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時代はプロンプトからコントロールへ「Adoobe MAX 2024」で発表された注目の新機能

2024.10.23

アドビのクリエイター向けイベント「Adoobe MAX 2024」が、10月14日~16日まで、米フロリダ州マイアミで開催された。会場となったマイアミビーチ・コンベンションセンターには1万1000人のクリエイターが集結。さらに世界中からオンラインで10万人以上が参加した。

マイアミビーチ・コンベンションセンターで開催された「Adoobe MAX 2024」

初日のオープニングキーノートでは、会長兼CEOのシャンタヌ・ナラヤン氏をはじめ、多くのクリエイターが登壇。デモを交えながら100以上に及ぶ「Adobe Creative Cloud」製品の最新アップデートを紹介した。数多くの新機能の中でも特に注目を集めていたのが、同社独自の生成AI「Adobe Firefly」に関するもの。アドビの生成AIについて、現地で取材した。

最もクリエイターフレンドリーな生成AIを提供

アドビでは現在、画像を生成できる「Adobe Firefly Image 3 Model」、「Adobe Illustrator」で使用可能なベクターデータを生成できる「Adobe Firefly Vector Model」、テンプレートを生成できる「Adobe Firefly Design Model」の3つの生成AIモデルを開発、提供している。今回これらに加えて新たに、動画を生成できる「Adobe Firefly Video Model」が発表された。

4つ目の生成AIモデル「Adobe Firefly Vector Model」を発表

アドビの生成AIであるFireflyは、ストックフォトサービスの「Adobe Stock」など、権利関係がクリアなデータのみをトレーニングに使用しているため、生成されたコンテンツに著作権侵害等の心配がなく、安心して商業利用できるという特徴を持つ。Adoobe MAX 2024のキーノートでも、デジタルメディア事業部門代表のデイビッド・ワドワーニ氏から、アドビの生成AIの開発方針として、1.許可を得たコンテンツのみでトレーニングすること、2.Stockのクリエイターに報酬を支払うこと、3.顧客のコンテンツからトレーニングしないこと、4.(トレーニングのために)インターネットを解析しないことが改めて表明された。

アドビの生成AIとの向き合い方について4つのポイントを表明

生成AIが製品のワークフローに深く統合されている

Firefly Image ModelやFirefly Vector Modelが、すでにPhotoshopやIllustratorといったアプリケーションに機能として組み込まれているように、生成AIが製品のワークフローに深く統合されているのも、他の生成AIにない大きな特徴と言える。生成AIおよびAdobe Sensei担当バイスプレジデントのアレクサンドル・コスティン氏によれば、Firefly Image Modelでは2023年3月のベータ版公開以降、130億枚以上の画像が生成されているが、そのうち70億枚がPhothoshopで生成されたものだという。

「FireflyはPhotoshopやillustrator、Premiere Pro、Adobe Expressなどのアプリケーションに、深く統合できるようにモデルを設計しています。また、より多くのコントロール機能を備えたモデルにすることで、他との差別化を図っています」とコスティン氏。たとえばFireflyのサイトでは、Firefly Image 3 Modelを使用し、テキストのプロンプトを入力して画像を生成できる。最新のアップデートでは生成にかかる時間が4倍にスピードアップされているほか、生成した画像を高画質化することもできるようになった。だが、これだけならほかにも同様のサービスはある。アドビの場合はそこからさらに、参照画像やスタイルを指定したり、効果を設定したりして、生成される画像を細かくコントロールできるようになっている。

動画の生成でもアングルや動きをコントロールできる

新たに追加されたFirefly Video Model(ベータ版)も同じで、プロンプトを入力したり、画像をアップロードして動画を生成できるだけでなく、カメラアングルやズームイン、ズームアウト、右から左へといったモーションなどを指定して、生成される動画をコントロールできるようになっている。なお、現在Firefly Video Model(ベータ版)を利用するにはまず、Fireflyのサイトで待機リストに登録する必要がある。Adoobe MAX 2024の展示会場ではいち早くデモを試すことができたが、動画生成に使用できるプロンプトは今のところ英語のみで、5秒間の動画を生成するのに2分ほどの時間がかかっていた。今のところFirefly Image 3 Modelのように、複数のバリエーションを一度に生成することはできない。生成した動画はmp4ファイルとしてダウンロードでき、「Adobe Premire Pro」などに取り込んでBロール(補足カット)として使用できる。

