
「微力ながら尽力いたします」「微力ながら応援しております」などの表現に、違和感を持ったことはありませんか? 「わずかな力では役に立たないし……」「せっかく協力や応援をしてくれるなら、全力でしてほしい」のように、少し意地悪な気持ちになってしまうかもしれません。 「微力ながら」の使い方や相手に違和感を与えないためのポイント、言い換え表現もご紹介するので、ぜひご覧ください。
目次
微力ながらとは?読み方や意味をご紹介
「微力(びりょく)」とは、力が弱く足りないことや、自分の力量をへりくだって表現する言葉です。
「微力ながら」の微力は後者の意味のため、「大したことはできませんが……」や「お力になれるかわかりませんが……」といったニュアンスを表現するときに使われます。
なお、名詞の後に「ながら」をつけると、内容が矛盾する2つの事柄をつなぐ意味を示します。
「ではありますが」や「にもかかわらず」と置き換えると、意味がわかりやすくなるかもしれません。
たとえば、「学生ながら読書もしない」なら、「(本来は勉強するはずの)学生ではありながら、読書をしない」という意味になります。
一方、動詞の後に「ながら」をつなげると、2つの動作や状態が並行しておこなわれている様子を指すことがあります。たとえば、「ラジオを聞きながら勉強する」なら、「ラジオを聞く」という動作と「勉強する」という動作が並行しておこなわれているという意味です。
自分の力量をへりくだって表現する「微力ながら」は、目上の方や取引先の方と話すことが多いビジネスシーンで用いられることがあります。よくある言い回しを例文を通してご紹介します。
参考:デジタル大辞泉
■例文1.微力ながら尽力いたします
優れた力量を持っているわけではないことを自覚しつつも、精一杯力を尽くすことを表明するときには、「微力ながら尽力(じんりょく)いたします」と表現します。なお、尽力とはある目的のために力を尽くすことを意味する言葉です。
・この度はメンバーに選んでいただき、ありがとうございます。微力ながら尽力いたします。
・探し物はまだ見つからないのですか?わたしで良ければ、微力ながら尽力いたします。
■例文2.微力ながらお役に立てれば……
「役に立つ」とは、使って効果があることや、有用であることを指す言葉です。物にも使いますが、人にも使うことがあります。
誰かの役に立ちたいけれども、自分で自分を「役に立つ人材だ」というのはおこがましいと思われるときは、「微力ながらお役に立てれば……」と自分の力量を謙遜して表現するとよいでしょう。
・本日サポートを担当します鈴木です。微力ながらお役に立てればと思っております。
・資料をまとめておきました。微力ながらお役に立てれば嬉しいです。
■例文3.微力ながら応援しています
「応援する」とは、力を貸して助けることや、声援や拍手を送って選手やチームを励ますことです。微力とはわかっていながらも相手を助けたいという気持ちがあるときは、「微力ながら応援しています」と表現できます。
・市長選に出馬なさると伺いました。微力ながら応援しています。
・微力ながら応援しています。何かお手伝いできることがあれば、遠慮なくお申し付けください。
■例文4.微力ながらお力添えいたします
「力添え(ちからぞえ)」とは、他人の仕事を手助けすることや、援助することです。丁寧の意味を表す「お」をつけて、「お力添えします」「お力添えいたします」と表現することがあります。
・わたしの仕事は終わりました。まだ時間がありますので、微力ながらお力添えいたします。
・そのソフトウエアは使ったことがあります。微力ながらお力添えしましょうか。
「お」には尊敬の意味もあるため、聞き手や第三者の力添えに対しても「お力添え」と表現することがあります。ただし、自分以外の「力添え」に関しては、力量をへりくだる「微力ながら」は使いません。
・お力添えをいただき、無事にイベントが終わりました。
・お力添えに感謝いたします。
「微力ながら……」を使う場面
ビジネスだけでなく日常生活でも、自分の力量を謙遜して「微力ながら……」と表現する場面は数多くあります。よくあるシーンをご紹介します。
■ビジネスメール・文書で
「微力ながら」は話し言葉だけでなく、書き言葉としても使われます。誰かをサポートするときや、取り組んできたことを説明するときなどに使ってみてもよいかもしれません。
・弊社は災害復旧に微力ながら尽力してきました。
・お困りのことがございましたら、ご連絡ください。微力ながらお力添えいたします。
■不特定多数に報告するとき
不特定多数に報告するときにも、相手の中には取引先や目上の方もいる可能性があるため、「微力ながら」と力量を謙遜するほうがよいかもしれません。
・弊社も微力ながらお役に立てるように尽力いたします。
・協賛企業の末尾に名前を加えていただきました。微力ながら会の発展に尽力します。
■支持する気持ちを表明するとき
支持する気持ちや応援する気持ちを表明するときにも、「微力ながら」を使うことがあります。
・微力ながら寄付をいたしました。
・プロジェクト始動、おめでとうございます。微力ながら応援いたします。
■就職活動で志望動機を尋ねられたとき
就職活動で志望動機を尋ねられたときは、自分の力量を謙遜して以下のように答えられます。
・一生懸命に働いて、微力ながらも御社に貢献していきたいです。
ただし、「微力」が謙遜ではなく「わずかな力」の意味で受け取られてしまうと、やる気がないのかと誤解されかねません。「一生懸命に働いて」「全力を尽くして」など、やる気が伝わる言葉を前後に添えるようにしてください。
違和感なく「微力ながら……」を使うポイント
さまざまなシーンで活用できる「微力ながら」は便利な表現ですが、使う場面や言い方によっては「やる気がない」「真剣みがない」と受け取られる可能性があります。
相手に違和感や不快感を抱かせずに「微力ながら」を使うためにも、次のポイントに注意が必要です。
・過度な謙遜をしない
・部下には使わない
・社交辞令にならないようにする