無印良品を展開する株式会社良品計画では、この秋冬シーズンは既存商品の構成を見直したり、人気の食品やコスメ類のアイテム強化を図り、様々な業態のリアル店舗を出店するなど新しい施策を実施している。
その1つが、「MUJI Labo」のリブランディング。「MUJI Labo」は、無印良品のベーシックな衣服づくりを追求する実験室のこと。2005年から日本国内およびグローバルの大型店を中心に展開してしている。新製品は先行してフランス・パリでは発売済、日本国内では2024年10月11日(金)より、一部店舗(18店舗)とネットストアで発売が開始された。さらに、同日に「MUJI Labo」の世界観を表現した「無印良品 代官山」がオープン。早くも話題を集めている。
東急東横線代官山駅から代官山蔦屋書店にいく最短ルートにあり、代官山エリアでもっとも人通りが多い場所にある。
「MUJI Labo」は無印良品の思想を反映したコレクション
無印良品の衣料品ではこの秋冬から一部商品のリニューアルを進めている。 「MUJI Labo」は1年前から新しいデザインチームを作り、リブランディングを行なってきた。
創業当時から素材の選定、工程の点検、包装の簡略化という、今では当たり前のように浸透したものを先駆けて導入してきた無印良品。衣類では90年代からオーガニックコットンの使用や、洗いざらしのブロードシャツなど、素材の力やクラフトマンシップを大切に商品を開発してきた自負がある。
オープン前の内覧会で説明する良品計画 上席執行役員の山本直樹氏。着用しているのはMUJI Laboの「ストレッチテーラードジャケット」1万2900円、「ストレートストレッチパンツ」7990円、「スムースジャージー長袖プルオーバー」3990円。
その中でも特に今回は、素材とクラフトマンシップに立ち返り、こだわった商品づくりを行なった。
この代官山を起点に、全国の無印良品18店舗とネットストアで販売を開始する他、グローバルでも9月から先行で販売しているパリを始め、ニューヨーク、上海、全国、海外13カ国の地域で順次販売していく。
アイテムを並べた場所には、その素材について伝えるプレートを設置。
従来のタグに加え、素材ごとにアイテムを集め、日本語と英語で解説している。
商品そのものが主役になる店舗づくり
店舗のデザインは、什器やインテリアではなく、商品そのものが主役となる空間を演出。
円形モチーフのテーブルが柔らかく繋がりを演出し、来店客が商品と向き合えるようなデザインで作り上げたという。
BGMにも工夫を凝らし、生産現場の機織り機の音や化粧水の原料になる天然水の滴る音などを取り入れることで、無印良品のものづくりをより親密感を感じられる店舗作りを目指している。店舗デザインにもグローバルで活躍するクリエイターが関わっているが、クリエイターの名前そのものを付加価値として全面的に出すことはしていない。
MUJI Laboの「婦人 カシミア混ノーカラーコート」2万4900円、「婦人 リヨセルシルクリブタンクトップ」1990円、「婦人 ジャージープリーツスカート」5990円
MUJI Laboの「紳士 カシミア混ダッフルコート」2万9900円、「紳士 カシミヤ混ジャケット」2万4900円、「紳士 ウール混レギュラーカラーシャツ」7990円、「紳士 カシミア混ダッフルコート」1万2900円。いずれもカラーはライトグレー
ストーリー性やこだわりの素材について語れるスタッフを全国から有志を募って選抜配属
無印良品のファッションアイテムのイメージは、オーガニックコットンのカットソーやガーゼ素材のパジャマなど、肌や自然環境にやさしい、カジュアルファッションのイメージを持つ人が多いと思う。しかし、この日登壇した山本氏をはじめ、スタッフも着用しているMUJI Laboは、ラインがゆるやかなシンプルシックでビジネスカジュアルが特徴だ。
渋谷区において比較的年齢層が高い代官山の街の中でも、ショップも調和している。
価格帯は最も高いカシミヤ混のジャケットやコートで2万9900円で、近隣店舗商品の半額以下。代官山で買い物することに慣れた人にとってはかなりの割安感があるだろう。これまでのMUJI Laboは東京ミッドタウン六本木店の入口横など、既存店舗内での展開で、自社内製品との価格比較があったが、単独店舗になり、MUJI Laboだけの店舗になることでそのストーリー性やこだわりにフォーカスすることができる。それを補強すべく、全国の店舗から有志スタッフを募り、選抜メンバーが接客。オフライン店舗の魅力を最大限に発揮する体制をとっている。
店舗名は、「MUJI Labo」ではなく、「無印良品 代官山」。準備の都合から1か月後になるが、隣接する区画にはコスメ類などを中心に生活雑貨を扱う区画もオープン予定だ。
「今後も無印良品の開発の軸として大量生産・大量消費の世の中に立ち向かい、ブランドの呪縛から開放され、顧客それぞれの個性が輝くような商品を提供したい」と山本氏は展望を語る。
取材・文/北本祐子