ギフトは、新規顧客獲得のための強力なツール
コーセーといえば、日本を代表する老舗の化粧品メーカーだが、なぜ今こうしたギフトに特化したユニークな試みに注力しているのか。その背景にあるのが、人口の減少により、非常に厳しい状況にある国内の化粧品市場だ。日本では近年、外に出て働く=お化粧をする年代の生産年齢人口が減少。
こうした状況からコーセーは中期ビジョン「VISION 2026」の中で、グローバル(Global)・ジェンダー(Gender)・ジェネレーション(Generation)のそれぞれの頭文字をとった“3G”を新たな事業の拡大領域としている。さらにコーセープロビジョンでは、「ギフト(Gift)」を4つ目の“G”とし、これからの国内の化粧品市場を再活性化する成長ドライバーとして捉えているという。なぜならギフトは、宣伝費をかけずして商品やブランドのファンを拡大する強力なツールだからだ。
コーセープロビジョン株式会社 代表取締役社長 命尾泰造氏は、「自分が使っている化粧品を贈るという行為は、最強の推奨行動となり得る」と語る。チョウ氏によると実際に「今、化粧品ではギフトのニーズがすごく高まっていて、売り上げの上位に常にギフトボックスが入っています」という。
店舗の陳列は、ECサイトの流れを踏襲
「Maison KOSÉ ハラカド」のある原宿は、昔から若者のファッションカルチャーの発信地。既存の直営店「Maison KOSÉ」がある銀座よりも、施設内を回遊するお客の年齢層がはるかに低い。そこで、デジタルネイティブでありSNSでの情報を重視するZ世代の購買行動に徹底的に沿った店舗作りにしている。
「店舗の什器も百貨店のものとは違うオリジナルのものを用いていますし、店舗の構成もECサイトと同じ流れになるようにしています」(チョウ氏)。Z世代も、ECで取捨選択した情報をもとにセルフ購買できるような構成にしているのだ。
店舗に入ってすぐの左側の壁面には、ECサイトと同じようにランキング上位の商品を陳列
その奥に進むと、ブランド別コーナー。ECサイト同様、瞬時に理解できるようブランドコンセプトのテキストは短めにし、ブランドの売れ筋商品を陳列
その奥は肌の悩み別のおすすめ商品。悩みカテゴリは、ECサイトと同じ並びになっている
「ECでのショッピングが習慣化されているお客様にとって、店舗での購買体験がストレスフリーになるようにしていきたい。そのために店舗でもKOSÉ IDを使ってお客様の購買データを一元化できるシステムを導入し、ECとリアル店舗をシームレスに連動させるようにしています。」(チョウ氏)
刻印サービスができる商品かどうかが、スマホをタッチするだけで確認できるようになっている
店頭のデジタルサイネージにもSNSによく流れる画像を使用し、Z世代の興味をひく仕掛けにしている
取材・文/桑原恵美子
取材協力/株式会社コーセー