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クルマと人間の新たな関係を構築するボルボのコンパクトEV「EX30」

2024.10.20

 ボルボの最新EV「EX30」で京都から東京・青山までの500kmを走った。「EX30」はボルボ最小のEVで、SUV各車とは違って、全高はタワー式駐車場の制限となる1550ミリに抑えられている。京都から走り出す時のバッテリー残量は94%。走行可能距離は430kmと表示されていた。どこかで充電する必要があるが、新しい高出力タイプの充電器で行うつもりだ。

ボタンやレバーなどがほとんど見当たらない運転席

 運転席に座って、最初に驚かされるのが徹底したミニマルぶり。ボタンやレバーなどがとても少なく、ほとんどの機能はセンターパネルの中の階層に集約されている。ボタン然として眼に入ってくるのはアームレスト上の左右のウインドオープナーぐらい。

他に、ステアリングホイール根本から左右に生えているレバーそれぞれの端に押して操作するボタンが隠されているくらいだ。ハザードボタンですらセンターパネルの左下に反映されている。あとは、ステアリングホイール上のタッチスイッチぐらいだ。おそろしくスッキリとしていて、クルマに乗っている気がしてこない。

 タッチパネルでの操作には、“パネルをいちいち見なければならない”という批判を伴うことがあるが、筆者は音声操作を積極的に活用することを勧める。そのためだけではないが「EX30」に限らず最近のボルボは、グーグルのOSがインストールされているから、PCやスマートフォン、各種家電製品などと連動させれば、さらに音声で確実に操作できる機能が増えていく。音声操作は使えば使うほど、学習効果によって精度が向上してくるのでボルボユーザーは使わない手はないだろう。

機械として優れているか?★★★★ 4.0(★5つが満点)

 運転に関するさまざまな操作を整理整頓することは、安全にもつながる。運転支援機能を有効にする操作方法も、「EX30」は革新的だ。ステアリングホイール右側のシフトレバーで“D”ポジションを選んで走り始めた後、高速道路や自動車専用道で運転支援機能を使い始めたくなったら、そこから同じようにレバーを下に一回短く押し下げるだけでいい。簡単な上に、機能と操作が表裏一体化されているのでわかりやすく、今まで使用に二の足を踏んでいた人でも、これなら間違いようがない。

 何度も書いていることだけれども、運転支援機能はドライバーの負担を確実に軽減するので、疲労を減少させ、安全にも寄与するから一人でも多くの人が使うようになるといい。「EX30」の運転支援機能の内容は、ACC(アダプティブクルーズコントロール)とLKAS(レーンキープアシスト)とLCAS(レーンチェンジアシスト)。

 ACCの働きは申し分なかったが、LKASとLCASの働きは穏やかなものだった。LKAS機能も、車線からのハミ出しにおいても毎回必ず感知するわけではなかった。さらに、車線内の中央部分をつねに維持させるのではなく、左右への不安定な動きを採ることもしばしばあった。

 ウィンカーを出すと、クルマが前後左右の他車の存在と速度を確認して、安全であるならばステアリングホイールを切って車線変更するLCASも、働き方が不安定なのと作動したとしても効き方がとても穏やかで、自分でステアリングホイールを回しているのかクルマが回しているのかは別し難いこともあった。

 これらのLKASとLCASの効かせ方と安定性の確保は「EX30」の今後の課題の一つだろう。500kmを走る間では、カーナビにも不安定なところがあった。バグなのか、こちらの誤った設定だったのか、停まるつもりのないサービスエリアが目的地に設定され、無視せずに立ち寄るだけ立ち寄ってみたのにもかかわらず案内を終了することなく、その後もずっと戻るように案内が続けられた。

 次のサービスエリアに充電に立ち寄った際に、最終目的地だけを案内するような設定であることを確認したが、結局、青山の「Volvo Studio Tokyo」に到着するまで消えることがなかった。個体差や設定間違いなのかもしれないが、長距離運転でのカーナビの不具合はダメージが大きいことを痛感させられた。

「EX30」の走行可能距離のカタログ値は560km(WLTCモード)。途中の浜松SAで28分間で満充電の80%まで充電し、青山到着時のバッテリー残量は17%、走行可能距離は74kmだった。待たずに充電でき、その速度も速かったのでストレスはなかった。

商品として魅力的か?★★★★★ 5.0(★5つが満点)

「EX30」の内装には、リサイクル素材や再生可能素材がたくさん使われている。シートに張られている革のような生地も、ペットボトルや松のオイルなどをリサイクルした「ノルディコ」という素材が用いられている。アルミに見えるドアハンドルも再生されたアルミから造られ、ドアパネルやダッシュボードなども他の用途に用いられていた樹脂などをリサイクルされたものが使われている。

 少し前のヨーロッパのクルマでもリサイクル素材が使われていたが、それらの多くはダッシュボードの裏側やボディ内部など、顧客が直接に眼にするところには使われていなかった。品質が向上し、見た眼だけではリサクス素材と判別できなくなったこともあって、最近は常にドライバーの視界に入るところや直接手にするところなどにも使われるようになった。

 そして、リサイクル素材だからといって、必ずしもコストが安いというわけでもないという声も聞く。それでも、最近のヨーロッパメーカーは積極的にリサイクル素材や再生可能素材を採用し、それを必ずアピールしてくる。5月にバルセロナで乗った新型「MINI COOPER」でも同じことが起きていた。そのバルセロナとミュンヘンで泊まったそれぞれ別のホテルのバスルームに備え付けられていた歯ブラシとカミソリの柄が、ひとつは木製でもうひとつは再生プラスチック製だった。

 たまたまのことだけれども、クルマだけではなく、歯ブラシとカミソリという日用品でもリサイクルが行われている実例に触れた。ヨーロッパでは資源を有効に活用することが広い範囲で行われ、その勢いが強いことを実感させられた。これはもう、ポーズや宣伝のためではない。大きな潮流に触れた思いがした。

「EX30」では、そうした世の中の新しい傾向が具体化されている。運転支援機能に関しても、ミニマルなドライバーインターフェイスと組み合わせることで、運転体験を更新しようとしている。ボルボ自身だけでなく、他の自動車メーカーでは今まで行われなかった画期的なことだ。

「EX30」は、デジタルネイティブや新しモノ好きたちの好奇心を大いに刺激している。表層のデザインだけでなく、運転中の人間とクルマの関係性をも刷新する新しさを備えているところに、ぜひ注目してみてほしい。

■関連情報
https://www.volvocars.com/jp/cars/ex30-electric/

文/金子浩久(モータージャーナリスト)

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