金価格が最高値を更新したが、上昇し続ける金に懸念材料はあるのか?
金が最高値更新
金が9月24日過去最高値を更新した。これは、アメリカの中央銀行(FRB)が米連邦公開市場委員会(FOMC)で、0.5%の利下げを決定したからだ。
これまで採掘された金は、国際基準のプール約3.5杯分、埋蔵量は同プール1杯分と貴重な資源であり、その希少性からジュエリーとして世界中の人に好まれてきた。また、過去には紙幣等通貨の価値を担保するために金本位制がとられ、金と交換できる範囲でないと通貨が発行できない仕組みだった。そのため、金は通貨に代わる価値が担保されているモノとして、各国中央銀行は基軸通貨のドルと併せて、為替介入や有事の際のための外貨準備として金も保有している。このような金がお金に代わる価値のあるモノという性質から、投資の対象にもなっている。
一方で、金は、通貨と異なり金利が付かない。例えば、ドルであれば預金として銀行に預ければ利息を受け取ることができるが、金は預けてもむしろ預かり費用を徴収され、利息は付かない。そのような性質から、米金利が高いと、金を持つよりもドルで運用したほうが保有しているだけで利息収入等が受け取れるので、金への投資よりドルへの投資が好まれる。
そのため、2022年から2024年はじめまでは、金価格は2,000ドル以上から上がらない踊り場となっていた。2024年中ごろからFRBから米金利を利下げするというような発言が噴出し、9月に実際FOMCで利下げが決定、今後も利下げが継続する可能性が高まり、金価格が上がったのだ。
金価格の上昇要因とは?
金価格が上昇する要因は主に以下にある。
(1)米金利の低下
(2)有事の金
(3)各国外貨準備の金割合増加
(4)ジュエリー等の実需
24日に金が過去最高値になったのは、米金利低下によるものだったが、その他にも金が上昇する要因がある。例えば、金は「有事の金」と言われており、紛争等が起きると通貨に代わる安全資産として買われて、金価格が上がる。
また、各国の外貨準備として、ドルに代わる世界通貨としての性質を持つ金は各国その割合を高めており、2024年上半期の世界各国の中央銀行による金買いは最高額の購入規模となった。
したがって、(2)は予想できないものの、(1)(3)については今後、米金利は低下傾向であることや各国が金の外貨準備を増やしている傾向から金価格は上がり続ける可能性が高い。
一方、金価格の懸念材料は(4)であろう。実需であるジュエリー購入は、必需品ではないため景気に左右される。ジュエリーとして金を好むのは、中国とインドで中国は1位、インドは2位の金地金を購入しており、特に中国とインドの景気に金の実需は左右される。不景気になり、この2か国の実需が下がると、金価格が下がる要因となる。今、中国では不動産不況を発端に景気が減速傾向にあるが、金需要に影響はあるだろうか。
中国の金需要は若者がけん引
日本では、結婚指輪の8割超がプラチナと、金のジュエリーをつける人は少ない。一方で、中国はジュエリーの60%は金となっているほど、金が好まれる。
高級百貨店やショッピングセンターには、中華系または香港系の宝飾店が3店舗以上あり、その店のメイン商品はほとんどが金のジュエリーだ。香港系の周大福(chow tai fook)、周生生(chou sang sang)が中国のTOP2で、それぞれ香港市場コード01929、00116で上場している。ただ、株価は低迷気味である。
また、これまでの金ジュエリー消費者層が、35歳以上であったのが、18~35歳に代わり、消費者のシェアの半分以上を占めるほどとなっており、最近では若者が宝飾店で商品を選んでいるのをよく見かける。商品も若者向けのスタイリッシュなデザインが増え、「すみっこぐらし」や「ちびまるこちゃん」の小さいマスコットのついたブレスレットは4万円程度で購入できる。また、貯金箱に入れて貯めることができる金豆子は1g1.5万円程度から購入できる。
金ジュエリーの市場規模は2022年には3,500億元(約7兆円)であったが、2024年は成長が緩慢になるとみられる。ただ、ユーロモニターの予測ではその市場規模は拡大傾向で2027年までに4,500億元を超えると予想されている。
2024年、中国による金実需は景気とともに減速傾向となるかもしれないが、長期的に見れば金市場規模は拡大傾向であり、金価格にも長期的には上昇傾向につながると考えられる。
※1元=20円換算
(参考)
日経新聞 2024年7月24日 「金に群がる中国の若者」
文/大堀貴子