ロンドン本社を含め13か国にオフィスを構える市場調査会社「Mintel Group」の日本法人、ミンテルジャパンは2024年10月22日に無料ダウンロードレポート「2025年:グローバル消費者トレンド」の日本語版」を発刊した。
本稿は同社リリースをもとに、その概要をお伝えする。
3つの注目すべき2025年の消費者トレンドとは
1.居住空間:快適さの見直し
『家』の役割は進化しており、各企業やブランドは家全体ではなく、住まいを構成する個々の要素を担う役割を持っている。消費者はもはや「完成された居住空間」を構築して生活を始めるのではなく、日常のルーティンや習慣を調整しながら、時間(例:マルチタスク)や健康(例:ヨガなどのポジティブな習慣など)をうまく取り入れる視点で生活している。
機能性とセルフケアを調和させ両立させるというこの矛盾が、未来の家の在り方になっていくだろう。
理想的な住まいを実現したいという欲求は、住宅価格の高騰という課題と大きく対立することになる。安定した住居を確保する難しさを目の当たりにし、『家を持つこと』に対して抱いていた希望が叶わないこともあると人々が受け入れていく中で、『馴染みのある心地よさ』はますます重要性を増していく。
子供のいない夫婦の増加、新しい家族の関係性、高齢者の自宅やコミュニティでの生活が、人々の住まいの在り方に影響を与える。同時に、リモートワークが家族のダイナミクスを再構築し、親が常に自宅にいる環境下で子どもたちが愛着による結び付きをどのように育んでいくのかにも影響を与える。
感情的、実務的、経済的な要因がすべて重要な役割を果たす現代の家庭生活は、家族内の役割分担にも再評価をもたらす。未来の家は、単なる住む場所ではなく、健康、効率、個別の快適さの中心地になるだろう。
2.コミュニティ:つながる生活
不確実性が増す現代において、人々は長続きするつながりを形成することを強く望み、人生のどんな困難にも耐えられるようにしようとしている。また、気候変動や政治的な変化など、あらゆる事態に備える必要に駆られており、これらの問題の複雑さと予測不可能性から、一人で対処するのは非現実的であり、望ましいことではない。
その結果、社会的なつながりやグループは、人々が将来を計画する際に不可欠な存在となり、意図的な連帯や集団的支援を心から求めるようになっている。
高まる孤独感や孤立への不安はあるものの、例えば「テイラー・スウィフトのファンである」、「コーヒー愛好家である」といった自己を表現する要素によって、人々がコミュニティとして集まることができるという前向きな見方も広がっている。
企業が発信するメッセージのトーンは集まる人々の中に帰属意識を芽生えさせ、活力をもたらすことができるだろう。それぞれが個人として成長しながら、互いに前向きに関わり合える場を形成することができる。
最終的に、企業はAIに対してバランスの取れたアプローチを採用し、個人の自己表現をサポートすることで、社会的孤立が高まるリスクを軽減する必要がある。
企業は製品を提供するだけではなく、人々が「大切にされている」、「サポートされている」と実感できる空間を生み出す上でも、中心的な存在となるだろう。
3.世界:変わりゆく常識
「異常気象から進化するテクノロジーまで、すでに起きている世界的な変化を無視して日常生活を送ることは、もはやできなくなっている。企業は、道徳的な規範と人間としての基本的なニーズとの間で揺れ動く消費者心理の変化に、敏感に対応していかなければならない。
環境変化、技術革新、高齢化社会の進行は、消費者にとって大きな課題となる。60代が高齢になっても活動的であり続け、アルファ世代(2010-2025年生まれ)が注目を求める中で、世代間の緊張が生じるだろう。
さらに、健康や美容に関する常識も大きく変化し、減量薬や美容整形の使用が一般化していく。これらのトレンドは、身体に対する価値観の変化を反映しているが、消費者の期待が進化する中で、健康・美容製品には透明性、安全性、そして効果への関心が高まるだろう。
各企業やブランドは、即時的な美的ニーズに応えるだけでなく、長期的な健康を優先させる必要があり、ウェルネスが誰にとっても手に入る未来の土台を築くことになるはずだ。
出典/ミンテルジャパンレポート、不確実性時代のライフスタイル、2024
関連情報
https://japan.mintel.com/
構成/清水眞希