■連載/阿部純子のトレンド探検隊
白糠町の立地と高い加工技術で生まれた「シラリカいくら」
日本でも有数の秋鮭の産地である北海道白糠町のブランドいくらであり、白糠町へのふるさと納税の返礼品として非常に人気が高いのが「シラリカいくら」。
いくらのおいしさを左右するのは鮮度だが、シラリカいくらは極限まで鮮度の良さを追求した希少価値の高い生いくらで、消費期限は1年だが、1年経っても新物のような新鮮なおいしさが特徴だ。
シラリカいくらのおいしさの秘密は、白糠町の地の利と加工技術にある。太平洋に面した白糠町は、太平洋沖の暖流と寒流が交わる絶好の漁場を有しており、年間を通して様々な海産物が水揚げされる。近年はブリの漁獲量が増え、「極寒ブリ」は新たな名産品になっている。
ちなみに、シラリカとは白糠町の語源になった、アイヌ語の「岩磯のほとり」を意味する。
白糠町は茶路川、庶路川、音別川と鮭が産卵に帰ってくる川が3本もある恵まれた立地から、秋鮭、いくらの漁獲量が高く、現在シーズンを迎えているのが秋鮭。シラリカいくらの加工工場付近には北海道有数の港が点在しており、水揚げされた魚を短時間で運ぶことができる。
鮮度を重視するシラリカいくらは、秋鮭のピークシーズンである9、10月の完熟卵をはらんだ魚ごとを買い付け、当日中に一つの工場で一貫加工を行う。
加工を担っている、マルハニチログループの「広洋水産」営業部 部長・工藤啓介氏にシラリカいくらの魅力を伺った。
――シラリカいくらを“生いくら”で提供している理由とは?
「しょうゆ漬けのいくらは市場に多く出回っており、口にされる機会が多いかと思いますが、シラリカいくらは味付けがされていない“生いくら”で、鮭のお腹から取り出した完熟卵をそのままの形でお届けしています。
いくら自体は北海道各地で生産していますが、生いくらとして販売することはなかなかありません。単価が高いとか、お寿司屋さんなど自分の店で味をつけたい飲食店の需要が大半といった事情もあり、生いくらを積極的に販売するスタンスがあまりないのが現状です。
そのような中でも、シラリカいくらに関わっている方々から『これは生でもおいしい』と評判になっていまして、このおいしさを家庭でも味わっていただきたいと、ふるさと納税の返礼品としてスタートしました。
シラリカいくらにはしょうゆたれも付属していますが、まずは何も味をつけない状態で召し上がっていただき、それから付属のたれや、好みの調味料を使ったり、漬け込み時間を変えたりして、自分好みの味に仕上げていただくのもおすすめです。
北海道では、秋になると生の筋子を買ってきて自分で漬ける人も多くいます。私の祖母も今の時季になると生の筋子にしょうゆとお酒を入れて漬け込みますが、それがまたおいしい。好みの塩梅で味の濃さも変えられます。シラリカいくらも自分好みの味でアレンジできるのが楽しみ方のひとつになっています」(以下「」内、工藤氏)
――シラリカいくらの鮮度を保つ加工技術とは?
「いくらで一番に気をつけなければいけないのが鮮度。鮮度の良い状態で提供するために、加工の段階で様々な工夫を施しています。
水揚げされた魚を買い付けてすぐに工場に運び、鮭のお腹を裂いて卵を取り出してバラバラにして、採卵後の洗浄、しょうゆ漬け商品の場合は味付けも含めて、30分以内に行います。
また、卵の洗浄作業には通常は約15度の真水を使いますが、シラリカいくらは10度以下の塩水を使用することで、さらなる鮮度保持に努めています。
酸化は味の劣化につながるため、いくらの包装パックは酸素をすべて抜き出し、窒素に置き換える窒素置換包装を行っています。
冷凍させる際も-196度の窒素ガスを使用し、7~8分で急速冷凍しています。冷凍することによって卵のコクが失われてしまうことが多いのですが、短時間で凍結させることで旨味を閉じ込めて、ドリップも防止することができます、
酸素を一切なくした窒素置換包装と急速冷凍により、1年経っても同じ状態で食べられるというのがシラリカいくらの最大の特徴で、秋鮭シーズンの9、10月に生産したいくらを1年後に食べても、新物と同じ味わいが楽しめます」
――シラリカいくらのおいしい食べ方は?
「冷凍の状態で手元に届くので、一晩かけて冷蔵庫内で解凍してください。生いくらで楽しんだり、先にお話ししたように好みの味で漬けてもおいしいです。漬ける時間もそれぞれの好みになりますが、卵のコクはしょうゆが入るほど失われてしょうゆ感が前に出てしまいますので、目安としては5~6時間程度でしょう。
また、公式サイトでは、シラリカいくらを使った様々なアレンジレシピをご紹介していますので、参考にしていただけたらと思います」
【AJの読み】いくら本来のおいしさを堪能できる「シラリカいくら」
いくらのしょうゆ漬けは商品によってかなり塩分が高いものもあり、ごはんのお供には良くても単品で食べるにはしょっぱいと感じることも多かった。その点、シラリカいくらは生いくらだからこその様々な味わいが楽しめるのもうれしい。
イベントで提供されていた「シラリカいくら食べ比べ御膳」で、「生いくら」「いくらしょうゆ漬け」「いくら塩麹漬け」「いくらラー油漬け」「いくらオイルしょうゆ漬け」の5種類のシラリカいくらを試食してみた。
生いくらは生臭さも全くなく、卵のコク、旨味を十分に味わえる。このままで、もしくはほんの少し塩をかけて日本酒や焼酎のアテにすると最高だ。しょうゆ漬けは味が濃いので、やはりごはんにのせて食べるのが一番おいしい。
塩麹漬けは生姜と合わせており、麹の甘さと生姜の風味を感じるやわらかな味わいで、ごはんに合わせるよりも単品で食べたい一品。ラー油漬けは辛味やパンチが出てくるが、ラー油の香ばしさといくらは意外にも相性が良く、ごはんのお供やビールのつまみにも。
オイル漬けはオリーブオイルを使用していたが、塩味は軽めでオリーブオイルの風味がいくらと相性抜群。クリームチーズと合わせてカナッペにするのもおすすめ。しょうゆ漬けのいくらよりもチーズとのペアリングの良さが出そうで、辛口の白ワインやスパークリングとのマリアージュにピッタリ。
シラリカいくらは、白糠町のふるさと納税の返礼品としてのみ扱っているが、都内でも食べられるイベントが昨年に続き今年も開催。
「シラリカいくら食べ比べ亭」は10月14日に終了したが、イベント第二弾として10月15日~11月3日まで、希少なシラリカいくらを使った期間限定のオリジナルメニューを提供する店舗コラボ「シラリカいくら×下北線路街」が開催中。定食やおにぎりといった定番から、意外な組み合わせまで揃うので、気になる人は要チェック!
取材・文/阿部純子