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中国・吉利汽車のプレミアムブランドEV「ZEEKR」が2025年に日本に上陸、勝算は?

2024.10.20

2025年中国のプレミアムブランドZEEKR(ジーカー)が日本に上陸する。日本ではほぼ無名のZEEKRは吉利汽車グループのプレミアムEVブランドである。中国車を侮ってはいけない。モノマネ車は過去の話。オリジナリティを持った先進的なモデルがグローバルで販売されており、中国の自動車産業は若者にとって花形産業へと成長している。

中国の自動車メーカーを整理すると、3つの中央企業(国営のこと)があり、一汽汽車、東風汽車、そして長安汽車だ。また3つの地方政府企業がある。こちらは上海汽車、北京汽車、広州汽車で、地名がついているのでわかりやすい。そして民間企業のビッグ3がBYD、吉利汽車、長城汽車であり、他にもフォーミュラEに参戦するNIO(ニオ)や格安EVで話題のシャオミなども出てきている。

ナンバープレートが緑はNEV。商用車までEV化されている。見た目6割がNEVになっている上海・杭州地域。

「ZEEKR」グローバル展開は2023年から始まったばかり

民間ビッグ3のひとつ、吉利汽車はいくつかのブランドを持ち、欧州ブランドも傘下に収めている。マレーシアの「プロトン」、自社の「Geely auto」そしてスポーティな量販高級モデルに「Smart」と「Lynk & Co」(リンク・アンド・コー)があり、プレミアムブランドに「ZEEKR」と「VOLVO」がある。さらに「Polstar」はプレミアム・スポーツブランドに位置付けられ、超高級スポーツブランドの「Louts」らを傘下に収めている。またメルセデス・ベンツの筆頭株主でもあるのだ。

その多くのブランドの中からZEEKRが日本にやってくる。ブランドの立ち上げは2021年と若く、グローバル展開は2023年から始まったばかり。これまでの販売台数は累計で34万台と小さい。ただし、今期は前年比180%と着実に成長しているのだ。EV失速や中国経済崩壊のニュースもあるが、全体を言い表しているとは言い難い。ちなみに23年の吉利汽車の販売台数は279万台。

そのZEEKRの副社長であるマーズ(中国名チェン・ユ)氏に中国・杭州にあるZEEKR 本社でインタビューができたので、日本進出について聞いてみた。

「ZEEKRは2024年、30カ国の国と地域で販売を始めており、欧州、アジア・太平洋地域、ラテンアメリカ、中央アジアで展開をしています。そして2025年に日本でも展開をする予定です」

インタビューに応じてくれた右)マーズ(中国名チェン・ユ)副社長とジェフ(中国名チャオ・ユ)欧州地域担当ディレクター。

杭州のZEEKR本社。右側のうねりのデザインビル。

本社を下から見上げたら上に向かって矢印になっている。

なぜ日本に進出するのか?日本の魅力は何と捉えているのだろうか?

「日本は400万台規模の大きなマーケットであり、ベンツやBMW、テスラやボルボなど多様なニーズがある国だと思っています。つまりオープンな市場であり、ユーザーもさまざまなニーズを持つ人たちだと考えています。だからZEEKRにも興味をもってくれると思っています」

ダイバーシティ(多様性)。日本のクルマへの要求は多様であるがために、ZEEKRにも魅力を感じてくれるのではないかということか。

「ビジネス面では日本で販売が成功すれば、それはイコール・グローバルブランドとして認められたという証明になります。多様性の中でのニーズに応えたという意味でも」

日本の市場の難しさを熟知しつつ進出を語る。

「ZEEKR X」。ボルボEX30と同じアーキテクチャーでデザイン違い。日本に上陸予定。

つまり日本人が品質を認めたことになり、ZEEKRにとってひとつのブランドになるというわけだ。では具体的にはどうやって販売をしていくのだろうか。

「伝統的な販売方法のひとつ、直販はせずにフランチャイズ式でディーラー展開を考えています。そして輸入元もEVの経験が豊富な企業を求め、興味があるレベルではなく、EVへの情熱を持つ企業とパートナーを組みたいと考えています」

