
自転車の「ながら運転」は2024年11月から、刑事罰の対象となる。具体的にどんな行為が「ながら運転」とみなされるのか、また青切符を切られたらどうなるのかを中心に、改正道路交通法の施行によって何が変わるのかを解説していく。
目次
近年、デジタルデバイスを操作しながら自転車を運転する行為が問題視されている。スマートフォンや音楽プレイヤーを使用しながらの運転は、前方への注意が散漫となり、事故を引き起こすリスクが高まる。このような運転は、歩行者や他の車両に危険を及ぼすだけでなく、運転者自身の安全も脅かす。
最近ではながら運転に関する事故の増加に伴い、警察による取り締まりが強化されている。
上記のような状況を受け、2024年11月に自転車の「ながら運転」に青切符が導入されることとなった。
そこで本記事では、自転車の「ながら運転」とは何か、自転車の「ながら運転」に青切符が導入される背景、罰則や罰金の適応について解説する。
自転車の「ながら運転」の青切符対象となる具体的な行為や、赤切符が切られた場合どうなるのかも紹介するので、この機会にぜひ確認してほしい。
自転車の「ながら運転」とは?
まずは、自転車の「ながら運転」とはどんな運転を指すのかを解説する。自転車の「ながら運転」の概念が曖昧な人は、きちんと押さえよう。
■自転車の運転中にデジタルデバイスを操作しながら運転すること
自転車の「ながら運転」とは、デジタルデバイスを操作するなど、自転車の運転とは別の行為をしながら自転車を運転することだ。例えばスマホを使用する「ながらスマホ」は、片手運転を強いられ、自転車の安定性を損なうだけでなく、画面に集中することで前方の状況を見逃す危険がある。
また、歩行者や他の車両との衝突リスクが高まるため、重大な事故につながる可能性が指摘されている。これまでは自動車やバイクでの「ながらスマホ」が道路交通法で厳しく規制されていたが、2024年11月からは自転車においても罰則が適用される。
また、音楽を聴きながらの運転も問題視されている。道路交通法には、自転車でのイヤホン使用に関する明確な禁止規定はない。しかし、音楽に没入することで視覚だけでなく聴覚も遮断されて周囲の音に気づきにくくなるため、危険な状況に陥る可能性が高い。仮に事故が発生した場合、「安全運転義務違反」となることがある。
自転車の「ながら運転」に青切符が導入された背景
2024年11月からは自転車においても罰則が適用されることとなり、自転車で「ながら運転」を行うと、青切符での交通違反になるケースがある。
自転車の「ながら運転」に対する取り締まりが強化された背景には、交通事故における自転車の関与が増加していることがある。警察庁のデータによると、自転車が関与する事故の割合は増加を続けている。2023年には自転車関連事故が前年よりも増加し、全交通事故に占める割合も過去最高を記録した。
自転車による死亡や重傷事故の多くは、自転車側が違反行為を行ったことで発生している。また、新型ウイルスの感染拡大に伴い、自転車が移動手段として利用される機会が増えたことも、自転車事故の増加に拍車をかけているとされる。
特に「ながらスマホ」による事故が顕著で、運転中にスマートフォンを操作することで、周囲の状況に対する注意が散漫になる。
こうした危険な行為が交通事故につながるケースの増加が問題視され、罰則の導入が決定された。2024年11月から施行される改正道路交通法では、「ながらスマホ」による交通の危険を生じさせた場合、1年以下の懲役や30万円以下の罰金が科される。
【参考】
警視庁|自転車は車のなかま~自転車はルールを守って安全運転~
ながら運転に関わる「改正道路交通法」とは?取り締まりの対象となる内容は?
ながら運転に関わる「改正道路交通法」の概要、取り締まりの対象となる内容を紹介する。取り締まりの対象は、青切符だけでなく赤切符の対象となるものもある。違反で罰せられることがないよう、正しい知識を身につけて注意しよう。
■改正道路交通法とは?
