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開業に向けて動き出した大阪・夢洲のカジノは年間売上5200億円を達成できるのか?

2024.10.17

大阪市の夢洲でカジノを含む統合型リゾート(IR)の開業を目指す大阪IRが、違約金なしで撤退できる解除権が失効したと、9月10日に発表しました。カジノに関連する悪影響を排除するための取り組みなど、整備を進めるのに必要な条件をクリアしたと見られています。

2024年9月中に準備工事に着手。2030年の開業に向けて本格的な一歩を踏み出しました。

※画像はイメージ

住民の理解を得ることに成功した大阪カジノ構想

夢洲は廃棄物の最終処分場として埋め立てを開始した人工島。埋め立て後の跡地利用として、一時は新たな都市づくりを行うテクノポート構想が立ちあがったものの、バブルの崩壊で頓挫しました。更にオリンピックを誘致する計画も進められましたが、北京に敗れています。

夢洲は廃棄物処理場としての役割はまっとうしたものの、その後は有効利用されずにいたため、橋下徹元大阪市長は「負の遺産」と指摘。カジノを含む統合型リゾートとしての誘致活動を本格化しました。

IRは長崎県のハウステンボスや、神奈川県の山下ふ頭、和歌山県のマリーナシティなど、複数の候補地で争われました。岸田内閣が2023年4月に夢洲の整備計画を正式決定。大阪に日本初のカジノリゾートが誕生することとなりました。

大阪以外の候補地は、住民からの十分な理解が得られない、資金調達の確実性が不十分などの理由によって撤退、あるいは認定には至っていません。

日本経済新聞社は2023年4月に大阪府知事・市長の情勢調査を実施しています。その中でIR誘致について賛否を聞いたところ、賛成が45%で反対の38%を上回りました。大阪維新の会の支持層だけでみると7割近くが賛成しています。

カジノはギャンブル依存症や治安悪化などを懸念する声も聞こえてきますが、大半の理解をすでに得ていることがわかります。

これは、統合型リゾートの経済効果が大きいというメリットが際立つためでしょう。開業3年目のIR事業全体の売上高は5200億円を見込んでいるのです。

東京ディズニーリゾートの売上規模と同等の施設が誕生

年間5000億円を超えるとなると、国内のフィットネスや、サブスクリプション型の動画配信サービス全体の市場に匹敵する規模。東京ディズニーリゾートの2024年3月期の売上高が5137億円で、日本最大のテーマパークと肩を並べることになります。

5200億円のうち、カジノ事業からの収益は4200億円。売上全体の8割はカジノで稼ぐ構想です。カジノ施設の来訪者は国内外を含めて1610万人を見込んでいます。

更に大阪市は運営によって年間7600億円の効果があると試算しています。雇用創出効果は8.8万人あると見ており、周辺住民への恩恵も大きなものとなるでしょう。

5200億円という金額の妥当性はどうでしょうか。よく引き合いに出されるのがシンガポールのカジノ。「マリーナベイ・サンズ」と「リゾートワールド・セントーサ」の2施設合計の2017年の売上規模は5483億円。およそ8割がカジノによるもので、大阪の計画とよく似ています。目標売上の実現可能性はともかくとして、よく似たモデルケースが存在しているのは間違いありません。

プロジェクトの初期投資額は1兆2700億円。大株主はオリックスと日本MGMリゾーツの2社。MGMリゾーツはアメリカに本社を置く統合型リゾートの会社で、ラスベガスを象徴する施設の一つである「ベラージオ・ホテル&カジノ」を運営していることで有名です。

オリックスと日本MGMリゾーツは約3060億円ずつ出資。それ以外は、関西企業を中心とする少数株主が約1270億円拠出します。

日本人の利用は7日間で3日に制限

統合型リゾートはその名の通り、カジノだけではありません。

国際会議場の最大会議室は収容人数が6000人、1万2000人規模の会議に対応できる見込みです。これは東京国際フォーラムやパシフィコ横浜を上回る規模。10万㎡という展示施設も設ける予定で、東京ビッグサイトとほぼ同じ広さを持ちます。

大阪観光局は夢洲での大規模展示会やイベントなどを誘致し、中之島で学術会議や政府系会議、大阪駅周辺で企業ミーティングなどを誘致する、MICE推進強化体制を進めています。

また、演劇や演芸、茶道などの伝統文化だけでなく、日本のポップカルチャーを軸としたイベントを開催し、海外の日本ファンを開拓するといいます。

大型の施設建設は「箱物ビジネス」と呼ばれ、負のイメージがつきまとうもの。しかし、今回の統合型リゾートの誕生は、日本で初めてカジノを運営することも含めて期待感を持たせるには十分な内容です。

ただし、カジノ依存症への懸念が根深いのも事実。それを払拭するべく、ギャンブル依存対策も具体的な形になってきました。

入場回数の制限や広告・勧誘規制、ATMの設置に関する規制などです。政府や自治体が制度として取り組むものと、事業者の規範を組み合わせて推進します。

特に日本人の利用は厳格化されており、カジノは7日間で3回、連続する28日間で10回に制限。マイナンバーカードなどで本人確認を行います。また、日本人に対しては入場料などとして1回当たり3000円を徴収する仕組みです。

こうした利用制限に関する計画は、あまり知られていません。具体的に動き出した今、周知する必要があるでしょう。

文/不破聡

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