チャットツールや各種メッセンジャーアプリが乱立している今、それでも手話は重要な言語として活用されている。
そう、手話は言語なのだ。ニュージーランドでは手話は公用語に指定されている。そして最近では、「手話をAIが解析・翻訳するプラットフォーム」というものが国内外で続々開発されるようになった。
今回は日本から一例、海外から一例を取り上げて、それぞれ解説したい。
手話を文字にするビデオ通話プラットフォーム『SureTalk』
SureTalkは、ソフトバンクが提供するビデオ通話プラットフォームである。
我々の生活において、オンラインを介したビデオ通話は珍しいものではなくなった。ZoomやMicrosoft Teamsは、筆者も頻繁に利用している。しかしSureTalkは、それら2大巨頭にはない「手話をテキスト変換する」という機能が備わっているのだ。
ビデオ通話とは、当然ながらPCに内蔵のカメラがユーザーの姿を捉えてその様子を他のユーザーにも伝える。その際、ユーザーが手話を行なったらAIがそれを認識・解析してチャット上に文章出力する。これにより、手話を知らない健常者ともシームレスなチャット会話ができるという仕組みだ。
このSureTalkは、「手話に対する興味」を健常者に持たせる効果も見込めるのではないか。
これは外国語でもそうだが、当初は未知の言葉でもその人とAI翻訳機能を介した会話をするうちに「この単語はこれを意味するのか」ということが分かってくる。手話もそれに漏れず、「この動作の時はこのような意味合いがある」という理解が徐々に進んでいくはずだ。
最終的に健常者の側がAIを使わず手話を理解できるようになれば、それはSureTalkにとっての「目標達成」ではないか。
AIアバターが重要情報を手話通訳する『Signapse』
次に、海外の事例をご紹介しよう。
イギリスの企業Signapse AIは、アバターによる手話通訳プラットフォーム『Signapse』を開発している。これは個人向けのサービス展開ではなく、駅や空港などの公共施設での活用を前提にしている。
頻繁に海外渡航する筆者にとってはよくあることだが、空港でチェックインしたあとの急なフライト時刻変更は誰にとっても一大事である。この場合、ゲートが変更される可能性も少なくない。しかし、聴覚障害を持つ乗客がその情報を見落としてしまったら?
それを防ぐため、掲示板にも手話通訳者を表示しなければならない。
この掲示板の管理者は、手話通訳ソフトウェア「Signapse」を使って伝えるべき内容を文字入力する。すると、その内容をAIアバターが手話に訳してくれるのだ。
今のところの対応手話は、英BSLと米ASL。アメリカのシンシナティ・ノーザンケンタッキー国際空港やジェラルド R. フォード国際空港では、既にSignapseを組み込んだ掲示板が稼働している。
このSignapse AIの公式サイトを、読者の皆様にもぜひ確認していただきたいと筆者は考えている。
文章毎にAIアバターが手話通話する機能が実装されていて、Signapse AIのプラットフォームの一機能をここで体験できる仕組みになっている。AIテクノロジーはここまで進化したのか!?と思わずにはいられない。