2024年11月1日より、自転車運転における、ながら運転や酒気帯び運転の違反行為の罰則が強化された。 具体的に罰則や罰金がどのように変わったのかを詳しく解説する。
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2024年11月より、自転車運転における違反行為の罰則が強化された。具体的には、ながら運転や酒気帯び運転に関する新たな罰則が定められることとなった。私たちの生活に身近なルールが変わることになり、世間の注目度も高まっている。
本記事では、自転車運転の違反行為に対する罰則や罰金がどのように変わるのかを詳しく解説する。ながら運転の具体例についても紹介するので、違反行為を正しく理解し、自転車の安全運転に努めよう。
自転車のながら運転に関する新たな罰則が定められる
自転車のながら運転等は、道路交通法に違反する行為として以前から禁止されており罰則が規定されていた。改正では、ながら運転に関する罰則が厳しくなり、さらに酒気帯び運転に関する罰則規定も整備される。
ここからは、道路交通法が改正される背景や、施行の時期を解説する。
■自転車のながら運転が厳罰化される背景
自転車のながら運転等が厳罰化される理由は、近年、自転車運転中のスマホ利用などを原因とした交通事故が増加傾向にあるためだ。
スマホでの通話や画面注視など、ながら運転の危険性についてはニュースで度々話題になっている。実際に街中で危険な場面を目にしたことや、ながら運転によるトラブルに遭遇したことのある人もいるかもしれない。
自転車を運転している者がスマホに気をとられて自動車と衝突する場合もあれば、歩行者への衝突や自転車同士の事故が起こる場合もあるだろう。つまり、自転車のながら運転は、自分が被害に遭うだけでなく、他者を巻き込む可能性も大いにある。このような交通事故を抑止するため、ながら運転の厳罰化が検討され罰則規定が整備されるに至った。
■飲酒(酒気帯び)運転も厳罰化へ
自転車の飲酒運転に関しても罰則が整備される。飲酒運転には酒気帯び運転と酒酔い運転の二種類があり、改正では酒気帯び運転に関する罰則が定められる。
- 酒気帯び運転:血液1㎖につき0.3㎎以上、または呼気1ℓにつき0.15㎎以上のアルコールを身体に保有する状態で運転する行為
- 酒酔い運転:酩酊、酔っぱらった状態で運転する行為
道路交通法において、どちらの飲酒運転も以前から禁止されているが、酒気帯び運転に関しては罰則が規定されていなかった。今回の改正で、どちらに対しても罰則が定められる。ちなみに、酒酔い運転の罰則は自動車と同じく5年以下の懲役又は100万円以下の罰金だ。
【参考】警視庁|飲酒運転の罰則等
■改正道路交通法はいつから?
道路交通法の改正は、2024年11月1日から。2024年5月17日に改正案が参院本会議で可決され6か月以内の施行が決定しており、おおよそ予定通りの施行となった。
改正後の自転車のながら運転等の罰則と罰金一覧
ここでは、改正後の罰則や罰金を解説する。改正前の規定の内容や具体的な違反行為に関しても解説するので、改正による変化や事例をチェックしておこう。
■ながら運転
自転車のながら運転に関しては改正前から罰則が規定されており、実際に検挙に至ったケースもある。改正前の罰則は、5万円以下の罰金だった。
改正後は、ながら運転をしていた場合と、ながら運転を原因とする事故などを起こした場合を区別して罰則が整備される。ただし、自転車が停止している際の操作は罰則の対象外となる。
携帯電話等使用等(保持)
スマホなどを手に持ち、通話のために使用しながら自転車を運転した場合や、画面に表示された画像などを注視しながら運転することが、携帯電話等使用等の保持にあたる。
罰則:6か月以下の懲役又は10万円以下の罰金
なお、「注視」に関しては、具体的に何秒という明確なルールはない。しかし、スマホに視線を移したほんの数秒の間に、前方の状況は変わるかもしれない。歩行者が横断しようとしたり、停車中の自動車のドアが開いたり、さまざまな危険が考えられるだろう。「何秒なら大丈夫か」と考えずに、自転車の運転中は他のものに注意を向けないことが大切だ。
携帯電話等使用等(交通の危険)