改正道路交通法は、2024年から段階的に施行される新たな規制と罰則を含む法律。2024年11月1日から2026年5月までに、複数の改正点が順次施行される予定だ。
まず、2024年11月からの施行により、自転車の運転中にスマートフォンなどを操作する行為が刑事罰の対象となる。また、同時に、原動機付自転車等の運転が明確化され、自転車の酒気帯び運転も厳しく規制される。
従来、自転車は酒気帯び運転の罰則対象外だったが、今回の改正により適用範囲が拡大され、自動車と同様に違反者は処罰の対象となる。そのため、血液中に一定量以上のアルコールが含まれる状態で自転車を運転した場合も厳しく罰せられることになる。
さらに、2026年5月23日までに施行される予定の改正内容として、自転車に対する反則金制度が新設される。反則金制度の導入により、自転車の違反行為に対しても罰金を科される仕組みが整う。そのため、軽微な違反であっても交通反則通告制度、いわゆる「青切符」が発行され、違反者に対する経済的制裁が強化される見込みだ。
16歳以上の自転車運転者を対象に、一定の違反行為が取り締まられる。なお、車が自転車等の右側を通過する際のルールの新設や、普通仮免許等の年齢要件の引き下げも予定されている。
■自転車の「ながら運転」の青切符対象となる違反内容
改正道路交通法により自転車の「ながら運転」に対しても、青切符の取り締まりが適用されることになった。
青切符とは、交通違反を犯した際に比較的軽微な違反行為に対して反則金を納付することで刑罰を免れる制度だ。今回の改正道路交通法により、自転車運転者も16歳以上であればこの制度の対象となる。自転車での「ながら運転」は、この青切符制度で重点的に取り締まられる違反の一つだ。
具体的には、自転車を運転しながらスマートフォンや携帯電話を使用する行為が重大な違反とされる。これらの違反に該当する「ながら運転」に対しては、青切符の対象となる1万2000円の罰金が科される。また、他の軽微な違反行為にも反則金が課される。例えば、一時停止の無視や通行禁止違反では5000円、信号無視や通行区分違反は6000円となる。ただし、現在、努力義務となっている自転車運転時のヘルメット着用は「青切符」の対象外だ。
これまで自転車には比較的寛容だった罰則が、改正道路交通法により厳しくなったことで、反則行為への注意喚起が強化されている。信号無視や一時停止無視といった交通ルール違反も、重大な事故につながる可能性があるため、青切符の対象となっている。青切符を交付された場合、指定された期間内に反則金を納付する必要がある。
反則金を支払わなかった場合は、さらなる通告が行われ、刑事手続きに進むリスクもあるため、期日内の対応が求められる。自転車運転者も従来以上に交通ルールの遵守が求められる状況だ。
■自転車の「ながら運転」の赤切符対象となる違反内容
自転車の「ながら運転」は「青切符」だけでなく、危険が生じた場合は「赤切符」が交付される。赤切符とは、交通反則通告制度の対象外となる重い違反に対して適用される罰則で、刑事責任を問われる違反行為に対して発行されるもの。スマートフォンや携帯電話を操作している最中に事故や危険が発生した場合、「ながら運転」は重大な違反行為として赤切符が発行される。
赤切符の対象となる具体的な違反は、スマートフォンを使用して画面を注視したり、通話中に周囲に対する注意が疎かになったりして、結果として事故を引き起こした場合が該当する。このように危険を生じさせた場合、1年以下の懲役または30万円以下の罰金が科される。
さらに、自転車でも酒気帯びで運転した際に重大な危険が発生すれば、赤切符の対象として厳しく罰せられる。酒気帯び運転で有罪となった場合、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される。
このように、自転車であってもながら運転や酒気帯び運転による重大な危険行為は、自動車と同様に重い刑事罰が科されることになった。なお、赤切符が交付されると、違反者は反則金の納付では済まず、正式な刑事手続きが進む。警察による取り調べの後、検察官の取調べを経て略式命令が請求され、裁判所からの略式命令に従って罰金を納付することになる。
違反行為の重大性によっては正式裁判に進む可能性もあるため、赤切符の交付は深刻な事態であると認識しておこう。
■自転車の「ながら運転」で違反した場合には自転車運転者講習を受ける場合も
自転車の「ながら運転」で違反を犯した場合、罰則に加え、自転車運転者講習の受講を命じられることがある。改正道路交通法では、スマートフォンなどを操作しながらの「ながら運転」は危険行為とされており、事故の原因となる可能性が高いとされる。そのため、危険行為を繰り返した場合、自転車運転者講習の対象となることがある。
この講習は、特定の危険行為を行い、3年以内に違反・事故を合わせて2回以上繰り返した者に対して命じられている。特定の危険行為として、青切符の対象となる信号無視や指定場所での一時不停止、遮断踏切への立ち入り、安全運転義務違反、自転車の酒酔い運転などが該当する。これらを繰り返した場合、講習を受けなければならない。
また、講習対象になったにも関わらず受講しなかった場合、さらに5万円以下の罰金が科される。運転者が講習を拒否すれば、罰金という経済的な制裁が待っているため、講習の受講は実質的に強制力が伴う点がポイントだ。
【参考】警視庁|自転車運転者講習制度
■自転車の「ながら運転」の運転手以外も罰せられる?
自転車の「ながら運転」や酒気帯び運転に関連して、酒気帯び運転者に関わった人も罪に問われる。具体的には、酒気帯び運転をするおそれがある人に車両を提供した者、飲酒を勧めたり酒類を提供したりした者、酒気帯び運転の自転車に同乗した者が対象者として挙げられる。
酒気帯び運転をするおそれがある人に車両を提供した者には、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が課せられる。運転者に酒類を提供したり飲酒を勧めたりした者と自転車の同乗者には、2年以下の懲役または30万円以下の罰金が課される。
このように、運転者だけでなく、周囲の者も酒気帯び運転に加担するかたちとなれば、重い責任を負うことになる。これらの罰則の背景には、酒気帯び運転やながら運転が引き起こす事故や危険のリスクが高まっている現状がある。運転者以外にも厳しい罰則を適用することで、危険行為を未然に防ぐことを目的としている。
【参考】
※情報は万全を期していますが、正確性を保証するものではありません。
文/編集部