■連載/阿部純子のトレンド探検隊
プロ品質の鑑定をフリマでも当たり前にする「ラクマ最強鑑定」
新品よりも安く買うことができるリユース品市場は右肩上がりで拡大している。現在は3.1兆円規模の市場が2030年には4兆円に達すると見込まれており、特にリユース市場の半数を占めるC2Cは今後、2兆円規模に成長すると予測されている。
リユース市場の最大カテゴリは「衣料・服飾品」と「ブランド品」で、2023年は衣料・服飾品は19%の5913億、次いでブランド品が12%の3656億となっており、ファッション分野がリユース市場全体の3分の1を構成している。
リユース市場が活況を呈する中で、フリマアプリや中古ブランドを扱う店舗で大きな問題となっているのが偽造品の存在だ。財務省のデータでは2023年の税関における偽造品の差し止め件数は3万を超えている。
偽造品対策を中心に行っている業界団体の一般社団法人 日本流通自主管理協会(AACD)理事 姉川博氏は、偽造品がこれほど多い時代は今までなかったのではないかと懸念を示した。
「偽造品が増加している理由は、インターネット、SNSの普及で消費者が偽造品にアクセスしやすい環境になっている点が挙げられます、さらに、3D プリンター等の工作機械の精度が上がり、偽造品の精度が非常に向上しています。
消費者からの相談を受けて感じるのが2つの“諦め”です。偽造品が嫌でフリマアプリへのアクセス自体を諦める層、そしてもう一つが偽造品でもいいと本物を買うことを諦める層です。こちらが今増加しており、大きな問題と考えています。
私たちは事業者の団体として偽造品対策を自主管理で行うことを25年やってきました。今後は自主管理の意識をプラットフォーマーも持っていく必要があると感じています。権利者と連携して偽造品対策を進めてこられたプラットフォーマーも数多くありますが、これだけでは対応できない時代にきています」(姉川氏)
偽造品取引を撲滅する取り組みを行っているのがフリマアプリ「楽天ラクマ」。楽天ラクマは中古品の販売・買取りを手掛ける「コメ兵」と連携し、商品の検品を依頼することができる「ラクマ鑑定サービス」を今年1月よりスタート。10月には「ラクマ最強鑑定」としてサービス内容を刷新した。
従来のラクマ鑑定サービスでは、商品到着後に購入者が検品を依頼し、楽天ラクマ指定の場所へ商品を送る“後から鑑定”機能のみだったが、「ラクマ最強鑑定」では、対象商品を購入して出品者から購入者に商品が送られる間に、プロの目利きによる鑑定を無料で利用できる“お届け前鑑定”機能を追加した。
商品到着前に検品を行うことで購入者が商品を発送する手間がなくなり、検品済みの商品を受け取ることができるため取引完了までの期間が短縮できる。
出品者、購入者共にスムーズに取引できるのも特徴で、出品者が「カンタンラクマパック」で発送するだけで、“お届け前鑑定”商品を自動でコメ兵に転送。購入者も現在の商品の所在や、鑑定の結果について、全てアプリ内で確認できるため、受け取るまで安心して待機できる。
「ラクマ最強鑑定」の“お届け前鑑定”と“後から鑑定”の各機能は、事業者を除く個人ユーザーが出品するブランド品を中心に、楽天ラクマが指定する400ブランド以上の商品が対象。
各機能の対象商品には、検索結果のページおよび各商品の商品詳細ページに“お届け前鑑定”または“後から鑑定”の機能名をバッジとして表示する。なお、出品者、購入者がいずれかの機能を指定することは不可。
「ラクマ最強鑑定では、偽造品流通を撲滅するという目的に基づいて、選択式ではなく全量式で鑑定を行います。対象ブランドは400ブランド以上で、ユーザーの方が“ブランドもの”として思い浮かべることができる代表的なブランドのほとんどをカバーできる形となっています」(楽天グループ ラクマ事業部 プロダクト・サービス課 シニアマネージャー 樋口量祐氏)
コメ兵グループホールディングスの中で、主に中古ブランド品の販売・買取りを行っている主力ブランドKOMEHYOは、年間の商品流通点数が160万点以上、鑑定士は600人以上在籍している。
「ラクマ最強鑑定」の鑑定を担うコメ兵は、コピー品を排除していく検品作業の中で培った鑑定に関わるデータやノウハウが強み。培った技術を継承する鑑定士の育成にも力を入れている。
「鑑定士に加えて、テクノロジーも活用した弊社の『目利き』を、他の事業者をサポートするビジネスとして今後進めていきたいと考えています。
現在行っているのが、AIを活用した『KOMEHYO AI機器』です。基本的には弊社で今まで蓄積したデータを基にAIでの判断も加味するといった内容です。マイクロスコープを用いて肉眼ではなかなか捉えきれないところの詳細な画像まで撮影して判定したり、個体番号をチェックしたり、様々な機能を備えています。
AIは人の目では見きれない部分を補助的に行う役割で、視覚、触感、嗅覚といった鑑定人の感覚も重視しながら、総合的な判定を行っています。
中古の売買に抵抗感がなくなってきている時代の中で、物の流通ではC2CとB2Cという境目もなくなっています。どこかで偽造品の取引が行われ違う場所に持ち込みされることもあり得ますので、やはり偽造品は元から断ち切らないといけないと強く感じています。『ラクマ最強鑑定』の事業で、偽造品の循環を断ち切る一助になればと、今後さらに弊社の検品体制も強化していく所存です」(株式会社コメ兵 カンテイ事業部 部長 松波之浩氏)
【AJの読み】精巧な“バッタもん”をつかまされないために
ひと昔前まで偽造品、コピー商品といえば、ブランドロゴで笑いが取れるパロディのような稚拙な商品を多く見かけたが、今回発表会で展示されたコピー商品は一見しただけでは本物かどうか見分けがつかない精巧なものばかりだった。
精巧なコピー商品が流通している現在、気が付かないような細かな部分までくまなくチェックして、AI技術も活用しながら偽造品の可能性を判別する鑑定士の仕事は非常に重責だと思う。
憧れのブランド品を新品よりも安く手に入れられる中古品は消費者にとっても魅力。フリマアプリが身近になった今は中古品を入手する機会も増えたが、ハイブランドに関しては値段を重視してしまうと偽造品をつかまされるリスクがあり、「偽物じゃないか?」といった不安が常に付きまとう。
「ラクマ最強鑑定」のような、信用のおける鑑定が付いた取引なら出品者も購入者も安心感が全く違う。偽造品撲滅のためにも中古品を買うときには、プラットフォーマーやリユース会社を見極めて利用することが重要だ。
取材・文/阿部純子