転倒から1年以内に診断を受ける患者が多い
高齢者での転倒は、転倒後1年以内に認知症の診断を受けるリスクの上昇と関連することが、高齢の外傷患者200万人以上を対象にした後ろ向きコホート研究により明らかになった。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院外科・公衆衛生センター副所長のMolly Jarman氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に9月30日掲載された。
研究グループは、転倒は高齢者が外傷センターに入院する最も一般的な理由の一つであり、高齢者での主な外傷の原因だと指摘する。近年の研究により、アルツハイマー病および関連認知症(ADRD)の前段階とされる軽度認知障害の高齢者において転倒リスクが増加しているとするエビデンスが増えつつある。しかし、転倒を経験した高齢者において認知症リスクが高まるのかどうかについては明らかになっていない。
この点を調べるために、Jarman氏らは、2014年から2015年の間に外傷を負った66歳以上の高齢者245万3,655人(女性62.1%、平均年齢78.1歳)のメディケア請求データと、1年以上経過した後の追跡データの調査を行った。
外傷の原因としては、50.1%を転倒が占めていた。解析の結果、転倒が原因で外傷を負った高齢者では、それ以外の原因により外傷を負った高齢者と比べて、転倒から1年以内にADRDの診断を受ける者が有意に多いことが明らかになった(10.6%対6.1%、P<0.001)。死亡の競合リスクを考慮したCox比例ハザードモデルによる分析では、患者の人口統計学的属性や併存疾患、外傷の重症度などの調整後も、転倒を経験した高齢者では認知症の診断を受けるリスクが21%有意に増加することが示された(ハザード比1.21、95%信頼区間1.20~1.21、P<0 .001)。
このような結果を受けてJarman氏は、「転倒の有無を認知機能低下の前兆としてとらえ、さらなる認知機能検査が必要な人を特定できる可能性がある」との見方を示す。