スマホの使用など、ながら運転が原因で事故を起こしてしまった場合は、より厳しい罰則となる。
罰則:1年以下の懲役又は30万円以下の罰金
■酒気帯び運転
自転車の酒気帯び運転に関しては、違反行為ではあったが罰則は規定されていなかった。改正後は、自動車の場合と同等の罰則が科せられる。
罰則:3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
■酒気帯び運転のほう助
酒気帯び運転をした者に対する罰則だけでなく、酒気帯び運転を手助けした者、加担した者にも罰則が科せられる。
車両提供罪
車両提供罪は、酒気帯び運転をする恐れのある人に自転車を提供した場合に適用される。
罰則:3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
この罰則は、酒気帯び運転をした運転者と同じ内容だ。自分が運転しなくても運転者と同等の罰則が科せられることから、酒気帯び運転の危険性と責任の重大さがうかがえる。相手が飲酒していると認識しながら自転車を貸すなどの行為は、大きな事故につながりかねない。決して軽い気持ちで考えず、高い意識を持って酒気帯び運転の抑止に努めよう。
酒類提供罪
酒気帯び運転をする恐れのある人に酒を提供する、また飲酒を勧めることは酒類提供罪にあたる。
罰則:2年以下の懲役又は30万円以下の罰金
酒を提供する店舗はもちろん、仲間内などの酒の席でも気を付ける必要がある。相手が自転車に乗ると分かっていて酒を提供したり、飲酒を勧めたり、飲酒を黙認したりすると罰則が科せられる可能性がある。
同乗罪
同乗罪とは、飲酒運転をしている自動車に同乗した際の違反で、自転車にも適用される。
罰則:2年以下の懲役又は30万円以下の罰金
運転者が飲酒していると知りながら、自転車に同乗してはいけない。この場合、必然的に二人乗り以上になってしまうが、そもそも自転車の二人乗りは原則禁止されている。
ながら運転の具体例
実際に、どのような運転が「ながら運転」となるのか。ながら運転というワード自体は世間に浸透しているが、あくまでも一般的な呼称であり、道路交通法などで正式に定められたものではない。違反行為の内容に関しても認識が曖昧な部分があるため、正しく理解しておこう。
■スマホなどの保持・使用
違反行為として主に問題となるのが、スマホなどの使用だ。手に持って通話することや画面を注視することは、ながら運転として罰則の対象になる。
ちなみに、スマホホルダーなどを用いて自転車にスマホを固定する行為は、違反にあたらない。ただし、運転中の操作は禁止。また、手に持っていなくても画面に集中して運転が疎かになっていれば、危険な行為であることは間違いない。スマホをホルダーで固定すること自体に問題はないが、スマホの操作や画面を見る際は、自転車を停止させ安全を確保しよう。
■イヤホンの使用
イヤホンの使用に関しても、スマホと同じく度々問題として挙がる。自転車運転中のイヤホン使用は、安全運転義務違反にあたる可能性が高い。周囲の音をシャットアウトしてしまい、聴覚による状況判断や危険の察知ができなくなるためだ。
道路交通法で明確に禁止されているわけではないが、各自治体の道路交通規則では禁止事項として定められていることが多い。ヘッドホンや骨伝導イヤホンも同様。耳に装着する際の形状に関わらず、周囲の音が聞こえなくなってしまう点が問題だ。片耳のみの使用でも違反にあたる可能性があるため、注意しよう。
■片手で傘をさす
片手で傘をさしながらの運転は、携帯電話やスマホが普及する前からよく見られるが、これも安全運転義務違反にあたる。また、傘を開いた状態で自転車に固定する行為は、自転車に積載して良い荷物の幅を超過するため禁止されている。雨が降っている際に自転車に乗る場合は傘をささず、レインコートを着用しよう。
なお、傘をさす以外にも、両手でハンドルを持って運転できない状態は安全運転義務違反にあたる。例えば、荷物を持つ、ペットをつないだリードを持って散歩させるなどが挙げられる。自転車は子どもでも運転できる身近な乗り物だが、ルールを誤れば凶器にもなり得ることを忘れず、安全運転に努めることが大切だ。
※情報は万全を期していますが、正確性を保証するものではありません。
文/編集部