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東京メトロがプライム市場に上場へ、気になる成長戦略と株主優待

2024.10.20

はじめに

2024年10月23日、東京地下鉄株式会社(通称:東京メトロ、証券コード9023)が東証プライム市場にIPO(新規上場)することで、国内外で大きな注目を集める大型上場です。そこで今回は、東京メトロの概要や上場の背景、その魅力と成長戦略について詳しく解説します。

政府保有株式の売却—日本郵政以来の大型上場

今回の上場は、政府が保有していた東京メトロ株式の売却を伴うものであり、この規模の新規上場は2015年の日本郵政(証券コード6178)以来となります。上場に伴う株式発行価格は1100円と想定されており、この価格を基にした時価総額は約6400億円に達します。

ちなみに2023年度の売上高は3704億円です。

この大型上場は、国内外の投資家にとっても大きな注目を集めており、インフラ事業への安定した投資先として期待されています。特に公共交通機関としての東京メトロは、安定的な収益基盤を持ち、長期的な投資対象として大きな関心を集めています。

東京メトロの概要と経営基盤

東京メトロは、東京都区部を中心に9つの路線を運営する、日本を代表する鉄道事業者です。同社は13の連結子会社を含むグループを形成しており、その主たる収益源は運輸業で、全体の約9割を占めています。しかし、鉄道運営に留まらず、不動産事業や流通・広告事業など、幅広い分野にも進出しています。

不動産事業では、沿線地域のオフィスビルやホテルの賃貸事業を手がけており、駅周辺の都市開発に深く関与しています。また、駅構内に展開する商業施設「Echika」の運営や、車内広告業も行っており、これらの多角的な事業運営が、安定した収益基盤を支えています。

コロナ禍を経た戦略転換

東京メトロは、新型コロナウイルスによる影響を受けた社会の変化に対応し、2022年に中期経営計画「東京メトロプラン2024」を発表しました。この計画は、鉄道事業の安定運営とさらなる成長を図るもので、設備投資や経営の効率化に重点を置いています。

2023年にはこの計画の見直しが行われ、経営目標の上方修正とともに、設備投資計画が再編成されました。具体的には、コスト構造改革、安全性と利便性の向上、新たな路線建設、不動産事業の拡大が主要な施策として掲げられています。特に不動産事業の拡大は、今後の都市開発において重要な成長分野となるでしょう。

設備投資と成長戦略

東京メトロは、2022年度から2024年度にかけて、総額3300億円の設備投資を計画しています。この投資計画には、新型車両の導入やホームドアの整備、バリアフリー化の推進が含まれており、乗客の安全性と利便性を向上させることが目的です。

また、不動産事業にも多額の投資が行われる予定で、駅周辺の開発や駅ナカビジネスの強化が進められます。これにより、鉄道事業以外の収益源をさらに拡充し、安定的な成長を実現する狙いです。

東京メトロの株主優待

今回の上場で特に注目されているのが、東京メトロの株主優待制度です。具体的な内容は現時点で詳細には公表されていませんが、メトロ全線の無料乗車券や、提携施設での割引などが期待されています。

東京メトロは、東京都心の観光地や商業施設へのアクセスが便利であることから、優待制度を利用した乗客の増加や観光客の誘致が見込まれます。また、駅ナカの商業施設や飲食店との提携による優待も考えられ、株主にとってのメリットは多岐にわたるでしょう。

東京メトロの株主優待制度は、株式を保有する株主に対して、株数に応じた乗車証や関連施設で使える優待券を提供するというものです。具体的には、次の2つの大きな特典があります。

【株主優待乗車証】

これは、東京メトロ全線で使用できる乗車証で、片道1回限りの「全線きっぷ」または「全線定期乗車証」が発行されます。優待乗車証は、株主が3月31日および9月30日の株主名簿に記載されていることが条件で、保有株式数に応じて異なる枚数が発行されます。

具体的には:

・200株以上400株未満の株主には、年2回それぞれ3枚の全線きっぷが発行されます。

・株数が増えるごとに、発行される枚数も増加し、例えば1,000株以上3,000株未満の株主には15枚、5,000株以上10,000株未満で75枚の全線きっぷがそれぞれ発行されます。

・10,000株以上を保有する株主には、年2回全線定期乗車証が発行され、東京メトロ全線を自由に利用できる特典が付きます。

【当社関連施設の各種優待券】

もうひとつの大きな特典として、東京メトロ関連施設で利用できる優待券が年に1回発行されます。3月31日基準で200株以上を保有している株主に対して以下の特典が提供されます。

・メトロの缶詰というECサイトでの300円引きクーポン券(3,000円以上の購入で、1年間何度・でも利用可能)

・地下鉄博物館の無料招待券5枚

・そば処めとろ庵でのかき揚げトッピング無料券(350円以上の利用時に限り3枚)

・ゴルフ練習場「メトログリーン東陽町」の入場無料券5枚(平日限定)

これらの特典により、東京メトロを利用する株主は、日常的に交通機関を使いながら、関連施設のサービスもお得に楽しむことができます。株数に応じた優待内容の多様さから、株主にとっては非常にユニークな特典と言えるでしょう。

リスクとIPOのポイント

一方で、投資家としてはリスクも考慮する必要があります。まず、都市交通事業は競争が激しく、運賃やサービス品質の向上が求められます。またデジタル化が進む中で、サイバーセキュリティ対策も重要な課題となっています。

さらに、コロナ禍のような予測できない外的要因による利用客の減少リスクも存在します。しかし、東京メトロは中長期的な視野での成長を目指しており、リスクを管理しながら持続可能な事業運営を進めていくでしょう。

またIPO銘柄は初値からしばらく株価が上下する展開も考えられるため、投資家(短期or長期)によっても判断が分かれるところです。

おわりに

東京メトロのプライム市場上場は、首都圏の交通インフラにとっても、国内外の投資家にとっても大きな注目を集める出来事です。安定した収益基盤と多様な事業展開により、長期的な投資先としての魅力が高く、成長が期待される企業です。株主優待やESG投資の視点からも、東京メトロの今後の動向に注目が集まります。

文/鈴木林太郎

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