ハイエンドリアルフィギュアで知られる、ホットトイズが贈る“ダークサイド”にフォーカスした期間限定イベント「スター・ウォーズ/ジョイン・ザ・ダークサイド」が、神宮前にあるホットトイズのフラッグシップ・ストア 「トイサピエンス」で12月15日まで開催されている。
実際に撮影で使用された、ダース・ベイダー、アナキン・スカイウォーカーなどの衣装の一挙展示に加え、イベント限定の1/6スケールフィギュアや「コスベイビー」など、ここでしか手に入らないレアなアイテムを多数ラインナップ。コミックに登場する“ダークサイド版”のドロイド、0-0-0とBT-1や、ハロウィン仕様のグローグーといった、注目のフィギュアも販売され、スター・ウォーズファンにはこたえられない内容となっている。
田中さんの“見立て”によるリアルなスター・ウォーズワールドが展開
イベント最大の見どころが、Instagramのフォロワーは380万人を超え、世界的に人気のミニチュア写真家・見立て作家の田中達也さんが、本イベントのために製作した8作品の初展示だ。田中さんは大の『スター・ウォーズ』ファンとしても知られ、8作品いずれも、アメリカの大手玩具メーカー、ジャズウェアの「マイクロ・ギャラクシー」シリーズ(国内ではホットトイズジャパンが正規代理店として販売)を使用し、田中さんの見立てによるリアルなスター・ウォーズワールドが展開される。
まずは、すべての作品を田中さんのブリーフィングをもとに紹介していこう。
『食らうどシティー』(Have a Rice Trip!)
クラウドに掛けた「食らうど」をタイトルに使用。タイトルにちなみ惑星ベスピンの都市を食関連のもので表現した。ミレニアムファルコンをメインに、お米(ごはん)を雲に見立て、ワイングラスを逆さにした支柱など、都市の風景表現には食器を使っている。
『紙一重の勝利』(Mos Espa Podrace)
惑星タトゥイーンの宇宙港都市モス・エスパで繰り広げられる、「エピソード1/ ファントム・メナス」に登場したポッドレースのシーンをイメージ。メイキング映像によれば、映画本編にも随所に見立てが使われており、このシーンではレースの観客は着色した綿棒を差し込んで撮影されている。綿棒とは違うものとして、スタンドの観客を色鉛筆で表現。周囲の風景も色鉛筆と関係のあるもので作られ、丸めた紙を岩肌などに見立てた。
『惑星ホスで洗濯ホス』(Battle of Hoth)
「エピソード5/帝国の逆襲」序盤の惑星ホスの戦闘シーンがテーマ。「ホス」と「干す」を掛け、雪の山肌はタオル、エコー基地のエネルギー供給施設は洗濯バサミなど、洗濯物に関係する日用品で見立てた。帝国地上軍の4脚歩行のAT-ATウォーカーをワイヤーで転倒させる場面を意識し、ボビンと糸も用いられた。
『道なかばでリ“タイヤ”できない』(This is the way)
人気ドラマシリーズ「マンダロリアン」のワンシーン。「マンダロリアンの場面を作りたい」という熱い思いから構想を練り、 本作の名言「This is the way」(我らの道)をヒントに“道”=車輪へとアイデアを広げ、市販の一輪車のタイヤを加工。真ん中に入口を再現し、修理屋ペリ・モットーのハンガー(格納庫)を表現した。修理屋らしさを出すため、ペンチやニッパーなども置かれている。スターファイターとレイザークレストがそろうのは本編にはないシーンで、「ミニチュアだから実現できる夢の競演です」(田中さん)。
『クールなバトル』(Cool Battle)
スター・ウォーズとのコラボだからこそできる、本編を見てないとわからないシーンを見立てで作ろうというコンセプトから生まれたコアな作品。「クローン・ウォーズ」シーズン3の「ダソミアの魔女」のエピソードから、シスの弟子アサージ・ヴェントレスが裏切りにあい、戦艦ごと爆破されながら辛くも脱出するシーンを再現した。艦内の内と外で違う空気のあるなしを、同じく内と外で温度差のある冷蔵庫で表現。冷蔵庫のガラス扉を、戦艦の艦内を宇宙と隔てるバリアに見立てた。
『”本”気の戦い』(The Clone Wars)
