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世界中で利用されている説明のフレームワーク「メッセージハウス」を使いこなすコツ

2024.10.16

最強の説明のフレームワーク「メッセージハウス」を使いこなす

普段の会話、会議、営業、プレゼンなど、ビジネスシーンやプライベートで「言いたいことが伝わらない」という悲しい経験をしたことがある人は多いはず。せっかくの雑談が気まずいものになったり、仕事にも影響を与えてしまう。

コミュニケーションコンサルタント岩澤康一さんは大学卒業後、TBSワシントン支局に勤務し、その後、国連開発計画(UNDP)東京オフィス、国際協力機構(JICA)エジプト事務所、外務省在シリア日本大使館、赤十字国際委員会(ICRC)などなど、日本だけでなく世界中の国々を舞台に活躍してきた。仕事の内容は様々だが、すべてが「自分の言いたいことを相手に伝えて納得させること」だったと言う。

岩澤さんが説明や交渉をする相手は、人種や年齢、文化や習慣が全く異なる人々だったが、仕事をする中で、「確実に相手に伝わる説明の仕方がある」ということに気づいたと言う。このほどその内容をまとめた新刊書「世界標準の説明力」(SBクリエイティブ発刊、定価1760円)を発刊した。

伝わる説明は「構造」が違う

岩澤さんによると、伝わるか、伝わらないかを、分けているものがあると言う。それが「構造」であり、「あなたの説明に、整理された構造があれば、相手は的確にあなたの意図をつかむことができる」としている。

あらゆる説明に対応できる構造を身に付けることができれば、どんな相手でも自分の言いたいことを伝えることができるはず。この構造をもう少し具体的に解説してもらおう。

世界標準の伝わる構造「メッセージハウス」とは?

説明に整理された構造をもたらすための、もっとも簡単な型が、世界中で使われる「メッセージハウス」だ。メッセージハウスの起源や発明者は不明で、誰が言い出し、使い始めたのかはよくわかっていないが、フレームワークとして世界中に知られているものである。

すでに世界中の企業で利用されており、アップル、マイクロソフト、ネスレ、アリババ、ボーイング、シェルといった一流企業でも導入されている。世界標準の「説明のフレームワーク」がメッセージハウスである。

メッセージハウスの仕組みを図から解説してみよう。空には太陽と月が輝いている。この太陽と月は目的とターゲットオーディエンスを表し、コミュニケーションで最も大切な二つの要素である。伝え手の「目的」と受け手である「オーディエンス」の都合の両方を、太陽と月に例えている。

さらに太陽と月という目標に向かっていくハウスの屋根にあたるものがキーメッセージだ。キーメッセージとは説明にとって大事な「何を」説明するのかという要素を表している。

その屋根を支えているのが3つの柱で、キーメッセージを支えるモノであり、メッセージである。トーキングポイントと表されているが日本語では主に「話すポイント」と呼んでいる。

最後が太陽や星々の下でハウスの屋根と柱を支える土台である。土台は「データ」「事実」「数字・統計」「エピソード」「専門家や顧客、市民、有名人のコメント」などで作られている。これらは総称してエビデンス(証拠)と呼んでいる。

新刊書では転職活動で自分の強みを説明するために作ったメッセージハウスを紹介しているので、実例として参考にしたい。

メッセージハウスを使って説明する方法

メッセージハウスによって整理した情報は、会議や営業でどう伝えるか。岩澤さんによると、結論から先に説明する逆ピラミッド型の説明をする時は、このメッセージハウスの構造を上からそのまま順番に説明していくと良いと言う。

逆ピラミッド型では結論を先に述べてから原因・理由に触れ、最後に背景情報を伝える説明となる。メッセージハウスを使った場合はまずキーメッセージを伝えてからメッセージを説明し、最後にそれらのエビデンスを伝える順番となる。

メッセージハウスに情報がきちんと整理されていたら、誰もが必ず伝わる説明ができる。相手がどんな人でも、ビジネスの多くのシーンで活用できるフレームワークなのがわかる。他にも新刊書では説明のバリエーションである「説得」「交渉」「和解」の方法などを解説してくれた。興味のある人はぜひ新刊書で詳細を確かめて欲しい。

メッセージハウスで相手の説明を読み解いてみる

さらに、メッセージハウスは自分の説明のために使うだけでなく、相手の説明を読み解くことも可能である。新刊書で岩澤さんはスティーブ・ジョブズと村上春樹のスピーチ、そして「スター・ウォーズ」を題材としているが、今回は有名なジョブズの名スピーチをメッセージハウスで紹介しよう。

ジョブズは最初からメッセージハウスを作ってスピーチしていたのかと思うほど、ピッタリ型にはまっていて驚かされた。わかりやすく伝わる名スピーチだからこその事例となっている。

スピーチだけでなく、雑談や会議、商談、報連相、プレゼンテーションといった、具体的なビジネスシーンではどのように説明するべきか。岩澤さんは具体的なケーススタディを使ってコツと対策を教えてくれた。

また、ちょうど仕事でミスをしていた私にとっては難易度の高い「説明」である、「謝罪」の対応方法は大変参考になった。今、謝罪の必要に迫られた@DIME読者のみなさんへ、簡単にそのメッセージハウスと、表を添付しておこう。謝罪をチャンスに変えられるかもしれない。

著者・岩澤康一
コミュニケーションコンサルタント
株式会社Key Message International 代表取締役
TBSワシントン支局、国連開発計画(UNDP)東京オフィス、国際協力機構(JICA)エジプト事務所、外務省在シリア日本大使館、赤十字国際委員会(ICRC)南スーダン代表部、日本国際問題研究所(JIIA)など、日本・米国・欧州・中東・アフリカで勤務。ドキュメンタリー制作やビデオ記者経験を経て、国内/外資のファームでグローバル、デジタル、動画、リスク領域の広報コンサルティング経験を積む。コミュニケーション業界における経験は20年以上。セミナー・トレーニング実施件数は数百件に上る。
現在は独立して株式会社Key Message Internationalを立ち上げ、営利・非営利を問わず国内外のクライアントに対し、コミュニケーション領域のコンサルティングを提供。同社は世界最大規模の独立系PR会社ネットワークであるIPRN(International Public Relations Network)の認定会員となっている。
米アメリカン大学より国際平和紛争解決法修士号、早稲田大学よりジャーナリズム修士号取得。PRSJ認定PRプランナー。情報経営イノベーション専門職大学客員教員。東京国際映画祭スーパーバイザー。Sci-Fi Prototyping Design(SFPデザイン)メンター。日本広報学会、日本メディア学会、日本平和学会、日本コミュニケーション学会、異文化コミュニケーション学会に所属。日本広報学会では「武力紛争下のコミュニケーション研究」(学会賞受賞)と「SFを活用した情報発信研究」の主査を務めた。新刊書は「世界標準の説明力」(SBクリエイティブ発刊、定価1760円)。

文/柿川鮎子

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