代以上に走行中の静粛性向上に力が入れられているのだ。
高速走行時の直進性、安定感も、スーパーハイト系軽自動車としてハイレベル。2代目までのN BOXは車両組み立て時に空車でサスペンションをセッティングしていたところを、このN BOX JOYを含む3代目では、人が乗車するとブッシュがねじれることを念頭に、生産ラインで人が乗車した状態を模して(車体を押さえつけて)、ブッシュを締結。さらにフロントのアライメントを変更。こちらも空車状態のアライメント設定から、乗車状態でのアライメント設定に変更(フィット4から採用)。結果、1~2代目のちょっとした弱点でもあった高速直進性をさらに高めることができ、一段と安心して走れるようになったというわけだ。実際、強風のアクアラインを走行しても、大きな不安、フラつきなく、走ることができたのだ。もちろん、3代目N BOXには電子パーキングブレーキやオートブレーキホールド機能のほか、ホンダの先進運転支援機能=ホンダセンシングにはACC(アダプティブクルーズコントロール)も備わっているから高速走行も楽々行える。
N BOX、N BOX JOYのような背が高く、重心も高いクルマに、運転初心者やサンデードライバーが乗るとしても、そうした安心感は大いなるアドバンテージになることは言うまでもない。魅力は決してそこだけではなく、全体的な完成度の高さにあるのだが、N BOXが日本一、売れているのも納得である。
そうそう、ホンダはHonda Dogシリーズという愛犬用純正アクセサリーを用意し、Honda Dogという愛犬家と愛犬向けのウェブサイトを運営している、極めてドッグフレンドリーな自動車メーカーでもあるのだ。
ところで、この種のクロスオーバースーパーハイト系軽自動車のラゲッジルームは樹脂フロアになるのが常識。たしかにワイパブルで汚れや水気には強く、アウトドアでガンガン使うには適しているが、逆に引っかき傷が目立ちやすく、テラスとして停車中に愛犬を乗車させるとズルズル滑りやすいデメリットが生じる。
が、N BOX JOYのチェック柄撥水ファブリック素材による「ふらっとテラス」フロアは、実際にわが家のジャックラッセルのララに試してもらったところ、樹脂フロアよりは滑りにくく、快適にくつろげることが判明。犬が爪を立てた時のキズ付きのなさもファブリックフロアならではだ。N BOX JOYは、日常使いはもちろん、アウトドアやピクニックに最適なだけでなく、ドッグフレンドリーカーとしてもかなり優秀ということになるだろう。アウトドア派にはもちろん、愛犬家にも文句なしにお薦めである。
文・写真/青山尚暉