テレビアニメシリーズ「スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ」などで描かれた、クリストフシスの戦いを再現。多くのフィギュアを使いたいと思い立ち、銀河共和国軍がブリッジで独立星系連合のドロイド軍の攻撃を食い止めるシーンを作品モチーフとした。橋の見立てには本が使われ、本に合わせ、遠くに見える都市の高層ビル群も定規など、文具関連のもので表現された。
『インドアなエンドアの戦い』(Battle of Endor)
イウォークの棲む森の惑星エンドアでの戦いを表現。群生する木々を、田中さんが使う代表的モチーフのブロッコリーで見立てている。ブロッコリーの花言葉“小さな幸せ”が、花言葉もあり、ミニチュアにぴったりのモチーフであることから、 今回の作品にも取り入れたという。
『デス・スター破壊のキー』(Death Star)
銀河帝国の巨大宇宙ステーション「デス・スター」との戦闘を描いた作品。デス・スターを破壊したヤヴィンの戦いが、新たな歴史が生まれる“キー”となったという、ファンならではの着想から、デス・スターの表面のモールドはキーボードを使って製作された。
田中達也さんが語るスター・ウォーズとのコラボレーション
―日用品とミニチュアを組み合わせ、見立てで表現したジオラマを作り撮影した作品を、毎日投稿する「ミニチュアカレンダー」は世界中で注目を集めています。
田中「早いもので、今年でスタートから13年目を迎えました。いつもはキャンプやスポーツの風景などをテーマにしていますが、僕は子供の頃から『スター・ウォーズ』の大ファンで、『ミニチュアカレンダー』にも、スター・ウォーズの作品見立てを頻繁に投稿し、推し活をアピールし続けてきました(笑)。今回はそれが実り、公式からお声がけいただき、コラボができたのはうれしいですね」
―スター・ウォーズと出会ったきっかけを教えてください。
田中「祖母の家にあった『エピソード5/帝国の逆襲』のビデオがきっかけですね。ふだんの遊びの中にもスター・ウォーズの場面を取り込んでいて、弟と遊ぶと時に足に紐をかけて倒し、ホスの戦いを再現した危ない記憶もあります(笑)。その意味では、僕の見立て人生の中で、スター・ウォーズの影響は大きいですね」
―作品解説のブリーフィングで伺いましたが、「スター・ウォーズ」の映画本編にも、見立てが多く使われているそうですね。
田中「解説でお伝えしたように、「エピソード1/ ファントム・メナス」のポッドレースの場面の観客は綿棒が用いられていますし、デス・スターの表面は、タッパーや食器を並べ、それを白く塗り、デコボコに見せる見立てに使われています。僕はプラモデルが趣味で、昔からストローで配管を表現するなどの見立てをしていましたから、いろいろなものを使って見立てることで様々な表現ができると思っていました。スター・ウォーズ制作サイドに“こんな見立てはどうですか?”と提案できる日を待ち望んでいます」
―今回のイベントで8作品を展示したことに意味がありますか。
田中「展示スペースの関係です(笑)。ジオラマのサイズを1作品につき50×50cmにしたいと考えていて、展示スペースでの収まりのよさから計算し8作品となりました」
―テーマはどのように決めていったのでしょう。
田中「マイクロギャラクシーシリーズのラインナップをいかに多く作品に使うことができるかを最優先に考えました。だれもが知る名場面であることや、僕自身の思い入れの強さも判断材料となりました。代表的な見立てであるブロッコリーはどうしても使いたかったので『インドアなエンドアの戦い』が最初に決まり、僕の好きなAT-ATウォーカーを使った『惑星ホスで洗濯ホス』や、『デス・スター破壊のキー』、『食らうどシティー』も早々に決定しました。アイデアがたくさんありましたので8作品に絞り込むのに苦労しました」
―実現しなかったアイデアを教えていただけますか。
田中「ミレニアムファルコン号をテーマにした作品は、当初、架空のピザの箱をパァっと開けると中に機体が入っているという表現を考えていました。ただファルコン号がピザといわれているエピソードを知らないとピンとこないと思いドロップしました。そういうのは結構ありました」
