(1)ご機嫌でいることの価値を知る
「心を整える方法はたくさんありますが、今回は二つお伝えしますね。
まずは、ご機嫌には価値があるということを意識することです。機嫌のいい人には嫌なことがない訳ではないんです。ご機嫌に価値があるから手放さないだけなんです。機嫌がいいことの価値を知っているんです。価値のあるものは失くさないし、手放さない。皆さんも携帯電話やキャッシュカードを絶対に失くさないようにしているでしょう? 大事だからですよね。つまり、自分にとって大事で価値のあるものを人は失くさないようにするんです。
機嫌が悪いよりいい方がコミュニケーションの質を高め、パフォーマンスを上げて、健康にもいい影響を与えますよね。機嫌がいいとご飯も美味しいし、人にも優しくできる。そういうことを分かっていないと、理由をつけてすぐ不機嫌になって手放しちゃうんです。
僕らはいつも不機嫌の理由を考えています。確かにそれを解決したらご機嫌になるんですけど、それを解決するまでの間がご機嫌じゃなければ、解決度合いが落ちることも分かっていないんです。
そしてご機嫌の価値が高い人と付き合ってください。そうすることで、ご機嫌をさらにキープできますから」。
■ご機嫌でいることの価値を書き出す
「機嫌の価値を知るためにも、自分が感じたご機嫌の価値を書き出してください。数がたくさんあるっていうのも価値の一つの証明です。オリンピアンたちも、毎週日曜日に30個ぐらい書き出して送ってきます。今日気がついたご機嫌の価値を聞いてください!って。
機嫌がいいとどうなるのか?という話をしているだけでもどんどん差がつきますよ」。
(2)対人関係は「同意より理解」・「正誤より相違」・「期待より応援」
「人との関係の中で機嫌をキープするために意識するべきことをお話ししたいと思います」。
■「同意より理解」
「まずは、同意より理解を意識する。私達は同意出来るか出来ないかで話をしようとしてしまいます。でも同意出来ないことっていっぱいありますよね。みんな同じじゃないから。なのにみんな、何の根拠もなく近い人ほど同じであるべきだと思っているんです。そして理解する前に説得をしようとしちゃうんです、自分の正当化を示したいから。
家族関係だったり、親子関係だったり会社者関係で、みんなこれが生じています。権限を持っている上司や親が理解するっていうことをしないと、部下や子供は上司や親の機嫌が悪くなるのが嫌ですから、最後には嘘をつくようにさえなってしまいます。
でも本当は自由なんです、どう考えてもどう感じても。そして人は理解してもらうことをすごく望んでいます。だから相手が何を感じ、何を考えているんだとしても、理解をすることが一番太い信頼関係の基になるんです。
だからまずは理解をする。agreeよりunderstandなんです。自分はこういう考えだけど、あなたはそういう考えでそう感じているんだねっていうことをまず理解してあげることが大事です。人と会う時にはとにかく自分に言い聞かせていないといけないですね」。
■「正誤より相違」
「正しいか間違いかだけで物事を判断していると、○か×だけで人と付き合うことになってしまう。もちろん法律上の○か×はいっぱいあるんですけど、僕らは正誤だけでは付き合いきれない。○か×だけで人と付き合っているとすごくしんどくなります。
僕たちは相手にもそうしている理由や背景があるのにもかかわらず、自分が×と思っていることに対しては、無意識で自分が正しくて相手が悪いというレッテルを貼ります。だから×に対してものすごく腹が立ちやすい。もちろん正しいことは正しいのですが、これだけでは人間関係をご機嫌に築くことが難しいんです。
だから人間関係は○か×ではなくて、△や◇だと思ってください。自分が○で相手が×だというレッテルを貼るから急に機嫌が悪くなるんです。正しいと思っている自分が△で、悪いと思った相手が◇なんだと、いつも自分に言い聞かせないといけないですね」。
■「期待より応援」
「僕たちは無意識に他者に期待をしようとします。期待というのは勝手な枠組みを人に当てはめて、その見返りを求めて結果を出そうと強要することです。だからその通りにならないと腹が立つんです。僕らは本当に恐ろしいほど勝手に期待するようにできているんです。結果が大事だから。
それを他者に対してすると、そのギャップの中でいつも腹が立ちます。期待されている側にはプレッシャーがかかります。
いつも期待しているよって言われて育つ子供と、いつも応援しているよって言われて育つ子供は自由度が全然違います。
期待は愛じゃないですよ、こっちの勝手だから。期待を愛と思っているから自己正当化してしまう。応援こそ本当の愛です」。
より良い人生には質と内容の両方が大切
「僕たちは結果を出すために、あれをやらなきゃ、これをやらなきゃ、あれやってない、これやってないって頭の中をぐるぐるさせて、気づいたらストレスを溜めています。そしてストレスを発散しなきゃって、やり方をウェルdoingしようとしているだけなんです。まず自分自身の心を整えること、あり方beingが先ですよね。
質のいい人生を生きるためにはご機嫌の価値を考えて心を整え、ご機嫌で行動するという習慣を身につけてください。
二つの脳みそ「バイブレイン」と言いますが、機嫌のよいbeingでdoingする。つまり、心を整えてするべきことをする。質と内容、両方を大事にする。それができる人は、自分にふさわしい結果をちゃんと手に入れていくんです」。
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辻󠄀秀一(つじ しゅういち)
北海道大学医学部卒業後、慶應義塾大学で内科研修を積む。 人の病気を治すことよりも「本当に生きるとは」を考え、人が自分らしく心豊かに生きること、 すなわち“人生の質=クオリティーオブライフ(QOL)”のサポートを志す。慶大スポーツ医学研究センターを経て、 人と社会のQOL向上を目指し株式会社エミネクロスを設立。応用スポーツ心理学をベースに、個人や組織のパフォーマンスを最適・最大化する、自然体な心の状態「Flow」を生みだすための独自理論「辻メソッド」によるメンタルトレーニングを展開。 スポーツ・芸術・ビジネス・教育の分野で多方面から支持を得ているほか、 講演活動や産業医、Chief Health Officer、社外取締役など様々な視点から、企業の健康経営のサポートやフローカンパニー創りにも取り組む。
取材/文 高田あさこ