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EVFが超進化!ニコンのフルサイズミラーレス「Z6III」が実現するリアルなビューファインダー体験

2024.10.16

■連載/ゴン川野の阿佐ヶ谷レンズ研究所

576万ドット/120fpsのEVFを搭載

ニコンからフルサイズの中級機である「Z6III」が発売された。「Z8」よりも軽量の約760gで、一部では「Z9」を上回る性能を発揮する高性能なモデルに仕上がっているが、私が驚いたのはその電子ビューファインダーである。色が深い。濃厚に見える。コダクロームのフィルムを使ったような発色である。解像度が非常に高いため光学ファインダーをのぞいていると錯覚しそうだ。ここまで来れば一眼レフは不要ではと思わせてくれた。

EVFが違うだけで、見える景色が変わってくる。撮れる画像もこれと同じなのだろか? 当然、同じEVFで再生してみると濃厚な発色はそのまま再現された。PCのモニターもこの発色のままなら、これは魅力的なミラーレスと言える。今回、採用された部分積層型CMOSセンサーの恩恵なのかもしれないが、あるいはsRGBを超える広色域表示に対応したのが原因なのか。とにかく実写してみたいので、交換レンズ3本を加えてニコン「Z6III」を借用して、写真家 小平尚典さんと共に麻布台ヒルズ付近を散策した。

モニターは動画撮影を重視したタッチパネルのバリアングル方式を採用

シャッター周辺のボタンのレイアウトは「Z8」と同じになり、サブモニター専用の照明ボタンが追加された

レンズキットは「NIKKOR Z 24-120mm f/4 S」でクラス最軽量の約630gを実現。ボディと合わせて1.39kgと振り回せる重さに収まっている

オブジェのように見える屋根? 広角端は24mmで歪も少なく使いやすい
NIKKOR Z 24-120mm f/4 S Nikon Z6III 1/800sec、F4、ISO100

望遠端の120mmはそこそこ望遠で解像度が高くトリミングしても使える
NIKKOR Z 24-120mm f/4 S Nikon Z6III 1/250sec、F4、ISO100

花形フード付きでレンズ自体も逆光に強く白トビ黒ツブレも抑えられている
NIKKOR Z 24-120mm f/4 S Nikon Z6III 1/5000sec、F4、ISO100

開放絞り値はF4と暗めだが、フルサイズなので背景のボケはかなり大きくポートレートにも使いやすいズームレンズだ
NIKKOR Z 24-120mm f/4 S Nikon Z6III 1/125sec、F5.6+0.33、ISO100

フルサイズで使ってみたい「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」は約470gと軽くて取り回しが軽快だった

絞り開放にするとアジサイの花の中心部のみにピントが合い外側はボケている。近距離では被写界深度が非常に浅いことが分かる
NIKKOR Z 85mm f/1.8 S Nikon Z6III 1/1600sec、F1.8+0.33、ISO100

85mmと言えばポートレート、ボケが美しく肌の描写も硬すぎず、スマホカメラにはマネのできない自然なボケ味が楽しめる
NIKKOR Z 85mm f/1.8 S Nikon Z6III 1/800sec、F1.8、ISO100

F1.8シリーズで使いたいのが「NIKKOR Z 20mm f/1.8 S」である。超広角レンズなのに背景がボケる。EDレンズと非球面レンズを使い解像度も高い

歪みが少なくスナップショットにも使える。周辺部に建物が入っているが、ほとんど歪んでいないことが分かる
NIKKOR Z 20mm f/1.8 S Nikon Z6III 1/640sec、F5.6、ISO160

カメラをあおるとパースが付いてビルがサイバーな感じに傾いた。天気がよくヌケのいい映像が得られた
NIKKOR Z 20mm f/1.8 S Nikon Z6III 1/640sec、F8、ISO160

20mmまで広角になると同じ被写体でも24mmとは別物の構図で撮れる。今まで見えなかった世界がファインダー越しに出現するのだ
NIKKOR Z 20mm f/1.8 S Nikon Z6III 1/160sec、F11、ISO160

フルサイズミラーレスの万能型

ニコン「Z6III」は連写に強く、こくのある色の高精細EVFを搭載した有効画素数2450万画素の中級機だ。中級機と言えども実勢価格約40万円、その上の「Z8」が約50万円、最上級機の「Z9」は約65万円である。フルサイズ入門機には「Z5」がありU15万円で購入可能だ。さらにレトロデザインの「Zf」という選択肢もある。製品のラインナップからすれば中級機だが、スペックからすれば上級機に負けない。さらにコスパに優れ、ボディ重量も軽量化されている。もうニコンのフルサイズミラーレスは「Z6III」の一択でいいと思えてきた。

プロでも「Z9」を使っている人は少なく「Z8」を見かけることが多い。確かに作りが良く風格漂う「Z8」はいいカメラだが、重量約910gとズシリと重い。まあ有効画素数は4571万画素、そこまで必要かどうか悩みどころである。価格差約10万円でライバルは「Z8」になりそうだ。「Z8」の縦横4軸チルト式モニターは非常に便利な優れモノだ。「Z8」の電子シャッターの完成度は高く、「Z6III」はそこまで高性能でないためフォーカルプレーンシャッターと電子シャッターのハイブリッドになったようだ。しかし、「Z8」の電子シャッターのみというのも常時無音で味気ない。疑似シャッター音は好きになれないし…… まだ結論は出ない。「Z6III」はフラッグシップに張り合えるほどの実力機であることだけは間違いない。 

写真・文/ゴン川野

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