―シーンを決めるのも大変そうですね。
田中「今回はシーン再現というより、スター・ウォーズ作品の場面をモチーフにしたというイメージです。たとえば『インドアなエンドアの戦い』は実際の映画のシーンというよりは、エンドアあるあるを全盛りにしたような作品です。ストームトルーパーを輸送してくる機体もマンダロリアンに出てくるものを使っています。エンドアとマンダロリアンは年代的にあまり変わらないので、入れてもいいかなと。自分の解釈も入れています」
―作品のタイトルもユニークですね。
田中「ジオラマを作る前に、思い浮かんだ言葉をランダムにメモしてアイデアを膨らませ、タイトルをつけるのは写真が出来上がった後です。ダジャレと言われますが(笑)、僕自身は、写真が形の見立て、タイトルは言葉の見立てと考えています」
―ちなみに一番好きなスター・ウォーズ作品とキャラクターは何ですか。
田中「作品としては何度も見返した『エピソード5/帝国の逆襲』への思い入れが一番強いかもしれません。好きなキャラクターは、本当はAT-ATウォーカーなのですが、取材でそう答えると相手に苦い顔をされるので、表向きはオビワンと答えています(笑)」
―今回の作品には、ジャズウェア社の「マイクロ・ギャラクシー」シリーズが使われています。完成度はいかがでしたか。
田中「細部までディテールにこだわって再現されているので、実物がそのまま小さくなった、立体資料という印象ですね。素晴らしい完成度ですよ。このサイズでフィギュアの腰が稼働するので、マシンにしっかり搭乗させることができ、ジオラマも作りやすかったです」
―もう一つ、今回の展示で良かったのは、田中さんのジオラマと写真を同時に見ることができたところです。「マイクロ・ギャラクシー」の出来の良さも納得しました。
田中「ジオラマの上に写真を飾ってあるので、両者を見比べてみるのもおもしろいと思います。特にジオラマのサイズは写真では伝えきれないので、来場して実物を楽しんでいただきたいですね。また、見た方が簡単に作れる見立てもありますから、自分で製作する際のヒントにされてもいいと思います」
―今後もスター・ウォーズとのコラボの期待が高まりますね。
田中「今回やっていないこともたくさんありますし、アイデアの余力はいっぱい残っていますから、ぜひ続けていきたいですね」
プロフィール
1981年熊本生まれ。2011年、ミニチュアの視点で日常にある物を別の物に見立てたアート「MINIATURE CALENDAR」を開始。以後毎日作品をインターネット上で発表し続けている。国内外で開催中の展覧会、「MINIATURE LIFE展 田中達也見立ての世界」の来場者数が累計230万人を突破(2024年5月現在)。主な仕事に、2017年NHKの連続テレビ小説「ひよっこ」のタイトルバック、日本橋高島屋S.Cオープニングムービー、2020年ドバイ国際博覧会 日本館展示クリエーターとして参画など。著書に「MINIATURE LIFE」、「Small Wonders」、「MINIATURE TRIP IN JAPAN」、絵本「くみたて」など。
「スター・ウォーズ/ジョイン・ザ・ダークサイド」
●期間:2024年10月12日~12月15日
●時間:11:00~19:00(最終入店時間18:30)
●開催場所:ホットトイズ フラッグシップ・ストア 「トイサピエンス」
(〒150-0001 東京都渋⾕区神宮前6-25-16 いちご神宮前ビル 1F)
●入場料:無料
●URL:https://hottoys-store.jp/starwars/
(C) & TM Lucasfilm Ltd.
取材・文/安藤政弘
ミニチュア作家・田中達也さんの〝見立ての世界〟を堪能できる企画展が日本橋高島屋で開催中
日常的に使っている日用品などを、全く異なる物に〝見立てる〟作品を10年以上作り続けていミニチュア作家・見立て作家の田中達也さん。主な発表の場としているInsta...