左側のメニューでカメラアングルなど細かな調整が可能

Firefly Image ModelやFirefly Vector Modelと同様に、Firefly Video Modelも今後はAdobe Premire Proなどの機能として組み込まれていくことになる。Premire Proの最新ベータ版ではすでに、足りないフレームを生成して動画を補完できる「生成拡張」機能が提供されている。次のカットとのつながりやBGMの尺とあわせるために、あと少しだけ映像や音声を伸ばしたいというときに、足りないフレーム分を生成して継ぎ足してくれるというもの。映像は2秒まで、音声は10秒まで拡張可能となっている。プロフェッショナルフィルム&ビデオ製品 マーケティングディレクターのミーガン・キーン氏によれば、2秒までとしたのは、「ユースケースに関して行った調査の結果、このような隙間をカバーする、またはつなぎのために必要なソリューションが2秒だったから」。2秒以上必要な場合は別のクリップを探すか、Firefly Video Modelを使用してBロールを生成するかで、「必ずしも拡張する必要はない」との考えだ。

尺の足りない映像、音声を生成して伸ばすことができる

Adobe MAX 2024ではこのFirefly Video Modelのほかにも、Photoshopやillustrator、ブラウザひとつで利用できるAdobe Expressなどで、Adobe Firefly関連のアップデートが数多く発表された。身近なところでは、iPadやiPhone、Androidデバイスで無料で利用できる「Adobe Lightroom」のモバイル版アプリでも、Fireflyを使った機能が使えるようになっている。被写体を解析して、人物やものなど不要な写り込みを削除できる、生成AI削除機能がベータ版から標準機能となったほか、写真に写っている被写体を解析し、最適な補正メニューが表示される「クイックアクション」が追加された。これらの機能は今すぐに試すことができる。

生成AIはプロンプトの時代からコントロールの時代へ

Adobe MAX 2024ではまた、生成AIをクリエイティブの初期段階、アイデア出しやブレインストーミングに活用する新たな方法についても紹介された。これまでのプロンプトベースの生成AIは、欲しいものが明確で言語化できなければ活用が難しかったが、オープニングキーノートで紹介された「Adobe Project Concept」では、頭の中のイメージを生成AIを使って表に出し、さらにいろいろなイメージと掛け合わせていくことができる、新たな方法が示された。生成した画像をほかの画像とリミックスしたり、様々なイメージからカラーやスタイル、表現を取り込んで新たな画像を生成することが可能。さらにそれらのアイデアをムードボード(アイデアスケッチ)上に展開して共有し、チームでコラボレーションしながら、ブレインストーミングができる。Adobe Project Conceptはまだこれからテストを重ねる段階だが、そう遠くない将来、Adobe Creative Cloud製品のユーザーに提供されるだろう。

生成AIをアイデア出しに活用できるAdobe Project Concept

デザインおよび新興製品担当エグゼクティブバイスプレジデント兼CSO(最高戦略責任者)のスコット・ベルスキー氏は、イベント2日目のキーノートで「生成AIはプロンプトの時代からコントロールの時代に入った」と表現した。「コントロールの時代にはクリエイターが中心となり、より多くの選択肢の中から自分が生み出すものを完全に管理できる。私はAIが、クリエイティブな探求のまったく新しいカテゴリーを解き放つと信じている」とベルスキー氏。Adobe Project Conceptはそのためのツールだと紹介。生成AIをコントロールし、アイデアの探求に活用できるようになれば、「今までお金がかかり過ぎたり、時間がかかり過ぎて試せなかった野心的なアイデアにも、リスクを冒して探求したり、挑戦できるようになる。エキサイティングな時代だ」と話していた。

取材協力/アドビ

取材・文/太田百合子

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