夏が終わり、秋がやってきた。これから寒くなる時期には、ノロウイルス等によるウイルス性胃腸炎が増え、下痢になるリスクが高まる。下痢は腸内環境の悪化に関連があることが報告されており、プロバイオティクスを活用して腸内環境を改善することも対処の一つだ。
そこで、今年の夏に下痢・軟便を経験した人を対象に「下痢や軟便時の腸内環境の改善への意識」と「下痢や軟便時の対応」に関するアンケート調査を実施した。今回は調査結果とともに、下痢に深くかかわる腸内環境やプロバイオティクスについても併せて紹介する。
「下痢・軟便」の実態
調査の結果、約2人に1人が今年の夏に下痢や軟便の症状を経験していたことがわかった。下痢は「便性状が軟便あるいは水様便、かつ排便回数が増加する状態」と定義される。下痢や軟便の原因は様々あるが、細菌やウイルス感染による食中毒や暴飲暴食による消化不良等が原因となって起こる場合がある。
下痢の時の腸内環境への意識と実際の対応
今年の夏に下痢、軟便を経験した人の約7割は「お腹を壊したとき(下痢や軟便になったとき)、腸内環境の改善を意識している」ことがわかった。ところが、下痢や軟便になった時の実際の対応について尋ねたところ、「なにもしていない」と答えた人が32.9%と最も多い結果となった。
次いで「整腸薬を飲む」が28.2%、「体を温める」が25.0%、「乳酸菌などが入った食品(ヨーグルト、サプリ)を摂る」が23.6%、「消化の良いものを摂る」が23.4%となった(上位5位を記載)。
「なにもしていない」と回答した人は、症状が治まるまで我慢しているのかもしれない。下痢は、トイレの不安などから、生活に支障がでることもある。下痢は体内の水分とナトリウムやカリウムなどの電解質が失われるため、スポーツドリンク等を用いて補給することや下痢の原因に応じた薬を用いて、適切な対処を心がけることが大切だ。
また、下痢以外に吐き気や嘔吐、発熱もある場合や便に血が混ざる場合など、中には速やかな治療が必要な下痢もある。特に食中毒などの細菌感染で起きた下痢は、腸内の毒素や異物を早く取り除く必要があるため、むやみに下痢止めなどは使用せず、医療機関を受診しよう。
下痢と腸内環境の変化
下痢の対処として、腸内環境を改善することも大切だ。腸に棲息する多種多様な微生物は、腸内フローラと呼ばれ、このバランスを保つことで、健康な状態を維持している。
下痢が起こると、ビフィズス菌などの善玉菌の減少により大腸菌などの悪玉菌が増殖し、腸内フローラが乱れることがある。病原菌の腸内への感染による急性下痢症などの一部の下痢症では、腸内フローラが大きく変化し、治癒後も長引くことが報告されている1。
腸内フローラの改善には、プロバイオティクスを活用することも対処の一つだ。プロバイオティクスとは、乳酸菌やビフィズス菌など、十分量を摂取したときに宿主に有益な効果を与える生きた微生物のことを言い、生きた乳酸菌などが配合された整腸薬やヨーグルトなどが該当する。プロバイオティクスには、下痢の期間を短縮することや下痢の発症予防など、多くの好ましい効果が報告されている2、3。
下痢に対するプロバイオティクスの効果
下痢では、大腸菌群が増加し、腸内フローラが乱れる。下痢で、腸内フローラが乱れると栄養吸収に関わる小腸の絨毛が短くなる。小腸絨毛の短縮は、栄養吸収不良(消化不良)を引き起こし、下痢の悪化や下痢の期間の延長に繋がる可能性がある。
プロバイオティクスの一つであるビフィズス菌G9-1は、腸内環境の変化により下痢を発症した動物モデルにおいて、大腸菌群の増殖を抑制し、小腸の絨毛の短縮を改善することで、下痢の発症を抑えることが報告されている4。そのため、ビフィズス菌の摂取は、腸内環境の改善により、下痢症状の緩和に繋がる可能性がある。
今年の夏に下痢や軟便を経験した人の多くは腸内環境の改善を意識していたが、実際にはなにも対応していない人も多くいた。下痢は腸内環境の変化が生じるので、プロバイオティクスを活用することも大切だ。これから冬に向けて、ノロウイルスやロタウイルス等、ウイルス性胃腸炎による下痢が増えてくる。腸内環境の改善を意識してプロバイオティクスを活用し、秋冬に備えよう。
出典
1) David LA, et al. Genome Biol. 2014;15(7):R89.
2) Guandalini S, et al. J Pediatr Gastroenterol Nutr. 2000;30(1):54-60.
3) Sur D, et al. Epidemiol Infect. 2011;139:919-926.
4) Makizaki Y, et al. Microbiol Immunol. 2019;63(12):481-486.
出典元:大正製薬株式会社
構成/こじへい