また日本での販売が成功すると考える理由はなにかを尋ねてみた。

「日本では成功させたいと考えています。EVブランドが成功するためには4つのことが重要で、まずインフラの整備があります。日本はまだ未整備な部分が多いと理解しています。また政府の補助金も必要だと思います。それとユーザーが熱い情熱を持っていることも大切で、そして最後にいい製品が必要です」

やはり外国からも日本のインフラは脆弱であり、EV普及には壁があると考えているようだ。もちろん彼らは800Vアーキテクチャーが基本設計だけに、CHAdeMOの現状では厳しいことも理解している。さらに従量制ではなく時間制の急速充電も課題とわかっている。そうした課題が国内にあることを理解しつつも展開してくるZEEKRは、既存のEVブランドに対してどんなUSPを持っているのだろうか。

「EVのパフォーマンスだけでなく、エクスペリエンスを大切にしています。これはレクサスから学びましたが、車両に竹を使ったりしています。つまり、冷たく正確な機械を提供するのではなく、座り心地や居心地のよさといった体験を重視しています。パフォーマンスに目が行きがちなラインアップだと思いますが、そうしたエクスペリエンスに配慮している点に注目してほしいです」

じつはすでに累計22万台も販売した001という最初のモデルに、4モーターのシューティングブレークがあるのだ。サーキットで試乗させてもらったが0-100km/hは2秒台という脅威の加速力を持っていて驚いた。だが、そうしたパフォーマンスではなくユーザーの心地よさを大事にしていることがUSPというわけだ。ちなみに、この001FRは国内への導入予定はないということだ。

吉利汽車グループの持つFIAレベル2の国際サーキットで試乗。右から009、001FR、001、7X。

「X」と「009」の2モデルを導入へ

導入予定モデルを聞くと「X」と「009」の2モデルを明かしてくれた。XはアーキテクチャーをボルボEX30と共通のコンパクトSUVでデザインはボルボと全く異なっている。そして009はミニバンでアルファードにぶつけてくるEVミニバン。ボルボのEM90と同じモデルでもある。

「ZEEKR 009」。アルファードに対抗するEVミニバン。ギガキャストのプラットフォーム>

またレクサスLMと同様に009のエグゼクティブモデル4名乗車の「クワンド」もあるが、日本導入については検討中ということだった。一方で、日本への導入はないが、他にも007、7X、Mixなどがあり、とても4年前にスタートしたメーカーとは思えないレベルで、開発スピードはZEEKR SPEEDと言われているそうだ。

「ボルボやアルファードはライバルではなく、共に市場を賑わすパートナーと考えています。多様性の国、日本ですから、アルファードのハイブリッドもいいけど009のEVもいいと思ってもらえたら嬉しいです」

なるほど、ニーズの多様性に期待していることがよくわかるコメントだ。そうなるとターゲットユーザーもある程度見えているのではないだろうか。

「想定ユーザーは、プレミアムブランドの所有経験があり、新しいものへの興味がある人を想定しています。ユーザーフィードバックでは、スポーツが好き、新しいコト、モノが好き、そしていい会社で仕事している人というのが共通データででてくるので、ターゲットを絞って訴求します」

ZEEKRスピードで急成長をつづけるマーズ・チェン氏。

「ですから、日本の市場では台数を求めるよりは、いいやり方で進出してEVの普及やインフラなど不安定な要素を見据えての進出になります。ブラジルでは2022年EVは数百台でしたが、23年に700%の前年比ということもあるので、興味を持って手をあげてくれる人たちと一緒に広めていきたいと考えています」

非常に余裕があるコメントに聞こえるインタビューだった。マーズ氏は2004年に大学を卒業というから出世もZEEKR スピードでもある。果たして思惑通りにZEEKRが日本のマーケットに馴染むのか上陸を待ちたい。

■関連情報
https://www.zeekrglobal.com/

取材・文/高橋アキラ

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