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脈拍の測定や腫瘍の検出を可能にする「ロボットフィンガー」の進化

2024.10.30

新たに開発された、高性能の触覚を備えた柔軟性に富むロボットフィンガーが、将来、医師の日常的な診察の助けとなる可能性を示唆する研究結果が報告された。ロボットフィンガーによって、脈拍の測定や異常なしこりの検出が可能であることが示されたという。中国科学技術大学センシング技術分野のHongbo Wang氏らによるこの研究の詳細は、「Cell Reports Physical Science」に10月9日掲載された。

ロボットフィンガーで脈拍測定や腫瘍検出が可能になるかも

Wang氏らによると、この技術は乳がんなどの疾患を治療可能な早期段階で発見するのに役立つ可能性があるという。また同氏らは、医師による触診に対して抵抗がある患者の不安を和らげる一助にもなり得ると付け加えている。

Wang氏はさらに、「開発を進めて性能を高めることで、将来、このようなロボットフィンガーを持つ器用な手が『ロボドクター(robodoctore)』として医師の役割を担えるのではないかとも考えている」と話す。また同氏は、「機械学習と組み合わせることで、ロボットによる自動診察・診断が可能になり、特に医療従事者の不足が深刻な開発途上の地域では有益性が高くなると思われる」とも述べている。

Wang氏らによると、硬いロボットフィンガーはすでに存在するが、繊細な診察には適していないことが示されているという。最近では、軽量・安全かつ低コストで柔軟性も兼ね備えた、人間の手の動きを再現できるロボットもあるが、本物の指のような触覚の再現はできていない。Wang氏らは、「過去10年の目覚ましい進歩にもかかわらず、文献で紹介されている柔軟性のあるロボットフィンガーのほとんどは、人間の手と比べるとまだ大きなギャップがある」と述べている。

この課題を克服するため、Wang氏らは柔軟性のあるロボットフィンガーの内部に導電性ファイバーコイルを配置し、物体に触れたときにどこまで曲がるか、また指先にどれだけの力がかかるかをリアルタイムでモニタリングできるようにした。Wang氏らは、このロボットフィンガーを羽毛でなでたり、ガラス棒で叩いたり押したり、繰り返し曲げたりして、その性能をテストした。その結果、ロボットフィンガーのセンサーは、テストで加えられた力のタイプと大きさを正確に感知することが示された。

また、医療における有用性を調べるため、ロボットフィンガーをロボットアームに取り付け、3つのしこりが隠された大きなシリコン製のシートの上を走らせた。このテストでも、ロボットフィンガーは全てのしこりを検知した。さらに、人間の手首に触れることで動脈の位置を正確に特定し、脈拍を測定することもできた。

Wang氏らは、「人間は、指で押すだけでさまざまな物体の硬さを簡単に認識することができる。同様に、ロボットフィンガーは曲げ変形と指先の力の両方を感知することができるため、物体を押すだけで人間の手と同じように硬さを検知することができる」と説明している。

Wang氏らは次の段階として、ロボットフィンガーの柔軟性をさらに高めるために、センサーの追加を計画している。これは、より効果的で効率的な診察に必要なのだという。Wang氏は、「われわれは、人間の手の類まれな機能と操作性を再現するため、インテリジェントで器用な手と、センサー付きの人工筋肉で動くロボットアームを開発したいと考えている」と述べている。(HealthDay News 2024年10月10日)

Copyright (C) 2024 HealthDay. All rights reserved.
写真:ロボットフィンガー Photo Credit: Hongbo Wang

(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.cell.com/cell-reports-physical-science/fulltext/S2666-3864(24)00518-6

構成/DIME編集部

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