墓の悩みで一番多いのが「墓の跡継ぎ」
お墓といえば「先祖代々引き継ぐもの」というのが常識だが、今や少子化と単独世帯の増加で、その常識も大きく変わろうとしている。
仏壇・墓石の販売、屋内墓苑の受託販売を手がける「株式会社はせがわ」が2024年8月に行った調査によると、お墓の悩みで1番に多かったのが、「墓の跡継ぎ」。
(株)はせがわ「お墓に関する実態調査」 調査期間 :2024年7月17日~18日 調査方法 :インターネット調査 対象者 :全国の40~79歳男女 計600名 直近5年以内にお墓を購入または改葬した方、今後お墓の購入または改葬を検討している方
その対策として、「今後、お墓を購入・改葬を検討している方」の約8割以上が、樹木葬・納骨堂を含む「永代供養型のお墓」を検討していることが分かった。
株式会社はせがわでは、「ご先祖様へ手を合わせる場所はきちんと用意したいけれども、後継ぎがいないためにお困りの方が増えている昨今、跡継ぎや管理の手間が少ない跡継ぎ不要のお墓は、今後も需要が増加する」と分析している。
遺骨の納骨と永代供養が、Amazonで手軽にできる⁉
家族が亡くなった時に、墓の後継者問題以前に急務なのが、「納骨先をどこにするか」ということだ。故郷を離れて何十年もたち、檀家となっている寺や先祖代々の墓がある土地になじみがない人も多いし、そもそも寺の数自体が減っている。家族の遺骨をどこに納骨すればいいのかわからないという問題に直面する人は、増えているのではないだろうか。
こうした不安に応え、墓葬用品の企画・製造・販売をする「ビーティル株式会社」は、Amazonを利用して遺骨の埋葬の申し込みと支払いができ、永代供養をしてもらえるサービス「永遠華 永代埋葬」を2024年10月より開始。価格は1件8万円で、Amazonのページで購入し、同意書を記入して送り、梱包キットに遺骨を入れて送るだけ。どんな宗教・宗派でも利用でき、無宗教でも申し込むことができる。
遺骨の埋葬先は紀伊山地の霊場と参詣道の中心地である、熊野川町小口にある創建300年の臨済宗 妙心寺派の禅宗寺院である「清蔵寺霊園」。世界遺産 熊野古道のほど近くにあり、熊野三山の大自然に囲まれた日本有数の霊場として知られている。
霊宝山清蔵寺の白井清牧住職。霊園の環境整備は檀徒や業者などの人の手を借りずに、住職自ら霊園の清掃を行っている。また霊園では除草剤や草刈り機などは使わず、手で草を抜くことにこだわって、環境を整えるようにしているという。
「永遠華 永代埋葬」を利用して納骨された遺骨は、清蔵寺シンボルツリーの前にある釈迦像が座した合祀の納骨堂に安置される。注意したいのは、合祀の納骨堂のため一度入れた遺骨は、再度取り出すことができないということ。申し込む前によく検討する必要がある。
納骨された遺骨は永代で埋葬し、読経供養は3年間、迎え盆8月7日夕刻と送り盆8月15日夕刻の年2回、法要を実施する。
永代埋葬の流れ
申し込んだ場合、どのような手順で納骨されるのか。10のステップで流れを説明する。
◎STEP1…申込みキット(80,000円)を購入
まず、Amazonの商品ページから申込みキット(80,000円)を購入する。この金額には永代埋葬費が含まれている。
◎STEP2…申し込みキットの中身を確認
Amazon.co.jpから申込キットがご自宅へ届くので、以下の書類等が入っているかご確認する。
(1)申込み同意書(2)永代埋葬申込マニュアル(3)返送用封筒(4)(改葬許可証または埋葬許可証の申請者とサービスの契約者が異なる場合の)委任状
◎STEP3…申し込み同意書の記入と押印
申込み同意書を記入し、行政書類のコピー・身分証明証のコピーを返送用封筒に入れて株式会社ビーティル返送する。
◎STEP4…遺骨用梱包キット配送
株式会社ビーティルで書類が確認できたら、遺骨用の梱包キット(遺骨梱包用段ボール・ゆうパック 送り状・仏花シート・藤色のちりめん布・行政書類返送用封筒)を発送。
◎STEP5-7…必要なものを梱包
送られてきた遺骨梱包用段ボールを組み立て、底面に仏花シートを敷く。
遺骨を藤色のちりめんに包み、段ボールに入れる。
改葬許可証または埋葬許可証の原本を行政書類返送用封筒に入れて段ボールに同梱する。
◎STEP8…遺骨などを郵送
同梱されていたゆうパックの送り状を貼って遺骨を郵送(発払い)。
◎STEP9…納骨と供養法要
遺骨を納骨してから3年間、迎え盆8月7日夕刻と送り盆8月15夕刻の年2回、合葬墓に対して合祀の供養の法要を実施する。
◎STEP10…永代埋葬証明書の発行
納骨後に別途。「永代埋葬証明書」が郵送される。
「さまざまなご意見を頂戴した」(ビーテイル株式会社代表取締役の尾屋徳久氏)
ビーテイル株式会社代表取締役の尾屋徳久氏によると、これまで世の中になかったサービスだけに、サービス開始発信当時からさまざまな意見が寄せられ、また実施できるまでに紆余曲折があったという。
「本サービス開始にあたり、清蔵寺の宗派本山にあたります妙心寺様や和歌山県様から許可をいただき、10月3日から無事にスタートとなりました。様々な方からお問い合わせやご意見を頂戴しましたが、『こんな素敵なサービスを発案してくださりありがとうございます』という一般の方からの意見も複数あり、その言葉を支えられたからこそスタートを切れたと感じております」と振り返る。
2020年の「国勢調査」による家族類型の推移を見ると、「単独世帯」が38.1%で一番多くなっている。また国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が公表した「日本の世帯数の将来推計」によると、2050年には全世帯に占める一人暮らし(単独世帯)の割合が44・3%に達するという。
供養というのは、いわば残された者たちの悲しみを癒すためにあるものなので、単独世帯がこれだけ増えて“残された者”がいなくなれば、供養の形が変わってあたりまえともいえる。「ネットで納骨」と聞いて最初は驚いたが、生まれるべくして生まれたサービスのように感じた。
取材・文/桑原恵美子
取材協力/ビーテイル株式会社