タブレットの代名詞といえるiPadシリーズ。2024年10月には、急遽コンパクトモデルのiPad mini(A17 Pro)が発表されたことでも、話題を呼んでいる。
iPad miniシリーズの最新モデルは約3年ぶりの登場で、今回が第7世代となる。前モデルまでは、iPad mini(第6世代)と、世代が名称にそのまま使われていたが、今回から搭載チップを名称につける形へと変更。Macシリーズに近いルールとなった。
iPad ProやiPad Airといった上位モデルは、基本的にほぼ毎年新モデルが搭乗するため、極端にいえば、欲しいと思ったタイミングが買い時といえる。一方で、iPad miniは数年に一度のアップデートとなっていることから、コンパクトなタブレットを求めているユーザーにとっては、今回購入するか、もう数年待つかを判断するべきモデルかもしれない。
本記事では、iPad mini(A17 Pro)を実際に使用し、使用感や新機能についてレビューしていく。コンパクトタブレットの購入を検討している人には、ぜひ参考にしていただきたい。
iPad mini(A17 Pro)の主な進化ポイント
iPad mini(A17 Pro)の主なアップデートポイントは、名前の通りA17 Proプロセッサを搭載した点。そしてApple Pencil Proに対応した点だろう。
もう1つ、Apple Intelligenceという新しいAI機能にも対応しているが、日本語での対応は2025年中となっており、発売時点ではまだ多数の機能を試すことができない状態。文書やイラストの生成など、多数の楽しい機能が使えるようになる予定だが、詳細は日本語対応後に改めて紹介しよう。
■A17 Proを搭載したiPad miniの位置付けとは
最新のiPad miniに搭載されたA17 Proは2023年に発売されたiPhone 15 Pro、iPhone 15 Pro Maxに搭載されたプロセッサである。前モデルと比較し、CPUは最大30%、GPUは最大25%高速化している。これにより、Apple Intelligenceにも対応したというわけだ。
昨年のiPhoneに搭載されたハイエンドプロセッサということもあり、操作性は抜群。負荷の大きいゲームアプリなども、安定してサクサクと動作する印象だ。iPhone 15 Proと比較すると、本体サイズがやや大きいためか、発熱も少なくなっている印象を受ける。
iPadシリーズといえば、上位モデルのPro、およびAirにて、ここ数年はMacと同様のMシリーズプロセッサが搭載されてきたが、iPad miniにはiPhoneと同系列のAシリーズプロセッサが搭載されることになった。
これにより、ProとAirはMacに近いクリエイティブな役割を担うタブレット、miniと標準モデルはiPhoneをより大画面に落とし込んだ拡張デバイス的な役割に棲み分けされたといえる。コンパクトな筐体の取り回しのよさを含め、iPad mini(A17 Pro)は、タブレット初心者でも、手を出しやすいデバイスになっているといえるだろう。
■Apple Pencil Pro対応はクリエイティビティを助長するアップデート
iPad mini(A17 Pro)の大きな進化点に、Apple Pencil Proに対応したというものがある。Apple Pencil Proは、強く握ってツールパレットを表示したり、線の細さや色をシームレスに切り替えられたりと、より直感的なペンのコントロールができる。
Apple Pencil Proは本体にマグネットで装着、充電ができる
向きを変えて、ペンツールやブラシツールの向きを変えられるといった操作性は、実際に紙とペンを使うよりも、簡潔な動きと感じる。もちろん、どうしても紙とペンを用いた描き心地が好きという人もいるだろうが、タブレット1台とペン1本で、多数のブラシ、色の役割を担えるという意義はやはり大きいと感じる。
コンパクトなタブレットはやっぱり便利
iPad mini(A17 Pro)は、見た目としては前モデルから大きく変わらない。8.3インチのLiquid Retinaディスプレイは、解像度2266×1488、画面輝度は500ニトとなる。
本体サイズは195.4mm×134.8mm×6.3mm。質量はWi-Fiモデルが293g、Wi-Fi+Cellularモデルが297gとなっている。当然、スマホと比較すると重いが、タブレットとして考えれば超軽量。PCと合わせて持ち運んでも苦にならなかった。
コンパクトなサイズ感は、ベッドで横になって動画をみたり、屋外に持ち出してゲームをしたりと、何かと汎用性が高い。大画面タブレットだと、どうしても腰を据えて使う場面が多くなるが、スマホの延長としてタブレットが使えることこそ、iPad mini(A17 Pro)の魅力だろう。
ボタン類は本体上部に集約されており、右側がTouch IDを搭載した電源ボタン、左側に音量調節ボタンとなる。顔認証機能は搭載されていないが、タブレットを使用する際には、スマホよりもある程度しっかりと手に持つことになるため、あまり不便には感じていない。
なお、本モデルより、SIMスロットは非搭載となり、eSIMのみの対応となっている。
■iPadOS 18は優秀な計算機を搭載! Macと使うとやっぱり便利
初期搭載OSはiPadOS 18となる。iOS 18と同様に、ホーム画面のカスタマイズ性が向上しており、任意の位置にアプリやウィジェットの配置ができるほか、全体のカラーリングを統一できるようになっている。コントロールセンターも、カスタマイズ力が向上した。
iPadOS 18のわかりやすい進化点が、計算機アプリの導入。正直にいえば、今までなぜなかったのかと思わなくもないが、このタイミングでの計算機アプリの導入ということもあり、ただ計算をするのではなく、イコールといった記号を書いた瞬間に答えが表示される、グラフの作成もできるなど、ユニークな計算機になっている。
個人的に最も嬉しいアップデートが、ゲームモードの対応。iPad mini(A17 Pro)のように、取り回しのいいタブレットは、屋外でも、スマホより迫力を持ってアプリゲームがプレイできるのが1つの魅力だ。ゲームモードでは、バックグラウンドのアクティビティを抑え、高いフレームレートを維持できるようになっている。これも、発熱が抑えられている1つの要因だろう。
また、新機能ではないが、iPad mini(A17 Pro)のサイズ感だとMacBookと合わせて持ち運び、サブディスプレイとして使うといった運用も大変有用だ。同じAppleアカウントでログインしていれば、ワイヤレスでシームレスに接続でき、ラグもほとんど感じないため、屋外でも使いやすい。
■Apple Intelligenceが利用できる最安デバイス
冒頭でも触れた通り、Apple Intelligenceの日本語対応は2025年中となっているが、重要なのは、iPad mini(A17 Pro)が、現在発表されているデバイスの中で、Apple Intelligenceに対応した最安のデバイスであるという点だ。
Apple Storeでの販売価格は、128GBが7万8800円から、256GBが9万4800円から、512GBが13万800円からとなる。近年のデジタルデバイスとしてはかなり珍しく、前モデルから値下げされての販売となっている点も見逃せない。
スマホ市場は成熟してきており、新しくスマホデビューする人を除けば、iPhone派、Androidスマホ派のように、ある程度自分好みのOSが決まっている人が増えてきている。一方でタブレットは、スマホと比較するとまだ固まり切っていない、使ったことがないという人も多いのに加え、何度か方向転換をしているAndroidタブレットに対し、長年の積み重ねで地位を築くiPadシリーズという構図もある。iPad mini(A17 Pro)は、Androidスマホユーザーに対しても、Apple Intelligenceを試してもらうための窓口のような役割を果たすのかもしれない。
すぐにとはいかないが、新しいAI機能を存分に味わいたいという人にとっては、有力な選択肢となるはずだ。もちろん、タブレット初心者、iPadシリーズユーザーの買い替えにも、十分におすすめできる製品となっている。
取材・文/佐藤文彦