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黒装束は必要なし、女性の運転も解禁、女性記者が見たサウジアラビア社会の変貌

2024.10.21

過去2度とは全く異なるジェッダの風景

10月10日のサウジアラビア対日本代表戦(筆者撮影)

 2026年北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選を戦っている日本代表。ここまで4試合を終えて、3勝1分の勝ち点10でC組単独トップを走っている。直近15日のオーストラリア戦(埼玉)は強固なブロックを敷く相手に苦戦し、1-1で引き分けたが、その前の10日のサウジアラビア戦は過去に一度も勝ったことのなかったジェッダで2-0の勝利。鬼門突破を果たしたのである。

外国人でも女性は「アバヤ」と「ヘジャブ」が着用義務だったのは今や昔

 そのジェッダだが、筆者も2006年、2017年に2度訪れたことがある。前者はイビチャ・オシム監督時代、後者はヴァイッド・ハリルホジッチ監督の日本代表を取材するためだったが、当時のサウジは外国人であろうとも、女性は「アバヤ」と呼ばれる黒装束を身にまとい、「ヘジャブ」と呼ばれるスカーフも頭に被って行動することが義務付けられていた。このため、ホテルの部屋にいる時以外は全てその格好をしなければいけなかった。

 18年前は「女性が1人で外出するのも好ましくない」と言われたため、近所のスーパーマーケットで買い物をするだけでも恐る恐る行ったほど。一度だけ外食もしたが、女性がいるグループは「ファミリーセクター」というゾーンに座らされ、男性だけのエリアと一線を画すようになっていた。この状況に慣れている現地女性はともかく、我々外国人女性にとっては本当に動きにくい国だったのだ。

今でも多くの現地女性がアバヤを着ているが、義務ではなくなった(筆者撮影)

 しかし、現在のサルマン国王が即位した2015年以降、社会改革が進み、2018年には実力者のムハンマド皇太子が「女性にアバヤ着用の義務はない」との見解を示したことで、女性の服装が事実上、自由化された。

 2022年カタールW杯のついでにサウジ観光に出かけた女性が「アバヤは必要なかった」と言っていたが、過去2回の経験がある筆者は信じがたいものがあった。それを確かめるべく、今回、3度目のサウジ遠征に出向いたのである。

 10月8日朝に現地入りしたのだが、実はそこに至るまでに数々のトラブルに見舞われた。まずサウジのE-VISAを取得する際、不要だった父親をミドルネーム欄に誤って記載してしまい、それを修正するために、てんやわんやの騒ぎになったのだ。

 最初にコンタクトしたのが、東京にある在日本サウジ大使館。2006年段階では親切な日本人女性が対応してくれたので、普通に電話すると、今は英語の問い合わせのみ。「ビザに関することはメールで」と言われたので迅速に送ると、「観光ビザはVisit Saudiのコンタクト先に連絡しろ」とつれない返答をされてしまった。

 そこで教えられた国際フリーダイヤルの電話番号にかけると、日本語窓口はもちろんなし。仕方ないので英語で必死に説明すると「ビザをキャンセルするのが早道だから、もう1回、在日本サウジ大使館にコンタクトしてくれ」と言われ、何とか話はついたが、出発までにビザの再申請ができるか微妙な情勢になってきたのだ。

 そんな時、諦めていたサウジサッカー協会からのビジネスビザが日本サッカー協会経由で間一髪で届き、万事解決となったのだが、小さなミスでも記載事項を間違えるととんでもないことになることを痛感させられた。コロナ以降、各国の在日本大使館も日本語担当をほとんど置いていない様子で、何かあれば英語の交渉力が必須だということも分かった。

サウジに到着するまでにアクシデントが続いた(筆者撮影)

紆余曲折の末に辿り着いたジェッダの町

 そのうえで、成田空港から6日夜のアジスアベバ経由のエチオピア航空に乗ったが、最初の寄港地であるソウルで機材トラブルが発生。4時間も待たされた挙句、キャンセルになってしまった。

 その間も情報がなく、仁川空港のロビーでひたすら待たされるだけ。かなり心労がたたったが、そのまま黙っていると1日遅れの便に自動的に振り替えられてしまう。そこで再びトラブルが発生したらどうにもならない…。そう考えて、何とか早い便に振り替えてもらうように粘り強く打診したしたところ、マレーシア経由で半日早く到着できることになった。

 やはり英語の交渉力は必須。下手でもいいから主張しなければ、何も物事が進まない。そのことは肝に銘じるべきだろう。

 こうした紆余曲折を経て、何とかジェッダ入りしたわけだが、アバヤを着ている外国人女性は皆無に近かった。もちろん現地女性は長年の習慣を簡単にはやめないから、以前のままなのだが、カラフルなアバヤを身にまとうオシャレな人もいて、真っ黒で重苦しい以前のムードは感じられなかった。

コルニシュでくつろぐ人々(筆者撮影)

 サウジでは2018年6月から女性の運転が認められたのも特筆すべき点だ。それまでは女性の免許証発行が認められない唯一の国だったのだ。思い返してみると、過去の2回の遠征時はタクシー運転手が全て男性だと記憶している。

 けれども今回、ウーバーを呼ぶと、流ちょうな英語を操るな若い女性がやってきて、ホテルから練習・試合会場のキング・アブドゥラー・スポーツ・シティまで約1時間を笑顔で送り届けてくれた。日本人にはごく普通の出来事だが、サウジでは自由化の象徴的な一幕と言っていい。

 10日の試合日もスタジアムには大勢の女性や子供も観戦していたし、和やかな雰囲気も感じられた。かつては「サッカー場は男性のみの戦いの場」という位置づけで、威圧感が凄まじかったが、徐々に変化しているのだろう。そのムードも日本が鬼門突破できた1つの要因になったのかもしれない。

日本がついに鬼門突破を果たしたキング・アブドゥラー・スポーツ・シティ(筆者撮影)

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